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タイトル名 |
僕の彼女はサイボーグ |
レビュワー |
BOWWOWさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2009-10-25 00:51:23 |
変更日時 |
2010-05-13 17:54:36 |
レビュー内容 |
「彼女」は言う。「実は私、すごく遠い未来から来たの。いまから100年も先の遠い未来から。タイムマシーンに乗って。驚いた?」そりゃ驚く。そしてあきれる。21世紀現在、こんな恥ずかしい台詞を臆面もなく人気女優に言わせる気骨ある映画監督が、世界に一体あと何人いるだろうか?クァク・ジェヨン監督は言わばシーラカンスだ。この古式ゆかしいシーラカンスは、アラをさがしては鬼の首を獲った気になるひねくれた「映画鑑賞」がいかにつまらないものかを、そっと教えてくれる。なにしろジェヨン映画はいつでもアラだらけだ。無限に溢れるアラを指折り数えあげたところでキリがないし、何の自慢にもなりゃしない。それじゃあここは一つ、この子ども騙しな監督にあえて真っ向から、丸腰で騙されてみようじゃないか!そう思えたら、しめたものである。この幼稚で荒唐無稽で破廉恥なトンデモSFが、まるで宝箱のようにきらきらとした輝きを放ちはじめる。『猟奇的な彼女』をワンパターンに踏襲する「強い女の子と弱い男の子」像も、お得意の未来人も、イグアナ鍋にカピパラのウンコにゲロといったお馴染みの悪趣味なジェヨン節さえも、だ。スクリーンやブラウン管を食い入るように見つめた子ども時代のように夢中になり、笑い転げ、胸を熱くさせる。そんな至福の映画体験が間違いなくここにはある。夢物語に騙される喜び、それこそが映画じゃないかと言わんばかりに。ジェヨン監督は魔法使いだ。魔法は、それを信じた者にだけ力を持つ。階段でくり返されるいつか見た光景はまさに魔法だ。一度目は涙声で強がる「彼女」を遠景で捉えていたカメラが、二度目のシーンで初めてその美しい泣き笑いを接写する。彼女の心を感じる、感じることができる、ように。強く美しい綾瀬はるかと、それをおっかなびっくり笑顔で包み込む可愛らしい小出恵介のコンビは、単なる『猟奇的な彼女』の焼き直しを超えて実に魅力的だ。本作はまさに綾瀬はるかの映画である。サイボーグの「彼女」と未来人の「彼女」、二人は同じ顔をし記憶チップを共有はしていても、別人だ。その別人の二人を一人に融合させる強引なハッピーエンドは、「彼女」がどちらもまず「綾瀬はるか」であるからという非論理的な子ども騙しにほかならない。けれどそんな反則技に騙されてみるのも、このさい悪くない。そう思える私は、シーラカンスの魔法に、まんまとかかってしまったようだ。 |
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