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プレシャス - BOWWOWさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 プレシャス
レビュワー BOWWOWさん
点数 0点
投稿日時 2010-05-13 17:30:21
変更日時 2010-05-13 17:30:21
レビュー内容
『ヘアスプレー』のニッキーちゃん以来の大型新人ガボレイちゃんもまた、ニッキー同様歌って踊れるおデブちゃんだ。だがそれは、あくまで彼女扮するプレシャスの空想する、夢の中でのお話である。幸せな人間にも不幸な人間にも唯一平等に与えられる夢想だけを握りしめ、プレシャスは直視できぬほど悲惨な現実からなけなしのその夢想へと幾度となく全速力で逃避を試み、そして無惨に引き戻される。歌もダンスもラブストーリーもあらかじめ奪われた彼女にただ残されるのは、盗んだフライドチキンを貪り食ったあげく懺悔するようにゴミ箱にゲロを吐く、そんな現実だけだ。だが、映画は彼女の抱えるそうした悲惨を、良くも悪くも中和する。彼女の受ける虐待の描写は、観る者の気分を適度に害する良心的レベルにとどめられ、安全な濃度に希釈される。もちろんそれは悪いことではない。だが節度あるその良識ゆえに、この映画がプレシャスをとりまく地獄の実態を曖昧なものにしてしまっているのも、また事実だ。それでも映画は開きなおったように言う。私たちは第三者なのだ、と。第三者なら第三者として出来る範囲で彼女を抱きしめたいのだ、と。そしてまさに良識的第三者たる彼女の担任教師やケースワーカーに委ねて、それを実行する。もちろんそれも悪いことではない。ボランティアとは多かれ少なかれそうした精神に基づくものだからだ。だが一方の当事者はどうだろう。「ボーイフレンドの一人もいなかったのに」、子を孕み出産し、さらにはHIVにまで感染するプレシャス。彼女の胃につまったグロテスクな「塊」が、易々と消化されることは決してないだろう。まるで彼女がいつか吐き出したフライドチキンのように、それは消化されることなく留まり続ける。プレシャスの記す「Why me?」その問いにも、答えなどない。それでも彼女は生きていく。逃げ場所としての夢想のかわりに、逞しく産み落とした子どもたちをその手に。そしてどんな答えなどよりも切望しつづけた、かけがえのない一言「I LOVE YOU」をその胸に。と、こう書くとそれなりに素敵なラストではある。だが、この結末に安易な希望を見出せるのは、結局のところ私たちもまた第三者であるからだ。少なくともそのことを、私たちは決して忘れてはならない。プレシャスのためにではなく、世界中のプレシャスのような女の子のためにでもなく、中途半端に慈悲深く尊大な私たち自身のために。
BOWWOW さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2019-02-25バーニング 劇場版107.00点
2018-08-12リバーズ・エッジ85.33点
2013-05-25青春神話108.33点
2013-05-02エドワード・ヤンの恋愛時代1010.00点
2013-04-28恋恋風塵97.00点
2013-03-09楽日106.00点
2012-01-24海角七号/君想う、国境の南75.23点
2011-04-02エターナル・サンシャイン96.60点
2011-01-18ソーシャル・ネットワーク76.53点
2011-01-02ファイト・クラブ97.38点
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