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タイトル名 |
男たちの大和 YAMATO |
レビュワー |
かっぱ堰さん |
点数 |
5点 |
投稿日時 |
2015-10-24 23:46:43 |
変更日時 |
2015-10-24 23:46:43 |
レビュー内容 |
大和だけを美化する風潮があるとすれば嫌悪する。ほかにも多くの艦船が沈んだのだし、また当然ながら様々な場面で多くの人間が死んでいるわけだが、ただし3千人以上が乗る軍艦(正しくは艦隊全部)が丸ごと特別攻撃を命じられたことで、特別の悲壮感が生じているとすればまあ仕方ない。 ストーリーに関しては、原作のエピソードや後日談を適宜使って新たにお話を作った形になっている。しかし元が実話でも、結果として不自然に見えるところはないでもない。また特に、思ったことをその場で口に出さずにいられない人物が多いのはどうかと思うが、一方で泣ける場面もちゃんとできており、娯楽映画としてはまあ結構である。蒼井優が最後まできれいな顔でいられたのは幸いだった。 劇中では特に対空戦闘の要員に焦点を当てており、敵の攻撃を直接受けて死ぬ人々の無残な姿をリアルに映像化しようとしていたようだが、映画だとどうしても映像的に美しく描写されてしまう気がする。眼球が飛び出してぶら下がったとか、腹が破れて腸が出たといった話を入れるとより凄惨に見えただろうがまあ無理か。当然だが死ぬのは格好よくない。
ところでこの映画は、戦後以来の左右両陣営のどちらに属するのかが明瞭でない(定番の「お母さん!」が出ていたのは左っぽい感じもする)が、これは安易に立ち位置を定めずに、まずは登場人物の心情を素直に受け取るよう求められているのだろう。自分が何年か前に「知覧特攻平和会館」に行った際(単なる観光)、隊員の心情を思って涙する来場者が結構いたようだが、そのような自然な感情が日本の普通の人々の中にあって、そこに訴える形の映画を作るとすればこうなるのかも知れない。 ただしそれだけだと、わざわざ戦後60年の節目に当たり、戦争をネタに使った泣ける娯楽大作を公開したようにしか見えない。また、あまりはっきり書きたくないが、死んだ人々や生き残った人々が自らどのように納得したかを描いただけでは、存命の生還者や遺族に対してはいいとしても、日本国民の大多数を占める戦後生まれの人間に対し、未来に向けたメッセージを発したことにはならない気がする。 まあ好意的に解釈すれば、それまで延々と続いてきた“戦後”をいわば初期化して、当初のプレーンな状態に戻ろうとしたように取れなくもないが、何にせよベタ褒めする気にはならない微妙な印象の映画だった。 |
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