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オープン・ウォーター(2003年【米】)インディーズ映画好きの親友が「どうしても見せたい映画を焼いてきた」と言ってオイラの前にズイと突き出した。
「一言で言うなら、海の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』だ」。 ここでオイラの興味がググーンと奈落の底まで落ちて行ったのは、皆さんご想像の通り。お前があの映画を買ってるのはよぉーく知ってる。んが、お前の推薦でグラストロン鑑賞作品に選んで、地獄の花道を通ったんだよオレは。 この時点で本作は、鑑賞の対象から自動的に外れたも同然だったんですが、とりあえず最初だけでも観ておこうと思ってプレーヤーに突っ込むと…。 …おお! ちゃんとカット割ってるよ!(笑) そんなこんなで普通の映画だと知って、一気に見通す事ができました。 こりゃ凄いねえ。果てしない海、無限の空、流れる雲と波。そこにポッカリと浮かぶ肩から上の人間ふたり。これは『ナッシング』と同じような絵作りでありながら、遥かに引き込まれる「ホンモノの強み」ですね。正直「ハリボテのスタジオ作品なんかじゃなくて、こういう映画をこそ観たかったんだ!」という内なる自分の声が聞こえました。 演技も、本当に鮫の出る海域で、リアルさを追求して撮っただけあって、半分演技じゃない。終わりの方で、集団で出発する探索船とヘリ vs 主人公たちを取り巻く鮫たちの対比で「あー西部劇だったのか! 納得納得」と膝を叩きました。西部劇よりも構成要素が少ない分、根源的で神話的でアニミズムに満ち、何やら『コヤニスカッティ』に匹敵する圧迫感を受けましたが。 あのエンディングの後味の悪さは、主人公を救って「ハッピーエンドですよーん」というフリをするハリウッドメジャー作品よりも誠実で、奥が深く、これから長い年月の間に何度も思い浮かべることになりそうな名場面だと感じます。実際、年を経て何度か見たら評価がもっと上がるかもしれません。 なかなか気付く機会の与えられない「自然と人間との残酷な関係」が、こんなにも身近な設定、こんなに美しい絵で映画になった事に素直な感動をおぼえました。カタログスペック的には都市伝説に近いけど、やはり現代の神話というのがピッタリだね。 疑ってごめんな。お前が勧めてたのに食わず嫌いだった『ソウ』シリーズも、今度ちゃんと観るからな(現在仏モード)。 |
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