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タイトル名 |
東京のバスガール |
レビュワー |
かっぱ堰さん |
点数 |
6点 |
投稿日時 |
2023-01-21 13:47:13 |
変更日時 |
2023-01-21 13:47:13 |
レビュー内容 |
ジャンルとしては「歌謡映画」だそうで、歌手本人が主人公の先輩役で出演して、題名の歌を車内で歌う場面が最初と最後にある。物語としては主人公の仕事と恋愛を中心に、巨額の遺産相続問題という変な要素を絡めてドタバタ喜劇の印象も出している。
観光バスの映画なので昭和33年の東京周辺の風景が映り、開業直前らしい東京タワーも見えている。戦後10年以上を経てGHQも昔の話になっていたが、主人公に身寄りがないとの設定は戦災孤児ということだったかも知れない。また南アジア風の君主国の皇太子から求婚されるエピソードがあったのは、現実にわが国皇太子の結婚が話題になっていたからか、または「王様と私」(1956)の影響もあったかどうか。 主人公は最初に「山形県落合村農業会」といういかにもそれらしい団体を案内していたが(無理にいえば現在の山形市落合町?)、すぐに遺産狙いの変な連中が出て来て邪魔されてしまう。不純物を入れないで、まずはお仕事映画としてちゃんと見せてくれと思っていたが、その後に施設の子どもらを案内したことで、仕事の意義を再確認する場面もあったので結果的には安心できた。 恋愛に関しては、順風満帆だったはずが遺産相続問題で邪魔されて、さらには主人公の明らかな失策もあってそのまま破局に至ったのは非常に意外だった。その後の唐突な挽回は都合よすぎに見えたが、まあ先輩の人徳あってこそのハッピーエンドだったと思っておく。 主人公は親しみやすい可愛らしさのある人で、変なことに惑わされない良識があり、また8時に行くと決めたら通す律儀な(確実性の高い)人物だった。河口湖での顛末は、実は本人にも迷いがあってのことだったかも知れないが、最終的には仕事も恋愛も本当に価値あるものを掴んだらしい。 現実のバスガールが「明るく走る」ばかりではなかっただろうというのは容易に想像できることだが、そもそも歌詞もつらさに負けず職業人として明るくふるまう内容になっている。つらいことの中にいいこともあるのが人生だろうし、また社会全体としてもこの後は経済成長が続くこともあり、劇中2人の未来も明るいはずだと思っておこう、という気にさせられる映画ではあった。
なお主人公の会社は「東京観光バス」という名前だったが、現実問題としては「はとバス」のこととしか思えない。この映画を見て、今どき改めて観光バスで東京を回ってみるのもいいかと思わされた。「はとバス」のPR映画になっている。 |
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