SCAT/くちずさむねこ(2007)

 

鬼が来た!(2000年【中】)

●2010/7/20: ちょこっと追記しました。

【元レビュー】
全面書き直しっ。
しまったあァ~! DVD返した途端に読み解き方が分かったァ(涙)! 古い中国語で『鬼』っていうのは幽霊の事なんだよね。だから花屋は村人から見ても皇軍から見ても『鬼』だったわけだ。その後因果が巡ってラストでは主人公が鬼畜な幽霊に変じ、日本軍人に祟る(だからラストの成仏シーンは意義深い)。この話は多分『聊斎志異』とかの中国怪談や民話のルールに完全に従ってるよ。怪談のパスティーシュとしてとっても美しい造りになっている。となると…惨劇の連鎖の根はマーの家に花屋を運んできた奴なんだけど、これも物語構成からすると幽霊(=かつて村に恨みを抱いた誰か)という事だろう。一体それが誰なのか…きっと、映画中にヒントがあると思う。村の歴史もチラッと語られてるしね。いつかまた見て、このへんを読み解いてみるつもりです。つうか是非とも古典に詳しい中国作家にノベライズして欲しいなあああ。
●過去の追記:過去のレビューを色々読んでみたけど、日本軍の描き方が醜悪だったとは思わないなあ…石原莞爾風の《民族融和》みたいな超国家的スローガンと、武士道に精神規範を求める軍律との狭間で分裂症みたいになった軍人の心理がうまく現れていたと思いますね。武士道に限らず、自民族の規範を他国で貫くのは難しい。●なんでこの映画がインパクトあるのか、いま明快にわかった。差別系の放送禁止用語を頻発するからだ…まあ下品系はないのでキレイに喋ってますが…これ、モザイクなしのAVを初めて見た時の衝撃と同じだなあ(苦笑)。

●2010/7/20 追記:
いろんなレビューサイトを覗いてみると、「いや最後のアレは国民党軍で~」と弁明的な口調でコメントする評が多い。この点について。
オイラは、本作の物語が中国的メルヘンのフォーマット上で動いているのを理解したので、あまり日本がどうこうという意識は持たなくなりました。作品が舞台にした時代が20世紀だったから、皇軍が敵に回っているんだし、国民党軍が最後に〆を担うわけです。これがもっと過去の時代なら、蒙古や突厥が蛮族の役に当たっているだろうし、(現在まさにそういう危機が始まっている事だし)未来を舞台にすれば西蔵や越南…つうかチベットやベトナムが蛮族として中華を蹂躙していてもいい。その時、最後に主人公を裁くのは中国共産党だろう。要は、日本人は孫悟空と同じ立場であったわけだ。
本作の物語フォーマットの中では、中国人にとって大日本帝国も倭寇の一変種でしかない。その、奥の深いごった煮的な中国文化の中で、日本の位置付けはモンゴル人と同様だ。そういう蛮族が中華世界を脅かすのは皇帝が徳治しないから…そういう背景まで、中国人の観客は読み取るはずだ。
この作品では皇軍は最初から異化されている(もちろん日本人から見て)わけで、日本の観客はリアルに与えられた生彩を、いちど剥ぎとって観る方がいいと思う。
今の中国人にとって蒙古や突厥がどーでもいい存在であるように、日本人もどーでもいい存在(=過去の歴史)になった。この映画からオイラが読み取ったのは、そういう中国史の胃袋の強靭さです。
まあ共産党への配慮は確実にあるだろうけど、それは、孫悟空を体制に帰順させて最終的に明帝国のメンツは潰さなかった西遊記と同じ事なんだナと思うんですよ。

むしろあちこちの数多いレビューを読んでみて、日本にとっての中国は、白村江の大敗戦以来1500年永久に外患なんだろうなあ…と、思ってしまうのだ。アタマぽりぽりかきながら。
そういう気質だから、この手の作品を作る時、日本映画はユーモアを欠いてしまうのかもしれない。『キャシャーン』とかね…オイラにとってはあれは稀代のギャグですが…。
評価:9点
鑑賞環境:DVD(字幕)
2010-07-20 09:52:51 | 実写作品 | コメント(0) | トラックバック(0)