みんなのシネマレビュー
親愛なる同志たちへ - かっぱ堰さんのレビュー
◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

タイトル名 親愛なる同志たちへ
レビュワー かっぱ堰さん
点数 8点
投稿日時 2023-04-29 13:50:32
変更日時 2023-05-20 10:57:11
レビュー内容
ソビエト連邦時代の1962年に、工場労働者と市民の抗議活動が弾圧されて死者が出た「ノヴォチェルカッスク虐殺」を扱った映画である。劇中の出来事がどこまで厳密に事実なのかは不明だが、KGBが写真を撮っていた件など現在までに知られたことをもとにして、おおむねこんな感じだったかと思わせる話を作ってある。ただ本当の悪はKGBであって、軍は悪くなかったというのはこの映画独自の考え方なのか、そういう説が本当にあるのかは確認できなかった。
キャストとしては、主演の人が実際にこの場所の出身、その娘の役も近隣の別の町(北約100km)の出身だったらしい。

もともと主人公は、作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」で描写されたような、第二次世界大戦時に自ら望んで戦地に出向いた従軍女性だったらしい。戦後もその延長で共産党員としての地位を築いてきたのだろうが、しかし若い頃とは時代が変わり、自分の信じたものが否定されつつあることに苛立ちを感じていたと思われる。さらに今回の事件は主人公に破壊的な作用をもたらしたようで、これまで形成してきた党員としての人格がはぎ取られ、いわば剥き身の人間像が露出していたようだった。
主人公にとって社会が自分の望んだ姿でなかったとしても、生きるためには社会に合わせた外向けの人格を作り、その内部で本当に大事なものを守ろうとする意思を固める必要がある。ギャップの大きい多層構造の人格形成を迫られるのは不幸な社会だが、それでも心の奥底で大事なものを共有できる、いわば志を同じくする者と信じあう関係を作れるかどうかが重要だ、と言いたい映画なのかと思った。仮にKGBの男が信用できる人物だったとすれば、車を止めた軍隊の男も隠れた同志だったということかも知れない。
結果としては全体主義社会に生きる人間の苦難と、それでも失われない(失ってはならない)希望を描写した映画なのかと思った。また人間ドラマとしては主人公が脱皮を迫られた物語ということで、最後には労働者が酔っぱらう理由もわかったと思われる。ほか劇中では父親と主人公、その娘の三世代がそれぞれ違う世界観のもとにいたようだが、今回は主人公が父親の体験を別の形で再現したようで、いわば世代の順送りのようなことも表現された映画だったらしい。当然だろうが世代間ギャップはソビエト連邦にもあったのだと認識させられた。また個人的には「じきに死ぬ俺は幸せだ」という台詞は同感だと思った(まだ死なないが)。

音楽に関しては、美容院に流れ弾が飛んできた時に、背景に流れていた陽気でモダンな曲との対比が印象的だった。
また主人公が覚えていたTovarishch, tovarishch! という歌は、KGBの男が言っていたように映画の劇中曲(「恋は魔術師」1947年ソ連、原題「春」Весна / Spring、コメディ・ミュージカル・ロマンス)であって、現地では今も「春の行進曲」(Весенний марш)の名前で演奏されることがあるらしい。この明るい曲がエンディングに流れたのがまた皮肉のようでもあるが、これは戦争が終わって主人公が実際に感じた解放感の表現であって、これからの世界にも持ち続けていかなければならない希望の象徴だったと自分としては思っておく。
[2023/5/20追記] KGBの男が信用できるかどうかは、墓地での出来事をどう解釈するかで左右される気がする。自分の考えが間違っていないという前提で点数を1点上げておく。
かっぱ堰 さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-11-23ミテハイケナイ都市伝説 ~闇に葬り去られた人間失格者達~<OV>44.00点
2024-11-16はちみつレモネード87.50点
2024-11-02スイング・ステート56.33点
2024-10-19バーバリアンズ セルビアの若きまなざし55.00点
2024-10-19コーカサスの虜67.41点
2024-10-12VIRUS ウィルス:3255.00点
2024-10-12SHOT/ショット55.00点
2024-09-21ディストピア 灰色の世界44.00点
2024-09-21あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。66.16点
2024-09-14恐怖ノ黒電波64.00点
親愛なる同志たちへのレビュー一覧を見る


Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS