321. なまいきシャルロット
《ネタバレ》 シャルロット・ゲンズブールが大ブレイクするきっかけになった映画ですよね。思春期。この年頃って自分に無いものを持っている人にモーレツに憧れたり、ちょっと背伸びしたくなったりするんですよね。そんな、もう子供じゃないけど大人になる一歩手前の女の子を演じるシャルロットが本当に可愛らしく、愛すべき良質の青春映画だと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-01-22 23:44:41) |
322. 美しき運命の傷痕
《ネタバレ》 決して楽しい映画ではないですが、子供の頃に父親を失い、その心の傷が癒えないまま大人に成長した三姉妹の三者三様の現在の人物像とその描写に無理が無くとても説得力もありました。そしてもう一人、その過去の悲劇の登場人物である姉妹の母親の目と表情だけでの演技は見事でした。特にラストで次女の「告発は間違いだった」という言葉に対し「それでも私は何も後悔していない」と返した時の目とその表情には凄みすら感じました。後半になって過去が明らかになり、ラストで母の元を訪れた三姉妹ですが、まだ母親には姉妹が知る事の出来ない心の闇があるのでしょうか。 [DVD(字幕)] 4点(2009-01-21 11:28:06) |
323. エル・スール
《ネタバレ》 驚くほど美しくて静かな映画。音楽もほとんど使われず、自然光を巧みに利用した静かで美しい映像はまるで美しい絵画を見ているようでもある。この作品は多くを語らない。でも、その映像には言葉では伝えられないエリセ監督の思いが確かに宿っているように思え、観ている僕はこの美しい世界にすっかり魅了されてしまった。過去に大きな忘れ物をしてきた様でもあり、南を去り、苦悩を抱え北の地で生きてきた様でもある父。子供の頃から分からなかった父の抱えている物を知りたい娘。父は最後に娘に何かを語ろうとしたのだろうか。果たして南にどんな答が待っていて、娘は南の地で何を見つけるのだろうか。ラストは娘の幸せを願わずにいられなかった。エル・スールというタイトルでありながら作品は南には辿り着かない。かつて南に何があったのかも描かれず、観ている僕は作品が辿り着かなかった南への想像をめぐらせる。でも、鑑賞後はこれで良かったんだと思えた。でも、いつの日か娘の南への旅の終着点をエリセ監督に見せて欲しいなとも思うのです。 [DVD(字幕)] 9点(2009-01-21 11:23:00) |
324. 黄昏に瞳やさしく
《ネタバレ》 厳格な性格の老教授と子供の頃から心の距離があり、父とは離れて暮らす息子。その息子が離婚し、少し風変わりだが利発でかわいい孫娘の面倒をみることになる老教授。そこに自由奔放で老教授とは正反対の性格の息子の嫁までが転がり込んでくる。ある日突然一つ屋根の下で暮らす事になった彼らの抱える三世代それぞれの悩み、世代の壁や価値観の違いからなかなか理解し合えないもどかしさ、でも時には仲睦まじい様子やお互いを思いやる気持ちがさりげない毎日の生活を通して淡々と優しく描かれています。人生の黄昏時に差し掛かった老教授の孫娘を見守る瞳の優しさ。原題の意味は分かりませんが、とてもいい邦題ですね。孫娘役の女の子が本当に可愛らしく、実にいい演技をしています。本音を言ってしまえばこの女の子の可愛らしさが一番印象に残ってしまいました。演技力のある子役のかわいい女の子はある意味無敵の存在なのかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-01-21 11:07:16) |
325. ドクター・モリスの島/フィッシュマン
《ネタバレ》 「ドクター・モローの島」をレビューしていたら思わず半魚人の事を思い出してしまったのでついでに一言ツッコミを入れにやって来ました。これ、完全に「ドクター・モローの島」のパクリですよね。ある意味笑える半魚人、そしてこの作品のパクリに連動するかのごとく作品のタイトルまでパクッてしまった邦題史上最低ランクに位置づけられる意味不明の謎の邦題。モリス博士って誰だ・・・? [地上波(吹替)] 3点(2009-01-19 23:34:58) |
326. 迷子の警察音楽隊
《ネタバレ》 エジプトの警察楽団が公演の為イスラエルを訪れる。しかし行き先を間違えて人影もまばら、殺風景な町に迷い込んでしまう。その町の食堂の女主人に助けられての(この人がすごく魅力的でした!)一夜限りの交流が淡々と描かれます。隣国とはいえ長年民族対立が続くアラブとイスラエル。その交流はどこか気まずくぎこちない。でもその内に打ち解けて「田舎に泊まろう」の様に一宿一飯の御礼はミニ演奏会!みたいな展開もアリかなと思ったのですが最後までぎこちないまま。でも、ぎこちないながらも彼らの間には確かに心の交流がありました。地味ながらもその交流の描写が微笑ましかったです。常に威厳を保ち、団員を厳しく律する団長。冒頭、ミスした若手団員にクビを言い渡してしまう。事あるごとに団長に逆らうその若手団員。一夜が明けた別れの朝、女主人に小さく手を振る団長とお前も手を振れ、と促されて手を振る若手団員。色々あった女主人との一夜を通して団長は優しく若手団員を許し、そして団長に逆らうことなく笑顔で手を振る若手団員。その別れのシーンが何とも微笑ましく、鑑賞後の余韻もとてもいい映画でした。 [DVD(字幕)] 8点(2009-01-09 23:31:23) |
327. コーラス
《ネタバレ》 問題児ばかりで監獄のような寄宿学校に音楽を愛するマチュー先生が赴任してくる。そして心が荒んだ子供達に歌を教えます。子供達に歌を教え始めると、いきなり子供たちは目を輝かせ熱心に練習に取り組みます。でも、こんな簡単にはいかないはずで、もう少し先生と子供達が少しずつ心を通わせ、先生との間に信頼関係が生まれ、歌の素晴らしさを知っていく過程が描かれていれば良かったかな、と思いました。ただ、子供たちの歌声は本当に美しく、それだけでも観てよかったと思いました。 [DVD(字幕)] 5点(2008-12-31 01:29:21) |
328. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 エンニオ・モリコーネの音楽と共に思い出すだけで思わず微笑んでしまう、ホロリとさせられてしまう素晴らしいシーンの宝庫のような、まさに珠玉の名作ですね。映画が村人の共通の娯楽で、満員の観客が映画館で素晴らしいシーンには一同に拍手を贈り、悪役がのさばる場面では皆が一斉に悪役に罵声を浴びせる。全ての場面を目に焼き付けて目一杯楽しんでやろうという古き良き時代のパラダイス座の雰囲気が本当に良かったですね。ラストシーンの素晴らしさは皆さん書かれている通りです。大人になったトトがキスシーンを見つめる表情は童心に帰って、神父さんやアルフレードの目を盗んでこっそり観ていたトト少年の表情のようでした。自分の大好きな、思い出深い映画を再び見ると初めてその映画に出会った当時の頃の事を思い出す。そんな思い出と共にゆっくりとその映画を心から楽しむ。そんな映画の素晴らしさと、映画ファンの思いが詰まった本当に感動的なラストシーンだったと思います。 [映画館(字幕)] 10点(2008-12-30 02:17:36) |
329. グッドモーニング・バビロン!
《ネタバレ》 イタリアからアメリカにやってきて、言葉の壁や数々の苦難をいつも二人の力で乗り越えてきた兄弟の物語です。親子愛、兄弟愛、映画への愛に溢れた素晴らしい作品だと思います。ハリウッド草創期の描写がとても楽しく、兄弟が作った象の美しさ、人工の光ではなく、スタジオに降り注ぐ陽の光の美しさに感動しました。また、オメロ・アントヌッティ演じる父とグリフィスが対面するシーンも良かったです。ラストはちょっと無理やり感がありますが、それでもやはり、兄弟がカメラに向かって子供達に最後の姿を納め合う姿には感動しました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-12-25 23:58:22) |
330. 太陽に灼かれて
《ネタバレ》 映画のタイトルや、前半のミハルコフ自らが演じる大佐と家族が田舎で平和に暮らす美しい風景からは想像もつかなかった後半のストーリー展開が衝撃でした。前半の平和な暮らしの描写の時間が長く、退屈に感じられるかもしれませんが、中盤から後半にかけてその平和な暮らしに時代の暗い影が忍び寄るあたりからどんどん物語に引き込まれていきます。それにしても娘役の女の子がミハルコフ監督の実の娘だったとは!その無邪気な可愛らしさが後半からラストにかけて一層物語に悲しさをもたらします。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-12-23 18:59:15) |
331. ひまわり(1970)
オープニング、青空の下一面に咲くひまわりとマンシーニの音楽の美しさに心を奪われました。(ただ途中、マンシーニの音楽が壮大すぎてちょっと雰囲気と合ってないかな?という気もしましたが)そして物語の途中、その美しく力強く咲くひまわりに隠された悲しい秘密が語られます。エンドクレジットでもどこまでも続く一面に咲くひまわりが映し出され、この作品は終わります。エンドクレジットの最初にアップで映し出されるひまわりは観る我々に戦争の悲惨さを訴えかけているかのように感じました。戦争によって人生を大きく変えられてしまった男と女を演じるマストロヤンニとローレンの名コンビによる名演が実に見応えのあるメロドラマであると同時に反戦映画としても素晴らしい作品だと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-12-22 11:47:42)(良:1票) |
332. 戦場のピアニスト
《ネタバレ》 公開当時劇場で観ました。主人公のシュピルマンが逃げ回る様子も、目をそらしたくなるシーンの数々も実話だけに全てが重い。鑑賞後の余韻は感動というのとはちょっと違う。衝撃と怒りに身も心も震えるようだった。もう一度観たいとは思わない。でも、見てよかったと思う。廃墟の街に立ち尽くすシュピルマンの姿が忘れられない。 [映画館(字幕)] 7点(2008-12-20 21:41:07) |
333. スプレンドール
《ネタバレ》 イタリアの地方都市の映画館が当初は繁盛するも時代の流れと共に閉館に追い込まれるまでを描いた作品です。映画館「スプレンドール座」の支配人に名優マストロヤンニ。人の良い映画館の支配人をこの作品でも手堅く好演していました。スプレンドール座で上映される数々の名作。きっとエットーレ・スコラ監督のお好みの作品ばかりなんでしょうね。そしてラストは閉館を惜しみ、満員の客で埋まるスプレンドール座。名作「素晴らしき哉、人生!」のラストのクリスマスの奇跡をスプレンドール座のラストに合わせるかのように客の一人がハーモニカで蛍の光を奏で、「メリークリスマス!」でその歴史に幕を閉じるスプレンドール座。この粋な終わり方もとても好きです。同時期に公開され、同じイタリアの作品の「ニューシネマ・パラダイス」と比べると地味ですが、どちらも映画への愛に溢れた素晴らしい作品だと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-18 23:03:05) |
334. ベルリン・天使の詩
《ネタバレ》 冒頭、モノクロの映像で2人の天使が空からベルリンの街並みを眺めている。この天使の視点の際に用いられるモノクロの映像からは柔らかな陽の光や、生命感や体温などは感じられず寒々しい映像が印象的です。そして、二人の天使が会話を始める。後に人間になる天使ダミエルはこう言う。「霊でいるのにうんざりする時がある。永劫の時に漂うよりも僕を大地に縛り付ける自分の重さを感じたい」と。やがて彼は一人の人間の女性を愛し、彼女を探す為人間として地上に舞い降りる・・・には少々不恰好な地上への登場の仕方でしたが。でも、人間になった瞬間、モノクロからカラーに映像が切り替わるこの時が感動的でした。吐く息は白く、一歩一歩踏みしめる足音。そこには歩んできた自分の足跡が確かに残っている。色にあふれた世界やコーヒーの温かさを感じ、人と触れ合う。彼のこの映画の一番最後のつぶやき「僕は今、知っている。いかなる天使も知らない事を」が感動的であり、説得力がある。この映画のテーマは何気ない日常の中にある幸福や、限りある生命である人間への讃歌という単純明快なものだと感じました。天使だった頃に憧れた自分の重さを確かに感じながら、彼の人間としての物語は今始まったばかり。だからこそ、この映画にラストシーンは無く、「乗船完了!」の声の後、「つづく・・・」という幕の閉じ方は明日への希望を感じさせる何とも素敵な終わり方だと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-11 22:44:22)(良:1票) |
335. さよなら子供たち
《ネタバレ》 ルイ・マル監督の少年時代の実体験を映画化したものです。ルイ・マル監督にとって、とても辛い仕事だった事でしょう。美しくもどこか寒々しさを感じさせる色調の映像が印象に残ります。今まで幾つもの映画を見てきましたが、この作品のラストシーンは最も強烈に印象に残るラストシーンの一つであり、忘れること事ができません。神父とユダヤ人の子供が一列になって連行されていく。それを見送る子供たちが誰からともなく「さよなら神父様」と口々に声を掛ける。それに神父が振り返り、たった一言「さよなら子供たち」と返す。それに続くジュリアンの何ともやるせない、物悲しい表情。非常に重く、忘れ難いラストシーンです。見送る者と見送られる者。この両者の間に人種や信じる神が違う以外に同じ人間として何の違いがあるというのか・・・。神というものが存在するならば何故こんな蛮行を見逃されるのか・・・。映画が終わり、劇場を後にしてからもいつまでもこんな結論の出ない思いが頭の中をぐるぐると回っていた事を思い出します。公開当時劇場で見てから20年が経った。観ようと思えば再び観るチャンスはあるのですが、いまだにもう一度観ることが出来ずにいる作品です。 [映画館(字幕)] 9点(2008-12-09 10:56:50)(良:2票) |
336. イル・ポスティーノ
《ネタバレ》 イタリア南部に浮かぶ小島の美しい風景にまずは魅了されます。主演のマッシモ・トロイージはこの作品の完成直後にこの世を去りました。とても好きな役者さんだったのでその早すぎる死が残念でなりません。そんな病と闘いながらの彼の演技には心を打たれます。特に、島の美しい風景の数々ー波の音、風の音、美しい星空などーを録音していくシーンの彼が特に強く印象に残ります。 [映画館(字幕)] 6点(2008-12-07 18:44:48) |
337. アパートメント(1996)
《ネタバレ》 良質の恋愛サスペンスでした。複雑に絡み合う4人の男女の関係と、その心理描写が巧みで、現在と過去が交錯するという手法は一つ間違うと支離滅裂になってしまうものですが、徐々に謎が明らかになっていき、最後は全ての謎を解き明かしてくれる語り口が見事でした。映像も音楽もとてもスタイリッシュで、どこかミステリアス。全編に漂うこの雰囲気も良かったです。この雰囲気にフランス語の響きがとてもよく似合っていました。途中、ヴァンサン・カッセルとモニカ・ベルッチがあと少しで出会えるのにすれ違ってしまうというシーンがありますが、こんなことって案外誰の人生にもあることかもしれないですね。本人は全くそれに気付くことなく。 [ビデオ(字幕)] 8点(2008-12-06 20:59:39) |
338. グリーン・カード
《ネタバレ》 なかなか面白くて素敵なシーンも沢山あって、好きな作品です。お互いの事情のため偽装結婚した男と女。面接が上手くいけば即離婚するはずだった2人。最初は当然全く噛み合わなかった2人が喧嘩しながらも一緒に過ごすうちに少しずつ距離が縮まっていって最後は・・・とストーリーは予想通りです。でも、どんでん返しが痛快な映画もあれば、予想通りに行ってほしい映画もある。「グリーン・カード」はまさにそんな映画ではないでしょうか。お互いの特徴を確認しあうシーンでドパルデューが自分で自分のことを「鼻は特大」と言ったのには思わず笑ってしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-11-29 23:37:49) |
339. JFK
《ネタバレ》 アメリカでは真相を追究することに非常に勇気がいるテーマだと思いますが、オリバー・ストーン監督の「絶対妥協しない」という強い意思と心意気が感じられる。気合の入った真相追究ものを見たという感じです。勿論今も真相は明らかになっていないし、真相は暗殺実行者や、その黒幕にしか分からない訳ですが。時間が長い映画は苦手ですが、ケネディ暗殺には以前から興味があったので長さを感じることなく最後まで興味深く見ることができました。事件から何年も経っていない当時に真相を究明しようとしたジム・ギャリソンに敬意を表したい。 [DVD(字幕)] 8点(2008-11-22 01:22:17) |