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タイトル名 |
黄昏(1981) |
レビュワー |
飛鳥さん |
点数 |
5点 |
投稿日時 |
2014-10-11 21:54:10 |
変更日時 |
2014-10-11 21:56:04 |
レビュー内容 |
エセルのすべてを包み込むような人柄が素晴らしい。 慈愛にあふれ、ボケの入ってきた夫を常に気に掛け支えている。 妻、母、祖母、どの立場であっても理想的で、大好きにならずにはいられない。 対して、ノーマンは老人の嫌なところをしっかり見せてくれる。 プライドが高く自分の非を認めず、嫌味ったらしい冗談を好み、無神経な言葉で相手を傷つける。 プライドの高さゆえに老いを恐怖して目をそらし、虚勢を張ってしまう。 ノーマンがかまどの失火で少年を理不尽に怒ったのは、その最たるもの。 子供だったら普通それだけで祖父のことが大嫌いになるもので、たとえ祖母のとりなしがあってもすぐに許せるほどの寛容さはないはず。 大人でもそうした老人を理解してあげるのは人生の機微を味わってからなのに、随分と物分かりのいいできた子供のようだ。
ノーマンがチェルシーと違って少年と打ち解けたのは、年を取って子供と同じ目線に立てるようになったから。 同じレベルで釣りを楽しみエキサイトしているが、チェルシーとは厳格な父の立場を崩せずそうした関係が築けなかった。 私生活で不仲だったフォンダ親子を重ねれば感慨深いものがあるものの、作品だけを見つめるならばノーマンとチェルシーの描写は物足りない。 チェルシーが母に父の不満を吐露している場面があったが、セリフが説明的に感じた。 セリフで全部説明するのではなく、そうした二人のこじれた関係がはっきりわかる出来事をサイコロゲーム以外にも積み重ねてほしかった。 そうすれば、もう少し娘の気持ちにも感情移入できた気がする。 志賀直哉の『和解』には感動した覚えがあるのに、この父と娘の確執と和解は心に入ってこなかった。 ヘンリーとジェーンの実話を映画化したほうがよかったような…。
『12人の怒れる男』の若かりしヘンリー・フォンダと本作を重ねて、「老い」というものを考えさせられる。 誰にでも人生の黄昏はやってくるし、それをどう迎えるかというのは逃れられない課題でもある。 静かでじんわりとくるタイプの物語ではあったけど、観るタイミングがズレていたのかも。 もう少し年を取れば、また観てみたい。 |
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