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タイトル名 |
フランス組曲 |
レビュワー |
フィンセントさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2018-07-22 16:09:26 |
変更日時 |
2018-07-25 16:22:39 |
レビュー内容 |
不倫モノの洋画。私は基本的に、最後は結ばれない(が、心はきっと永遠につながっている)という着地点で描いていくストーリーが好きだ。
これを読んでくれている映画ファンの皆さんも、「あ、それならあの映画もそうだったね、あとあれもね」と、いくつかそういう作品を挙げられるかと思う。
そういう映画の中でもこの「フランス組曲」は、あまりにも切なく、胸をかきむしられ、身が引き裂かれるような思いをしながら見終えた。
不倫の障壁は、基本的に”既婚”である。
だが世間では既婚以外にさらにもう1つ障壁が立ちはだかるケースがたまにある。たとえば教師と保護者の個人的なつきあい禁止のように、学校側の”ルール”という障壁がその一例だ。他にも、成人と未成年という”年齢”の障壁というのもある。そしてこの映画では”戦時中の敵同士”であるという障壁がセットされているのである。
リュシルとブルーノが既婚であること、それはまぁ乗り越えられるとしよう(だってそもそも愛情とかなさげな結婚だから)。しかし敵同士という、世間の目があまりにもキツイ状況。ダブル障壁。
痛い。心が痛い。
ブルーノとの2人分のゴハンの用意をして、官能的な赤いドレスと赤い口紅でオメカシして彼が戻ってくるのを待っているリュシルのもとに、夫をかくまって欲しいとお願いにきた知り合いの女性がやってきた場面も心が痛んだ。 知人女性の「え?敵の男とネンゴロってこと?てかあなた、結婚してるじゃん」という不審の表情と、リュシルの「いや、あなたの夫を助けてあげたいのはヤマヤマよ、でもこれから彼とようやっと二人きりになれる最初で最後の時間なの・・・ほんと困るのよ、よけいな邪魔しないで・・・ほんと、ほっといて・・・」というオロオロした表情の駆け引き。
結局リュシルとブルーノは、唯一のチャンスを逃し、体をひとつにすることは二度となかった。
そして最後の二人の別れの場面。 ブルーノが彼女をせめて最後に抱きしめたくて、車に乗ろうとする彼女の腰に手をまわすが、まるでそれがただの風かのように、スっとすり抜けて車に乗り込むリュシル。
二人のお互いへの想いは確実にそこにあった。でも、想いがあったって、結ばれることもなければ、想いをあからさまに口にすることもできず、胸に秘めたままもう二度と逢えない・・・
不倫の切なさ、ここに極まれり。
障壁を二つ抱えながら、人を好きになり、相手も脈ありとわかりながらも、一線を越えないまま、すれ違い、そして二度と逢えなくなった・・・という経験のある私としては、なんだかヒロインが同じ気持ちを分け合える女友達に見え、お互いの傷を見せ合い、なぐさめあえたような気がした。
(それはそれとして、この映画で印象的な、<楽譜のラブレター>はグっときましたね。「ピアノ・レッスン」の<鍵盤のタブレター>といい勝負です。そもそもピアノを介在させたロマンス映画はピアノ弾きの私としてかなりヒット率が高いです。) |
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