なるせ湯みんシネ店 どうしましょう?(仮)

 

ラ・スクムーン(1972年【仏・伊】)


 本作は、仏蘭西国きっての任侠作家であるジョゼ・ジョバンニが、自らの原作を監督した“男心に男が惚れる”フィルム・ノワールの”泣ける”映画だ。



 はじめて観たのは、中学生の頃、TV(映画ファンの希望の星♪東京12チャンネル)で。
 映画館で観たのはずっと後のことだ。

 ジャン=ポール・ベルモンド演ずる「マルセイユの死神」と、その兄貴分で、大戦後の地雷処理で片腕を吹き飛ばされたミシェル・コンスタンタン。この二人の、顔はいかついが、いぶし銀の、滲み出るカッコ良さに、私は一目で惚れた。



 余談だが、大学生の頃、初対面のある学生が、自己紹介でこの映画が好きだと口にしたことから意気投合し、以来彼奴とは今もって無二の親友だ。彼奴のこの映画への惚れようは、その後こっそり見せられた自作のシナリオの登場人物に、ジャンとミッシェルと名付けられていた(笑ってはいけない、ここでは彼の名誉のため発表を控えるが、題名はもっと笑えた!)ことからも容易に想像がつくだろう。

 かくいう私も笑えない。やはりこの映画を観た直後、ベルモンドがこの映画の中で見せた大股開きに腰掛けたまま隠し持っていた2丁の拳銃を素早く引き抜いてぶっ放すというのを真似ようとして、派手に後ろに倒れてしたたかにでっかちな頭を打ちつけたことがある。

 で、どこが泣けるのかって?

《以下、ネタバレ注意》 



 ラストシーン。
 コンスタンタンとその妹であり恋人でもあるクラウディア・カルディナーレを無残にも殺られ、ベルモンドが単身敵地へ殴り込みをかけようと、霧深いパリのモンマルトルの階段坂を上っていくその後ろ姿に、手回しのオルガンが奏でる秀逸なテーマ曲がかぶさる。

 その直前、ベルモンドがオルガンを弾くおやじに対してする「ある行為」が、これまたとっても痺れるのだよ。


 「嗚呼、なんてカッチョええんじゃろう!!!」

評価:10点
鑑賞環境:地上波(吹替)