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タイトル名 |
現金に手を出すな |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2021-06-30 23:32:19 |
変更日時 |
2021-07-01 10:25:52 |
レビュー内容 |
古いモノクロ映画と敬遠するなかれ、ギャング映画好きなら絶対見逃してはならない一本です。わたし、恥ずかしながら “グリスピ”というのはジャン・ギャバン=マックスのファミリーネームだとずっと思っていましたが、実は“カネ・あぶく銭”みたいな意味の仏語スラングなんだそうです。これを“現ナマ”とルビ付きで邦題にした配給会社の担当者のセンスはたいしたもので、水野晴郎とは偉い違いです。貫禄を擬人化したようなジャン・ギャバンは渋いだけじゃなく女性に対する洒脱さがまた魅力的で、これでモテないはずがないじゃないですか。弟分リトンを隠れ家に招き入れてラスクを肴にワインを飲んで、二人ともお行儀よくパジャマに着替えて歯を磨いて寝るところまで丁寧に見せるリアリズムは、さすが名匠ジャック・ベッケルです。一部の隙もなく抜け目ない暗黒街の大物なのに相棒のヘマで窮地に陥るというのは、この後のジャン・ギャバンの演じるキャラの一つのパターンとして定着した感があります。こういうエスプリが効いたキャラは、ハリウッドのギャング映画や日本の任侠ものではまずお目にかかれない、フランス映画ならではのお楽しみなのかもしれません。リノ・ヴァンチュラは本作がデビュー作だし、ジャンヌ・モローも日本ではスクリーン初登場、そういう歴史的意義もある一編です。 |
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