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無法松の一生(1943) - K&Kさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 無法松の一生(1943)
レビュワー K&Kさん
点数 8点
投稿日時 2022-10-17 19:10:00
変更日時 2022-10-17 19:10:26
レビュー内容
初っ端のカメラが凄いですね。2階の部屋から屋根瓦に行き、街灯ナメながらおっ母さんにフォーカス。最後腰の辺りから見上げる位置で固定。きっと子供が親を見上げる目線でしょうね。乗車拒否して喧嘩したり、芝居小屋の迷惑行為から、ブッ飛んだ主人公だなぁとは思ったけど、人の話をシッカリ聞いて、反省するところは反省できる男。徐々に松五郎が義理人情に厚く一本筋の通った魅力的な男に観えてくる。

字は読めないけど配られるビラを貰い、さぁ自分の出番だと本気の全力疾走。学生のケンカを見守るだけでなく、手まで出してしまう気の入り様。これこそ背中を見せて子供を育てる、まさに理想の父親像。ぼんぼんとの親子のようにほのぼのした関係から、成長したぼんぼんを「吉岡さん」と呼ぶことへの戸惑いなんて、この時代の映画で良くこのシーンに時間を割いたなって感心する。

クライマックスの祇園太鼓。太鼓を叩く松五郎に、路上を埋め尽くす観客、海の波しぶきに湧き上がる雲。“無法松”というタイトル通り、松五郎の生き様を表すような勢いが感じられた。そして走馬灯のように駆け巡る思い出。『あぁ、一生とある通り、太く短い生涯の幕を閉じるのだな』と感じさせるに充分な映像。最後止まる車輪と降雪で死を表現。唐突だけど見事。

検閲。そんな時代だったんだ。所々のブツ切り展開に“??”となったけど、納得。こち亀両さんのようなホロリとさせる人情話と思いきや、寅さんのような未亡人への想いを丸々切除されていたとは…これね、完全版を観ることが出来たら9~10点かも知れない。そんな嘆かわしい時代があった事に私が出来る抵抗として、8点にさせて頂きます。
ただ吉岡大尉のいきなりの死は、あの繋がりで正解というのは意外。
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