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タイトル名 |
どん底作家の人生に幸あれ! |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2022-02-04 22:37:08 |
変更日時 |
2022-02-04 23:20:37 |
レビュー内容 |
文豪チャールズ・ディケンズの自伝的小説『デイヴィッド・コパーフィールド』の五十年ぶりの劇場映画化です。それにしても『どん底作家の人生に幸あれ!』とはずいぶん大胆な邦題ですね、でも意外と内容を上手く要約した良いセンスだと思います。 原作はサマセット・モームが選んだ“世界十大小説”にランクインするほどの名作、英文学をかじった人なら知らない者がいないほどの有名小説です。文庫本にしても4分冊にもなる長編ですが、それを二時間にまとめるというのはなかなか骨の折れる仕事だったと思います。この映画化でユニークなところは、主役のコパーフィールドをインド系のデヴ・パテルが演じており、また一部の主要登場人物がインド系・黒人・東洋系の俳優が起用されているところです。なので、コパーフィールドの白人の親友スティアーフォースの母親が黒人女優、なんて不思議な映像を見せられます。このキャスティングの意図は私には?ですが、推測するにデヴ・パテルを主演に使いたいというアイデアから始まった企画なのかもしれません。でも観ているうちにどんどん違和感がなくなるのが不思議、それだけパテルの演技が素晴らしかったということでしょう。この人の映画は初めてでしたが、彼は近い将来オスカー男優賞をゲットするような大物俳優になることは間違いなしです。コパーフィールドの伯母役はティルダ・スウィントンですが、珍妙なキャラを飄々と演じています。『デッド・ドント・ダイ』もありますが、彼女って最近はヘンなキャラで怪演を見せてくれることが多いんじゃないかな(笑)。 メタ・フィクション的なストーリーテリングは現代的な印象を与えますが、実はこれは原作の語り口の再現でもあります。開始から約三分の二までは原作に忠実な展開ですけど、ラストにかけてはかなり監督の独自解釈になっています。世間知らずの妻ドーラやウィックフィールド弁護士の死はなかったことにして、作家として成功したコパーフィールドのもとにほとんどの登場キャラが楽しそうに集まる大ハッピーエンドで幕が下りるのです。ディケンズ自身もこの自伝的小説で失恋や失敗だった結婚生活などを幸福な体験に作り替えており、尺の都合で端折らなくてはいけない事情を逆手にとって、ディケンズの夢想した幸福を見せようとしたんじゃないかな。波乱万丈なストーリーだけど、多幸感に満ち溢れたラストはこれで良かったんじゃないかと思います。 |
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