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タイトル名 |
全線―古きものと新しきもの |
レビュワー |
すかあふえいすさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2014-03-15 18:20:11 |
変更日時 |
2014-05-20 23:41:13 |
レビュー内容 |
エイゼンシュテインの映画は、最初退屈な掘り下げから始まる。 ただ、そのじっくりと描かれる掘り下げが後の大爆発へと繋がるのだ。 ロシア革命と虐殺の爆発を描いた「ストライキ」や「戦艦ポチョムキン」、一人の暴君の後悔と絶望を描いた「イワン雷帝」等々。
この「全線」もそんな農民映画だ。 最初1時間は農民たちが泥と汗にまみれる光景を延々と捉える。特に牛を燻製にしていく工程は結構エグい。 ただ、1時間もする内にそこに退屈さは無くなっている。 華やかな少女たちの笑顔と共に。
農民たちはより大きな収穫、より人間として自立するために改革を求めていた。 無知と貧窮に溢れた農村から解放されるため、何より肉体を酷使する農業を少しでも楽にするため。 年老いた農婦マルファは立ち上がる。 半ば諦めの入っていた農民仲間たちは「そんなもんは無理だよ」と嘲笑う。 それでもマルファは止まらない。
協同組合を組むが、旱魃の容赦のない渇きが人々を襲う。神に祈っているだけでは何も解決しない。 自ら機械のトラクターや牛乳分離器など、文明社会の利器を取り入れる。 エイゼンシュテインは今までロシア社会の荒波に揉まれる人々を、文明社会が生み出した機会を通して描いてきた。 「ストライキ」における生産工場、 「戦艦ポチョムキン」における砲艦。
作品では機械のトラクターや牛乳分離器を通して、人々の生き様に変革を起こしていく。 それは同時に人々の運命を大きく左右していく。 「機械の牛」は手に入るが、今まで家族同然に暮らしてきた牛たちとの別れ。 しかし、最早どんな死をもっても農民たちの団結を崩す事は出来ない。 大地を揺らすトラクターの群れ、群れ、群れ!最新の機械をボロボロの布切れが動かす時の感動。 大地に「全線」が引かれる時のダイナミズム!
ただそれだけなのに、こんなに面白いなんて。傑作だ。 |
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