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タイトル名 |
幻の湖 |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
1点 |
投稿日時 |
2025-03-10 21:47:47 |
変更日時 |
2025-03-10 21:53:36 |
レビュー内容 |
カルトでおバカな映画は数あれど、90年以上の歴史を持つ東宝映画の中でも屈指の地位にある本作は、おバカ映画として観るにはちょっとハードルが高いんですよね。世に数多あるおバカ映画は上映時間が長くてもせいぜい90分、ところが本作は2時間40分も尺がありますからねえ。自分は結果的に三回に分けて鑑賞しましたが、やっぱこれが正解、通して観たら終いには精神状態が不安定になりかねないヤバさがありました。 日本映画の歴史にその名を刻む大脚本家である橋本忍の三作目の監督作なりますが、どうしてこんなことになってしまったのか溜息が出るばかりです。そもそも本作のプロットが生まれたのは、『八甲田山』のロケ現場でブナの木に話しかけた(?)ときに一枚の絵が脳裏に浮かんだのがきっかけだったそうで、もうそこからどうかしています。『八甲田山』という一種の映画的な狂気が渦巻いていた撮影現場に身を置いたことで、すっかりその狂気に憑りつかれてしまったんじゃないでしょうか。一応シナリオは纏め上げたけどさすがに「こりゃあ、あかん…」と自信喪失して製作中止も考えたけど、プロジェクトとしての進行は止められなかったとのこと。東京と琵琶湖畔で二回も尺をとって延々と見せられるマラソン追跡劇は有名だけど、普通は端折るだろうというような車の移動に尺を使ったり随所に冗長極まりない描写が多くて、橋本忍の監督としての力量にも疑問符がつきます。ヒロインの南條玲子も1,600人のオーディションを勝ち抜いてデビューとなっていますが、あまりに素人じみた演技で驚きます。まあ現役女子大生がヌードも披露のソープ嬢役でデビューというのもちょっと可哀そうですけどね。宇佐美彰朗にマラソン指導させたのはいいけど、もっと演技指導に力を入れてください(笑)。とにかくこのヒロインがどう考えてもメンヘラ女としか見えないのが致命的です。 この映画のキャラたちは薄っぺらくて行動にリアリティが無さすぎるところは致命的。雄琴でソープ嬢をしている米国の情報機関員(?)の女なんかが登場しているのがその代表格。でも唐突に始まる戦国時代編には、北大路欣也や関根恵子をはじめ大物俳優がキャスティングされているし、現代編と比べてしっかり演出されてはいます。芥川也寸志のサウンドトラックも無駄に格調高いんですが、彼はこの映画がこんな珍作になるとは予想してなかったんじゃないかな。 やっぱいちばんズッコケるのは、ヒロインが愛犬の仇を琵琶湖大橋上に追いつき「シロ、勝ったよ~」と歓喜してからの敵討ち、たぶん予備知識なしで映画館で鑑賞していたら自分は発狂していたと思います。そのあとの科学考証でたらめな宇宙遊泳のシーンなんて、このバカバカしさと比べたら可愛いもんですよ。 |
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