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タイトル名 |
小早川家の秋 |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2012-07-24 21:58:49 |
変更日時 |
2012-07-24 23:59:38 |
レビュー内容 |
小津安二郎のラス前作なのですが、『秋刀魚の味』よりよっぽど遺作っぽい不思議な作品です。まず、原節子、『秋刀魚の味』には出てないのでこれが最後の小津映画。『東京物語』と似た設定の未亡人なんだけど、本作では『東京物語』での役柄とは違ってなんか凄味まで感じさせられるたくましい女性だと思います。お見合い相手の森繁久彌を翻弄しちゃうところなんか、この役は性格が悪い設定なのかなと思ってしまいました。小津映画の特徴である登場人物たちのアンサンブルは円熟の域に達していますが、やはり新珠三千代がとくにいい演技を見せていますね。 この映画のテーマは、中村鴈治郎が演じる道楽旦那が天寿を全うするまでの数カ月の出来事なんですが、小津安二郎の“死”に対する恐れと無常観が痛いほど伝わってきます。とくに鴈治郎と19年ぶりに再会して、結局その死を看取ることになった浪花千栄子とその娘団令子、この二人のキャラクターは個人的には不気味に感じました。まるで死期が近づいた鴈治郎を黄泉の国からお迎えに来た物の怪じゃないかと思えるぐらいで、とくに死んだ鴈治郎を前にした二人の会話は凄くシュールじゃないですか。笠智衆が出てくるシーンも本筋には関係なくてちょっと変だし、この辺りで流れる音楽がまた突然暗くなってきてなんか不気味です。 よく「脚本に全然無駄がない」という褒め言葉を聞きますが、小津映画、とくに本作は不思議なほど無駄なところや隙がある。それでも名匠の手にかかると傑作になる、映画とは実に不思議なものです。 |
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