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タイトル名 |
グッドナイト・マミー(2014) |
レビュワー |
DADAさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2017-04-09 00:09:31 |
変更日時 |
2017-04-09 00:09:31 |
レビュー内容 |
沼に浮かぶ空気マットからルーカスの名を呼ぶエリアスの心情を思うと可哀想でならない。この映画の全てが、エリアスの主観が観ている内的世界と現実が交差した虚実混じりの世界であり、常に一緒に行動する仲の良い双子の兄弟は、強い共依存関係にあったのだろう。顔を包帯で覆い隠して病院から帰った母親に不信感を募らせるのは、母親がエリアスから父親の存在を消し去ったという、負の感情が払拭しきれていない事の表れ。
共同墓地から拾ってきて、レオと名付けた猫の死にも、母親が関与しているのではないかと疑念というより確信を抱いている様子から、母親不信と憎悪は素顔が覆い隠された事で更に疎通遮断の思いに駆られ、疎外感を募らせ、憎しみが増大したのだろう。何よりルーカスを失ったという喪失感のダメージは甚大で、現実逃避で精神が破綻するのを回避したのだろうが、既にエリアスは心に損傷を受け、深く病んでいたのだ。母親の寝顔にゴキブリを這わせ、切り裂いた母親の腹部から這い出てくる虫の幻覚シーンを観るにつけ、彼の病は重篤。惨劇に至った責任の所在は冷淡な母親にあるのは間違いなく、内向的で繊細なエリアスに、フリは出来ないと諌めるのではなく、優しくケアすべきだった。
大きな白黒写真パネルの中のピンボケな女性の全身像や、ワイヤーのトルソーマネキンにしても、実体のない曖昧で空疎なものを象徴しているし、捉えきれない人の在り様を示してもいる。湖面に沸き起こる不穏な波のざわめきは、ルーカスの死を暗示するイメージなのか、この映画の、こうした名状し難いシュールな映像感覚は惹かれるものがある。無人の町の通りを、何事かを叫びながら独り歩く男の姿も、時々映し出される月夜の映像同様、不思議感覚に満ちている。 |
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