SCAT/くちずさむねこ(2007)

 

ガールズ&パンツァー 劇場版(2015年【日】)

半年ぶりに(まだやってるの!)、4DX版で観てきました。感想後日。
とりあえず、4DX環境では新キャラのローズヒップ最強!

どんな映画かっていうと「キュンバシュッガガッドッゴォォォンキュルキュルガッコンガランガランドドド…」(殲滅戦中盤までの流れはこれでだいたい間違ってないはず)という感じで、音響のリアルさだけで丼三杯な戦車アニメです。

まだまだ悩んでるんですが、このアニメって「プライベート・ライアン」と比較できるんじゃないかと思いました。
戦闘とその影響の描写に関しては、マジでそのレベルに行ってます。
そこには日本アニメらしく、「戦車道」という仕掛けが挟まっているんですが、今回の映画版はラスト30分でそれを意図的に壊した。
安全なゲーム世界でありながら、戦場で起こっていることのリアルな現実を見せた。まずはそこを評価しましょうか。
ここからやや深いネタバレ入りまーす。いまいち散漫に…。

TVアニメの映画化ってこともあり、「これはファンサービスのためにやっておかねばならぬ」的お約束のたぐいが膨大にあるんですが、そのあたり大体はキッチリとキープしつつ、肝心な部分ではアニメ版の語法を捨てて映画になりきります。ここらへんのスイッチの切り替えが自在なのと、最初から最後まで敵を没個性に描写したことで、だんだんとドキュメンタリー作品的な色合いが出始め、やがてセリフも完全に消え、観客はただただ破壊し合う戦車を見つめる状態に。
このシリーズは「戦車のスペックと搭乗員の技量以上の戦果は上げられない」という法則が徹底しているので(だからこそ、その壁を越えるための戦術が毎回テーマになる)、各車両の砲の威力や重量のシミュレーションは信頼できると思ってます。それが証拠に、実際その製作の徹底ぶりを知らしめるためにシリーズ最弱部隊である知波単学園の「明るいムダ突撃」シーンを突っ込んだんだと思うんですよね。「ガルパンは精神論は語らねえぜ」的なね。ついでに書くと、後半のプラウダ高校の脱落ぶりは、各人とも自分の車両のスペックや役割を知っての上の判断なので、精神論というより「リーダーの能力欠如による戦略の不在」をドライに描いていたはず。
…というわけで話が戻りますけど、戦闘シーンについては結構な検討と物理シミュレーションをやってると思うんですよ(機動性だけはおそらく倍掛けしてるな、シリーズ当初からね)。
その上で、TV版では画面を割って各人の顔を出す(ロボットアニメでお馴染みの)語法を、各戦闘のある瞬間からやめて、映画としての「カメラ」「視点」を押し出していく。画面から人がいなくなり、運のいい戦車と、残念な戦車と、破壊される建物だけになる(まだこの時点では各車両の無線の会話は入れているけど)。
結果、「ゲーム」としての楽しさを維持しつつも戦場の残酷面を逃げずに正面から描けている。ここの「リアルにシミュレーションされた戦場の中にカメラを放り込んだ」点が、『プライベート・ライアン』を彷彿とさせるとこです。
ついでに今回は敵味方で合計60両の殲滅戦なので、悪夢的な、一種の戦車水滸伝状態。中盤のアクロバット的な作戦がひと段落したら、後はもう強者が弱者を身ぐるみ剥いで行く状態に(継続高校のフィンランド戦車はスペック的にはめっちゃ弱い奴なんだけど、例外的に次元の違う精神論で勝ってるような気がする…)。

TV版を知らない人が観るとこの戦闘シーンは苦痛だと思いますから、あえて薦めるというような暴挙には出ません。
特に終盤は、破壊された車体のマークだけを見て誰が脱落したかを悟らなきゃいけないので、ファンでなければ辛いでしょう。オイラも必死に画面追いかけましたが、カチューシャが脱落した場面がわからんかったです…。
でも、確実に2年後に次作(戦車道世界大会編)が上映されるであろうことを考えると、TVアニメの方をまずつまみ食いしてみてもいいかもしれませんぜ。
ちなみに今月から、アマゾン・プライムビデオで、地上波放映分は無料で見れるようになりました(OVAのアンツィオ高校戦だけ何百円か必要)。
ガンダム・エヴァと続いてきたメカ物アニメの系譜が、まさかの新展開を起こすかもしれないという予感を込めて、TVアニメから入ることをお勧めしておきます。
ちなみにオイラはアニメから入らず、発売直後にサントラCDを買ってハマってた人間です。このシリーズの音楽もまた異色なんだ。今回の映画版では普通なアニメBGMになりましたが、基本、すべてブラスバンドだけで演奏できるように楽器構成が縛られてます(実際、大洗とかで演奏されてそうだ)。こんなアニメBGMは初めて。

ちなみに個人的には貧乏弱小高校のアンツィオが大好きなんで、今回のエンドロールのあの笑顔を見れて完全満足してますよん。
評価:8点
鑑賞環境:映画館(邦画)