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タイトル名 |
扉をたたく人 |
レビュワー |
⑨さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2016-01-06 00:39:45 |
変更日時 |
2016-01-06 00:39:45 |
レビュー内容 |
妻を亡くして以来無気力気味に過ごしてきた大学教授がひょんなことから出会ったジャンベ奏者の青年との交流によって変わり始める。ありがちな友情ものかと思われた物語は青年の理不尽な逮捕により別のテーマが浮き彫りになってくる。
9.11以降のアメリカの闇に焦点を当てながらも映画は深刻になりすぎない。もちろん当事者にとっては深刻な展開だがそうなりすぎないのは音楽の存在があるからだろう。偏屈そうな主人公の顔をほころばせたのは青年タレクに教えられたジャンベ。「練習してる?」と逮捕後面会の時に聞く彼が印象的だ。タレクの母親は「あなたたちが好きなものを教えて」と彼の妻に聞き思い出を辿る。そして「オペラ座の怪人」。人は状況に関わらず楽しみや生きがいが必要なのだ。「オペラ座の怪人」の興奮の後に訪れる非情な宣告。あまりのあっけなさにどうしようもない無力感に襲われる。ラスト、主人公は青年が逮捕された地下鉄のホームでジャンベを叩く。大きくなるその音は彼の怒りだろうか。悲しみだろうか。そして日常の轟音にそれはかき消されていく。秀逸なラストだ。この音が「聞こえるか!聞いているのか!」
リチャード・ジェンキンスの演技も素晴らしいがタレクの母親を演じたヒアム・アッバスの存在感も良い。二人の関係を恋愛に発展するかしないかという微妙な塩梅に落ち着けている感じも良く、抑え気味かつ丁寧な演出も好感。しかし、タレクたちの祖国がシリアというのは物語上のこととはいえなんとも言えない気持ちになる。移民というもはやアメリカだけの問題ではなくなったテーマにしても公開当時よりリアリティーを持ってきている作品ではないだろうか。 |
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