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殺し屋たちの挽歌 - S&Sさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 殺し屋たちの挽歌
レビュワー S&Sさん
点数 7点
投稿日時 2023-06-06 23:02:13
変更日時 2023-06-08 10:46:26
レビュー内容
まるでチョウ・ユンファ主演の香港ノワールのごとき邦題には騙されますけど、純然たる英国ノワールでユニークな視点のロードムービーでした。監督はスティーヴン・フリアーズで、『マイ・ビューティフル・ランドレット』で注目される前年に撮った彼の長編第二作目であります。タイトルバックに流れるギターソロがえらく渋いなと感心したら、なんとエリック・クラプトンの演奏でした。 強盗仲間を裏切って証言をして司法取引でスペインで隠遁生活をしていたテレンス・スタンプ、10年経って出所した仲間に居場所をかぎつけられて拉致されてしまう。このテレンス・スタンプが演じるのが実に不思議なキャラで、捕まるときこそ抵抗したけどボスが待つパリにまで護送される間は悟りきったように穏やかで、派遣されてきた殺し屋には協力的。この殺し屋二人組がジョン・ハートとティム・ロスで、途中で行きがかりで女を一人誘拐することになり、ほとんどこの四人で進行するスペインからパリを目指す奇妙なロードムービーとなるわけです。このジョン・ハートが演じる寡黙な殺し屋は印象深いキャラで、有能なのかはともかくとして非常に冷酷な男で、警察に通報しそうに思える目撃者を躊躇なく殺してゆくのです。コンビを組む若造がティム・ロスですが、当然ですけど若々しくて金髪なので始めは彼とは気づきませんでした。面白いのは処刑台へ歩かされている死刑囚のような立場のスタンプが、逃げるチャンスは何度もあるのにまるでガイドの様にハートたちを導く理解しがたい言動で、それに二人が翻弄されてゆくところでしょう。若いロスの方は女に情が移り気味でスタンプの影響が顕著になりますが、けっきょくハートには通じずに悲劇が訪れます。 「お前は運が良い」と女だけは殺さなかったハートが、その為についに国境を越えられなかったラストは予想通りの展開ですけど、まだ駆け出しの頃のスティーヴン・フリアーズの才気は十分に堪能できました。この映画のジョン・ハートを観ていると、『ジャッカルの日』でジャッカル役でも良かったんじゃないかと思うほどでした。
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