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タイトル名 |
愛、アムール |
レビュワー |
Cinecdockeさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2015-08-24 23:06:27 |
変更日時 |
2025-02-18 00:02:10 |
レビュー内容 |
半身不随になった妻を献身的に支える夫の姿が踊っているようにも見える。 本作は過去作に比べて敷居が低く、そして容赦ない。
目を背けたくなるほど衰弱していく妻を、事務的にこなす介護師を解雇し、中途半端な態度の娘をも突き返す。 長年、苦楽を共にした夫の純粋さと狂気。 二人以外の来訪者は聖域を侵す邪魔者でしかない。
今までのハネケなら妻の尊厳のために"約束"を果たして、観客を凍りつかせて終わらせるだろう。 しかし、映画は愛の到達点を描きだす。 二度にわたる鳩の来訪に、一度は拒んできた来訪者を抱き締める夫。 鳩が妻の霊魂かは分からない。 ただ、夫が綴った手紙が通じたのだろう、具現化した妻が何事もなかったかのように皿洗いをする、 ハネケらしかぬ穏やかさに意表を突かれた。 そして、二人はまるで散歩でもするような感覚で旅立っていく。 妻の何気ない一言に涙があふれた。
定冠詞のない"Amour"が象徴するように、開かれた部屋には二人の生きた証が、愛が隅々にあふれている。 一人残された娘はどう感じるのだろう? 第三者から見れば、老々介護の悲劇でしかない。 しかし、それは悲劇か否かは当事者の二人にしか分からない。 如何なる結末であれ二人は安らかに逝けたのではないだろうか。
人間をよく知らなければ、このラブストーリーは絶対に撮れない。 ハネケにしか撮れない嘘偽りのない純愛にただただ圧倒された。 |
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