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タイトル名 |
バイス |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2020-02-12 21:59:11 |
変更日時 |
2020-02-12 21:59:11 |
レビュー内容 |
最近は特殊メイク技術の進歩で演技力がある俳優ならばどんな有名人に化けることもできそうですが、クリスチャン・ベイルはデ・ニーロの流れを組む肉体改造型キャラ創りの最後の雄、メイクも凄いですけど20キロ近く体重を増やしてディック・チェイニーを演じ切りました(さすがにこれは辛いらしくて、今後は肉体改造を止めると宣言したそうです)。彼に限らずブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官などそっくりさん大集合といった観もある作品ですけど、みな対象の仕草や喋り方を演技で見事に再現しているところが感心します。 原題の“Vice”には副大統領の“副”という意味のほかに“悪徳”という意味もあり、これはなかなか意味深です。また本来“副”には“正”のような権限はないけど責任も負わないという立場なので、考えてみればこの立場を悪用すれば陰に隠れてけっこうヤバいことができるという絶妙なポジションでもあります。この映画の描いていることがどこまで真実に近いのかは判るはずもありませんが、観る限りではチェイニーはとんでもない悪徳政治屋と解釈されるかもしれません。でも、猛妻の尻に敷かれていたりとても家族思いな面があったり、クリスチャン・ベイルの演技もあって好感までは持てないにしても人間として理解はできるんじゃないでしょうか。観るまでは野心家妻に陰で操られる人という印象はありましたが、どうしてどうして、ワシントンでのチェイニーの活動は完全に彼個人の野心が暴走してゆく過程であると思いました(だいいち、副大統領になることには奥さんは反対してましたからね)。サム・ロックウェルの演じるブッシュ大統領がまた絶妙で、たぶん実物も実像はこんな感じだったんだろうなと思わせる説得力がありました。この映画の脚本は秀逸で、狂言回し的に前半から登場するブルーカラー労働者風のおっさんを「こいつは何者だろう?」と訝しんでいたら、まさかそんな人だったとはと心底驚かされました。編集も実にコミカルで雰囲気を出しているのですが、題材が題材だけに後半に行くに連れてどんどんシリアスになってゆくのは止むを得ないところかと思います。 考えてみると、このブッシュ政権は正・副両大統領とも伝記が映画化されたわけになります、これはある意味で快挙なのかもしれません。 |
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