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タイトル名 |
キリング・フィールド |
レビュワー |
はち-ご=さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2011-07-02 05:54:08 |
変更日時 |
2011-07-02 06:56:52 |
レビュー内容 |
妻投稿■あたりまえだけど私は殺人被害にあったことはない。せいぜい何年も前のセクハラ程度。でも暴力のある世界って、悲鳴もドカバキボコボコズドーンという音も一切しないんですよ。本当に静かなんです。この映画の後半20分みたいに。一見すると世界は普通に回っているんです。でもちょっと何かに躓くと、気づいてしまうんです。世界がすごく残虐である事に。沼地の人骨のシーンは息が上がるくらい怖かった。■映画の時間配分は欧米人の戦場紀行が大半で、ポルポト派の大虐殺シーンは実は後半30分くらいしかない。さらに欧米人の人情ばっかに焦点を当てて、カンボジア人を尊重していないという意見も日本公開時は聞かれたみたいだが、私はこの映画が間違っているとは思わない。■いざとなったらアメリカ軍が助けてくれる状態で、戦地で泣き叫ぶ子供を撮影する欧米人。吹っ飛んだコカコーラトラックと泣き叫ぶ子供というコントラストはピューリッツアー賞を取る良いコントラストなんだろう。でも実際大人を奴隷のように働かせ、拷問し、撃ち殺しているのは子供たちなのだ。映画で描かれた彼らの無表情で刺し殺すような表情こそ、欧米の戦争認識に対する最大限の皮肉じゃないのだろうか。■私はチャップリンの独裁者を見て、「ヒトラーをバカにしてホロコーストを否定できるのか」と疑問に思っていた。じゃあ、自分をカンボジア虐殺の少女兵士、強制労働させられる人々に置いてみて、どうやったら殺戮を否定できるだろうか。たぶん生きたいというあたりまえの願望や、社会性、常識といった生きる上で不可欠なものすら一度否定しないと無理なんじゃないかと思う。自分が生きている世界が少し変化した「ズレ」の中に大量の人骨が埋まっている構図は、そういう事を語りかけている気がする。 |
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