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タイトル名 |
ノクターナル・アニマルズ |
レビュワー |
かたゆきさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2018-12-30 00:04:48 |
変更日時 |
2019-01-02 00:40:09 |
レビュー内容 |
現代美術家として成功を収め、実業家として名を馳せた夫と何不自由ない生活を送ってきたスーザン。ある日、そんな彼女の元に一冊の本が届く。タイトルは『夜の獣たち』。作者の名を見て彼女は思わず息を呑んでしまう。その名は二十年前に破局を迎えたきり、ほとんど音沙汰のなかった元夫エドワード・シェフィールドだったのだ。資金繰りに息詰まっている今の夫を出張へと送り出したスーザンはソファに横たわり、その元夫が書いたという本に目を通してゆく――。物語はその後、彼女の現実世界と小説内のフィクションの世界、そしてスーザンが二十年前に作者である元夫と過ごした若き日々を複雑に行き交いながら、暴力と不条理に満ちたミステリアスで濃厚な世界を形作ってゆく。劇中劇として語られる小説の世界は、テキサスの夜の路上で偶然出会ってしまった荒くれ者たちによって妻子を凌辱される一人の男の物語。そして二十年前の若き日のスーザンと元夫との物語は、情熱的な恋に落ちた二人が悲劇的な結末を迎えるまでを描いている。ポイントは、この小説の主人公とスーザンの元夫役を同じ、ジェイク・ギレンホールが演じているところ。本来は何の関係もないはずの二人が、主人公であるスーザンの想像の中では同一人物と認識されることで、この元夫の本書を書いた意図が透けて見えてくるという非常に高度で深い心理劇を形成することに成功している。とても考え抜かれた優れた脚本であると言えるだろう。また、人生の曲がり角を迎えた中年女性を演じたエイミー・アダムス、凄みのある犯罪者をリアルに演じたアーロン・テイラー・ジョンソンもこの作品の不穏に満ちた空気を醸成させることに貢献している。特に癌に犯された刑事役を演じたマイケル・シャノンの存在感は際立っていた。果たして、このような小説を書きさらには二十年も前に別れた元妻へと送り届けた、この元夫の真の意図とはなんであったのか。復讐?懺悔?未練?そして最後に彼が取った行動の本当の意味とはまで、見る人それぞれにいかようにも解釈できる、とても優れた心理ドラマの秀作であった。 |
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