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タイトル名 |
ドラゴンへの道/最後のブルース・リー |
レビュワー |
せんべいさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2021-02-23 15:27:40 |
変更日時 |
2021-02-25 20:52:10 |
レビュー内容 |
志穂美悦子さん主演の【女必殺拳シリーズ】を観て、その製作のきっかけにもなったブルース・リーさん主演の映画を、これまで観てこなかったのは誠意がないと思い、BDをレンタル。【ドラゴン怒りの鉄拳:1972年】→【 燃えよドラゴン:1973年】に続けて鑑賞しました。 正直、レンタル前は全く期待していませんでした。今回、一連のBDをレンタルする際、当サイトのレビューを参考にしたのですが、当作品の最近のレビュー(2020年投稿のもの)を拝読した限りでは「つまんない/イマイチ」という言葉が並んでいたからです。 それでも観ようと思ったのは…【ドラゴン危機一発:1971年/死亡遊戯:1978年】は【リーさんのアクションスタイルが確立する前の作品/リーさんが途中で亡くなり、代役をたてて完成させた作品】という予備知識があって、劇映画としての完成度は期待できず、そのため「リーさん主演の映画を観るのは当作品を最後にしよう」という、半ば、義務感にすぎませんでした。
さて結果は…まず第一印象は「あのリーさんが笑っている!」ということ。それまで観たシリアスな2作品とは対照的な明るさが新鮮で「皆で笑いながら楽しくご覧下さい」というメッセージが込められているように感じました。そして、たまたまですが、BDの字幕での主人公名【トン・ロン】という響きに、私は“とろい”という言葉を連想したのですが、ヒロイン・チェンを演じるノラ・ミャオさんの表情も、当初はまさに『何よ、この“とろい田舎者”は…』という印象。その後、彼が【本領】を発揮するや、彼女の表情が一変して輝いたのは痛快でした。 また、悪役のうち、特に手下のリーダー格・ホーは、【怒りの鉄拳】で通訳のウー役だった俳優=ウェイ・ピンアオさんだとすぐわかり、しかも、身体をクネクネと楽しそうに演じていて、ウーよりも適役だと思いました。さらに、怪しい日本人空手家の「オマエハ、トンロンガ~」「ア~、イタ…ア~、イタ…」は、少なくとも日本では、爆笑を誘うある意味【迷セリフ】のような気がします。 なお、明るい雰囲気は、ジョセフ・クーさん作曲のBGMも貢献していたと思われます。
このように明るい作風に対し、シャープな【ブルース・リー・アクション】は画面を引き締め、一層、際立っていると感じました。リーさん自身が監督だけあって?何気に上半身の肉体美をアピールする場面が挿入されているのも粋な演出だと思います。 また、銃を封じる【投げ矢】も魅力的。もし私が小学生のときに観ていたら、鉛筆や割箸をナイフで削って「投げ矢だー!」と学校で投げ、先生に怒られていたことでしょう。 そして、最後のチャク・ノリスさん(失礼ながら、髭が無いお顔が可愛い!)との対決は、某漫画からのフレーズを借りると、まさに漢(おとこ)と漢(おとこ)の正々堂々とした一騎打ちであり、最後に道着をかける締め括りは、強敵(とも)への敬意の表れでしょう。そして「はい、カット!」と撮影が終わった後「お疲れさま、チャック。君が出演してくれたおかげで、素晴らしいクライマックスが撮れたよ」「こちらこそ、いい体験をさせてもらったよ、ブルース。この映画の成功を祈っているよ」と、称え合う二人の姿が目に浮かぶようでした。
ただ、個人的に唯一残念だったのは…明るい作風でずっと【死人ゼロ】で展開していたのに、終わり際で、一気に登場人物の数人が亡くなってしまったことです。作風が変わる引き金になった年配調理師・ウォンについて言えば、演じたウォン・チュンスンさんは【怒りの鉄拳】で“実は敵の回し者”という役だったので「ひょっとしてこの役も…」と予感はしていました。しかし“闘いに否定的なオジサン”のままでも、物語に支障はなかったと思います。 そして、いっそ、チャック・ノリスさんは、手足を痛めて動けなくなった時点で「機会があったら再戦しよう」と決着にし、ホーも、ボスと共に逮捕され…と【死人ゼロ】を貫いてほしかった…というのは、私が求め過ぎでしょうか…。
さて、採点ですが…特に前半のユルイ展開は好みが分かれそうですが、私は【個人的に残念だったこと】で1点のみ差引き、9点とさせていただきます。あらためて他の皆さんのレビューを遡って拝読すると、実は高評価が多いとわかり、当初の【半ば、義務感で】という鑑賞動機が、如何に無礼だったか、猛烈に反省しています。 最後に…墓参りを済ませてチェン達のもとを去り、上り坂の並木道を歩きながら遠く小さく消えていくラストシーンは、今となっては【天国へ旅立って行く姿】のようにも見えました。亡くなられて半世紀近く経っても、いまだに私達に感動を与え続けてくれるブルース・リーさんへの畏敬の念をもって、後姿を最後まで見送らせていただきました。 |
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