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タイトル名 |
ロゼッタ |
レビュワー |
吉田善作さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2012-12-03 12:36:19 |
変更日時 |
2012-12-03 12:36:19 |
レビュー内容 |
ドキュメンタリー風に映画を撮る監督は数多くいるが、これほどの透明感、つまりは現実の質感をもった映像を生み出す監督はダルデンヌ兄弟をおいて他にない。強いていえばハネケの90年代までの映画があるくらいだ。そしてその透明映画の旗手であるダルデンヌ兄弟の最高傑作がこの「ロゼッタ」である。幸の薄い少女が主役の映画では決まって美少女がそれを演じる。ぱっと思い付くところで散り行く花のリリアン、少女ムシェットなどなど。しかし美少女とそうでない少女とでは同じ悲劇でも救いの道の数が違うのではないか。美少女に悲劇はありえないとは言わないが、はかなくも美しいその姿は否が応でもみなの同情をひき、そしてその観客の暖かな眼差しがそのまま救いの道になってしまうという自己矛盾を孕んだ悲劇になってしまうのではないだろうか。ロゼッタの容姿はといえば、力強くも美しい眼や凛々しい眉など決して不細工とは言えないが、ごつごつした輪郭に男っぽい無骨な表情、がっしりした体格など従来のヒロインのように繊細な美少女とは無縁といえる。この無骨なヒロインは食べていくのがやっとの貧困と唯一の家族である堕落した母親とに挟まれて生活をしている。こういった極限状態だからこそ、生活とは労働であるという自明の事実が際立ち、その鋭利な現実を観るものの喉元に突き立ててくる。職がなければ労働はないし、労働がなければ生活はないのだ。そんな切実さの中をロゼッタは必死に生きる。その姿はともすれば醜悪ともとられかねない。しかしそれゆえに胸を揺する泥臭い感動を呼び、この少女の幸福を心から願わずにいられなくさせる。ラストシーンで少女は涙を見せる。鋼鉄のトンネルを一人で駆け抜けきる少女などいるわけがない。 |
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