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タイトル名 |
白夜行 |
レビュワー |
アンドレ・タカシさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2011-02-07 21:05:37 |
変更日時 |
2011-02-12 18:57:09 |
レビュー内容 |
本作を観終えたとき、原作を読み終えたときと同じように心がざわついていた。悪くないと思う。少なくとも、キャラの性格を読み違えていたとしか思えないドラマよりは原作の味わいを享受できる。しかし、どうにも納得できないことがある。映画は原作とは離れて評価されるべきではあるが、私の原作解釈との違いに言及させてください。以下、ネタバレしますのでご注意。言いたいのは、原作を読んで感じた雪穂と亮司の関係に対して本作の解釈が随分と違うこと。原作には描かれない二人のコミュニケーションをモールス信号にしたのは映画なりの工夫だったが、それによって伝えられるのは雪穂が痛めつけたい相手の名前のみ。まるで亮司を犯罪マシーンとして扱うためのアレンジである。その流れのまま亮司は自殺する。犯してきた罪への呵責であろう。とてもわかり易いのだが、少なくとも原作では雪穂が自身の野望のためだけに亮司を利用していたとは思えない。原作には、亮司が雪穂をサポートするための準備を周到に進める描写がある。殺人と強姦だけではなく複雑な内容も含まれる。コミュニケーションの方法は示されないが、二人は密に情報を交換し、二人で計画を練り、二人で実行してきたはずなのである。亮司は事故死するが、事故さえなければその関係が終わるような空気も無かった。被害者の息子と容疑者の娘として表立って接触できない二人の関係を読み解くヒントは雪穂の「私には太陽に代わるものがあった」という言葉だけであるが、それが本作のような関係だったとはどうしても思えない。解りやすい映画にはなったが、個人的にはテーマに連なる最も大切な部分に安直な回答を嵌めたように思える。「太陽に代わるもの」と捕らえていたのは亮司も同じ。明かされないコミュニケーションの中で、目の前にある障害の排除以外に二人が何を話していたのかは想像するしかない。二人はどこかへ行き着くために犯罪を重ねていたと私は思う。二人で太陽の下に出られる場所を捜していたと思いたい。原作には白夜行の行き先を想像させられたが、本作の白夜行には目的地がありません。 |
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