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タイトル名 |
日の名残り |
レビュワー |
なんのかんのさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2010-12-18 10:15:13 |
変更日時 |
2010-12-18 10:15:13 |
レビュー内容 |
人は自主独立でなければならない、という現代の空気の中で、でもけっこう「執事願望」ってのもあるんじゃないか。選んだり考えたりする責任を逃れた、歯車の安楽。もちろんそれは孤独という裁きを受けるのだけれど。父の死のとき、足にマメをこさえた客のもとへ医者を連れて行くことで、その場を逃れることが出来る。立派な執事として気分も高揚できた。ユダヤ人女中解雇で少し抵抗しかけたりもするが、でも押し切ることはしない。「主人の命令」という逃げ道がある。客に社会情勢について尋ねられる(ちょっと『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』で、運転手がワインのよしあしを試されるシーンを思い出す、ヨーロッパの上流社会の陰湿さ)。これやっぱり彼の心に引っかかってたんだよね、のちにパブで、歴史に関心を持ってた、と言う。ここらへんの二重三重に隔てて感情を確認させるのが、実にうまい。けっして無感動ではない内面を、チラチラと見せていく。センチな恋愛小説を読んでいる。「語彙を多くするためです」って。ミス・ケントンが意地で婚約した晩、ワインを持って(一度階段で割ってしまう)彼女の部屋に至る。泣き崩れている彼女。ほこりが残っていた、とだけ告げてワインも置かずに去っていく。こうして彼はまた「自分の人生」から逃げる、「無感動の執事」に逃げ込む。そしてあっさりした再会、彼女は孫の面倒と、確実に外の世界に自分の場を作っている。20年目に彼は裁かれる。アンソニー・ホプキンスとしては、某博士よりもこっちで名を残したかっただろうなあ。己れの心の動きに戸惑い、それを抑える感じが実にうまいんだなあ。 |
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