61. ジャンヌ・ダルク(1999)
《ネタバレ》 神の預言とか神の信託とかがキリスト教圏を舞台にした映画にはよく出てくる。ジャンヌ・ダルクは中世フランスの女闘士というぐらいの認識しかなかったが、神の啓示を受けたと国王にアプローチしたのは知らなかった。神の啓示を受けたと主張する現代のカルト宗教家にダブる。こういうタイプの人間にはどうも胡散臭いものを感じてしまう。 ジョヴォビッチは凛々しくて魅力的だが、狂信的でヒステリックな主人公には魅力を感じない。人を殺したことがないと言いながら、結果的に戦いを先導して多くの人を死なせている。言動に矛盾がある。 結局「神の徴」も自分が見たいものを見て、いいように解釈していただけ。冷めた視点でジャンヌを問い詰める神の化身(ダスティン・ホフマン)が、宗教と人間のリスクを浮き彫りにしてくれる。 教祖となって人を動かすことができるのは、たとえ間違っていたとしても確固たる信念(というよりも思い込み)と、それに基づくブルドーザーのような行動力を持つ人物だろう。カルト教祖も自分が心底神の使いだとか生まれ変わりだと信じているから、それに洗脳される者が出てくる。それにしても、19歳の田舎娘の妄想のような直言がああも簡単に受け入れたのは、迷信がはびこるような時代だったからか。ジャンヌによほどのカリスマ性があったのかもしれないが、この映画からはそれが感じられなかった。 身も蓋もなく言ってしまえば、思い込みの激しい痛い女に振り回されたお話。でも、ジャンヌ・ダルクを悲劇の英雄として祀り上げるよりは、こうした人物像に描いたほうが現実的で良かった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-09-17 01:50:17) |
62. 死霊のはらわた(1981)
《ネタバレ》 サム・ライミ監督のカメラワークが、悪霊の視線で不気味に迫る。リメイク版を見てから、このオリジナル版を見た。特殊効果はさすがに今見ると随分しょぽいし、ツッコミどころもいろいろあるけれど、わけのわからない勢いは感じる。ストーリー性はほとんどなく、お化け屋敷を怖がって楽しむような印象。オカルト系スプラッターなのに特殊効果がリアルでないためにあまり生々しくはなく、ちょっとコントチックに見える面もあるので怖すぎることはない。みんなでツッコミを入れながらワイワイやるのも一つの楽しみ方かも。リメイク版とは好みが分かれるところだろうが、三十年以上前に作られたスプラッターホラーの草分け的存在という価値はある。 [インターネット(字幕)] 5点(2015-05-10 22:55:59) |
63. 死霊のはらわた(2013)
《ネタバレ》 サム・ライミ監督のオカルト系スプラッター・ホラーの伝説的作品をリメイク。麻薬中毒の妹を治療しようと集まった兄や仲間たちに、呪文で呼び寄せられた悪魔が血の惨劇を起こす。悪魔に憑かれた妹を助けようと戦う兄が、途中までは主人公のよう。 しつこく追ってくるゾンビのまとわりつくような恐怖は出ている。ただ、ストーリーは極めてシンプルで、何かプラスアルファがないと物足りない。 オリジナルのほうを後から見たけれど、そちらでは麻薬中毒の治療目的ではなく、ただ別荘に遊びにきた設定だった。ストーリー性はなく、お化け屋敷に徹しているように思えた。 こちらは兄と妹の関係にストーリー性を持たせようとしているようだが、それが少し中途半端になっている印象も。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-05-08 00:59:39)(良:1票) |
64. ジャージー・ボーイズ
《ネタバレ》 フォー・シーズンズも知らなかったし、この時代、このジャンルの音楽に何の思い入れもない。 リアルタイムでドップリはまった世代なら、もっと関心をもって見られるのだろうけど。 一世を風靡する人気グループが崩壊するのは、同じようなパターンを辿るようだ。 個人活動が始まり、金の問題でもめる。 4人メンバーがいれば、当然才能の違いも出てくるし、そうなると自然と確執が深まる。 その上、女が絡んだり、人望もないのにやたらリーダーぶるヤツが出てきたらもうおしまい。 既視感があると思ったら、チェッカーズやハウンドドッグの泥沼の確執劇を思い出した。 ジャージーボーイズの場合は、トミーが金にだらしなくすべてをぶち壊した。 創設メンバーだけに厄介な存在だったろう。 トミーの借金を返済しても、愛する娘を失ったフランキーは、家族を大切にしてやれなかった悔いを一生背負うことに。 富や名声も、家族を犠牲にしてはむなしい。 [DVD(吹替)] 5点(2015-04-22 22:31:39) |
65. シンデレラマン
《ネタバレ》 前半は良かったんだけど、後半失速。 『あしたのジョー』がバイブルだと、こちらはちょっと物足りない。 ただ、フィクションの漫画ではなく、実話がベースという強みはある。 一番胸に迫ったのは、光熱費も払えなくなったジム・ブラドックが、恥をしのんで馴染みのボクシング関係者たちに物乞いまでしたところ。 個人的には、結局そこがクライマックスになってしまった。 ボクシングシーンは迫力もなく、長くてダレる。 ガッティvsウォードの壮絶な打ち合いにしびれたようなボクシングファンなら、試合のシーンの演技など緩くて見ていられないだろう。 ボクシングやスポーツ物の試合部分は、普通に見せたところで実際のプレイより格段に見劣りする。 なので、それ以外のドラマ部分で勝負するほかなく、試合部分はもっと短くてもよかった。 [DVD(吹替)] 5点(2015-04-19 22:44:11) |
66. 幸せのレシピ
《ネタバレ》 ストーリーはたわいない。 いがみ合った二人が最後は仲直りして一緒に店をやるんだろうなと思っていたら、そのまんまストレートな王道のオチ。 なので、ハラハラ感は全然ないが、二人のキャラは魅力的。 ただ、カウンセリングを店長に強制されるほどだから、もう少しエキセントリックで不安定なくらいのほうがいいかも。 姉の忘れ形見が二人を結びつけるのに一役買っているが、ケイトと心を通わせるエピソードがちょっと弱い気はする。 ニックが女性にとってできすぎた男性像なので、明らかに女性向きか。 ケイトの厨房に来たニックの理由が、サフランソースということだが、それほどのものとは思えなかった。 [地上波(吹替)] 5点(2015-03-17 21:36:58) |
67. シージャック(2012)
《ネタバレ》 リアリズムに徹していて、ドキュメンタリーのような見応え。 ソマリアの海賊にシージャックされた『キャプテン・フィリップス』が実話を元にしているだけにリアリティがあったけれど、本作はフィクションにも関わらずそれよりも更にリアル。 予定調和のハリウッドものとは対極にあるので、先の読めない緊迫感がある。 でも、何か物足りない。 映画はフィクションなのだから、それだけじゃないような。 海賊と直接交渉にあたる社長に共感できるか、できないか。 日本の会社とのビジネス交渉での辣腕ぶりが、海賊との交渉にも発揮される。 社員の命がかかった交渉を専門家に任せずに自ら引き受けるなど、自分だったら恐ろしくてとてもできない。 責任感と勇気があふれているともとれるが、社員の命を軽く見ているからそんな交渉を引き受けることができたとも思える。 ビジネス交渉と同じように、身代金の額をどこまでも強気で値切ろうとするスタンスからもそれはうかがえる。 交渉を何ヶ月も長引かせるのは、人質の健康や生命を第一に考えればできないことだ。 会社の姿勢に対するシェフの苛立ちと家族の焦りが胸に迫る。 もちろん社長もいろいろ悩んではいるけれど、こういう人間を好きにはなれないし、カッコいいとも思わない。 [DVD(字幕)] 5点(2015-01-13 23:36:24) |
68. 仁義なき戦い 広島死闘篇
シリーズ2作目だが、1作目のほうが面白かった。 山中に焦点が当たっているので、実質的な主役は北大路欣哉。 ただ、あまりにも簡単に騙されているので、頼りなくて魅力を感じない。 出番は北大路ほど多くないが、狂犬のように暴れまわる大友を演じた千葉真一のほうが印象に残るくらい。 一番印象に残ったのは梶芽衣子で、驚くほどにキレイで魅力的。 [ビデオ(邦画)] 5点(2014-10-12 21:56:17) |
69. 四十九日のレシピ
《ネタバレ》 惜しい。途中まで面白くなりそうだったのに、終盤で台無し。 余計な干渉ばかりしていた無神経な伯母(淡路恵子)が、突然ダンス衣装で現れたのには口あんぐり。 頑固で聞く耳を持たなかったのに、唐突に物分り良く協力的になったのは何故? 言い過ぎたのを反省したってことなんだろうけど、伯母の心境に変化があるならその流れが不自然にならないように描かないと違和感を感じてしまう。 無理やり大団円に持っていこうとしたように見える。 夫が亡き妻を偲ぶ夫婦愛にはホロッときたが、主人公と継母のエピソードがほとんどなくて母子愛への感動につながらない。 主人公の子供を産まなかった女の哀しみと、継母の子育てへの思いがもっとリンクされていれば、母子の心情も更に浮かび上がったような気もする。 映画を観てから原作を読んでみたが、小説は人物の心境が細かに書いているので把握しやすかった。 [DVD(邦画)] 5点(2014-09-26 21:01:57) |
70. JFK
謎の多いケネディ暗殺を陰謀説から描いたものだが、情報量が多く時間も長いので疲れる。 内容も忘れていたので何年かぶりに再鑑賞したが、やっぱりある程度の予備知識がないと情報量が多くてついていくのがちょっとしんどい。 オリバー・ストーン監督の政治色、メッセージ性の強さはこの映画でもしっかり発揮されている。 ケネディ暗殺に関しては謎も多くて確かに疑惑の残る事件ではあるが、政府の陰謀説のストーリーに都合の悪い事実は排除したり拡大解釈いている部分もある模様。 反証もいろいろあるようなので、映画を鵜呑みにするのではなくストーン監督のフィルターにかかったストーリーだということは頭の隅に置いておかないと。 それでも、事件にまつわるいろいろ興味深い点を知ることができた。 いつも正義面しているアメリカだが、カストロ暗殺を謀るキューバ計画など相当エグイ工作をしてきたんだなと。 そんな奴らであれば、ケネディ暗殺の謀略もまったくありえないことではないのかなとは思わせる。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-04-27 10:48:36) |
71. 社葬
《ネタバレ》 大新聞社で会長派と社長派の派閥抗争。 会長が解任後に倒れて重体になったかと思えば、社長も腹上死でえらいこっちゃえらいこっちゃ。 社長は自宅での病死ということに仕立て上げ、一方会長は容態を持ち直し…。 絵に描いたような会社の醜い権力争い。 よくある話ではあるが、役者がうまいので見せてくれる。 クビを回避する起死回生の一手で、愛人の芸者に顔つなぎを頼んだのは、愛人を水揚げした男。 それは愛する男の口から聞きたくなかった言葉であり、二人の関係に終わり告げる言葉でもある。 愛人役の十朱幸代に土下座してワインをぶっかけられる緒方拳。 緒方を裏切る江守徹の憎々しい敵役っぷりも見もの。 [ビデオ(邦画)] 5点(2014-04-21 18:35:47) |
72. 新・刑事コロンボ/狂ったシナリオ<TVM>
《ネタバレ》 若き天才映画監督の傲慢さなど、キャラの描き方はうまい。 恋人を捨てるのに役者を使ってアプローチさせて出会いを演出するのが象徴的。 したたかな年増の秘書と犯人の駆け引きもいい。 ただ、新シリーズになって20分程長くなって90分余りになったせいか、少し冗長な印象を受ける。 テンポよく70分余りでまとめたほうが、このシリーズには向いているようだ。 ラストで芝居仕立てにした役者紹介の演出にも違和感。 [DVD(吹替)] 5点(2013-11-30 21:46:07) |
73. 新・刑事コロンボ/汚れた超能力<TVM>
《ネタバレ》 インチキ超能力者がマジックを使って翻弄。 そのトリックを主人公が暴いていくストーリーは、後の人気ドラマ『トリック』にも通じるもので面白い設定。 ところが、旧シリーズから十年余りのブランクがあり、NBCからABCに放送局も移ってスタッフも異なるせいか、旧シリーズとなにか違う。 ラストの演出や新しい吹替えにも強い違和感。 [DVD(吹替)] 5点(2013-11-30 21:44:09) |
74. ショートバス
《ネタバレ》 日本では性描写にボカシは入っているもののハードコアレベル。 普通の男女のSEXだけでなく、レズ、ゲイ、乱交パーティ、おまけにヨガのような体勢で自分のものをしゃぶりながら精液を飲むというマニアックな自慰も登場。 男だけの3Pもあるし、知らずにカップルで見るととんでもない空気になりそう。 夫とのセックスでイケない恋愛セラピスト、パートナーとの新たな関係を模索してもう一人男を加えるゲイカップルなど、登場人物はユニークで個性的。 いろんな愛の形や悩みがあるものだと新たな世界を知る思い。 ところが、そういう過激な性描写の作品にありがちなどぎつさや下品さとかはなく、エロはあまり感じない。 どこか哀しくて滑稽で、でも一生懸命に生きていて。 根底には孤独を癒す温かな人間愛が流れていて、ある種の品の良ささえ感じるくらい。 ただ、共感はできないので一歩引いた目でみてしまう。 メインの女性があまりかわいくないのも残念。 [DVD(字幕)] 5点(2013-08-24 00:14:10) |
75. シュリ
《ネタバレ》 朝鮮統一をめぐる北と南のバトルに両国諜報員同士の悲恋がからむ。 大勢での包囲にも関わらず北の諜報員を何度も簡単に逃がしているように見える。 北の諜報員が凄いというより、南がマヌケっぽく感じられるほど。 スケールは大きいけどドンパチが冗長で緊迫感に欠け、人間ドラマが単調になっているような気が。 ストーリーやテーマは『JSA』のほうが面白い。 [DVD(字幕)] 5点(2013-08-20 21:11:04)(良:1票) |
76. 視線のエロス
主人公は下心丸出しに若い子にアプローチするただのエロ中年。 終始カメラワークが主人公目線で、不倫を疑似体験して楽しむように作られたかのよう。 二人の会話が妙にリアルで、微妙な心の変化や駆け引きに臨場感があって感情移入できる。 内容はあってないようなものだが、イザベル・カレが十分魅力的なので監督の狙いは成立している。 [ビデオ(吹替)] 5点(2013-06-26 00:03:05) |
77. ジュマンジ
ボードゲームで遊んでいるとサイコロの出た目に止まったメッセージ通りの不思議なことが巻き起こる。 子供にウケが良さそうで大人も楽しめる内容のため、家族連れで映画館で観るのに最適。 ビックリ箱のような映画。 今回たまたまテレビでやっていたのを久々に懐かしく見たが、やっぱり以前みた映画館の迫力とは違った。 [映画館(字幕)] 5点(2013-06-07 00:12:30) |
78. 少女 an adolescent
《ネタバレ》 少女と中年の警官の恋愛が退廃的なトーンで描かれる。 フランス映画に見られるようなテイストで、音楽にもフランス音楽が使われているので意図的だろう。 陽子役の新人小沢まゆは、さすがに中学生ほど幼く見えないが少女には見える。 奥田瑛二も危ないエロ中年の匂いが出ていて好演。 半身の鳥の刺青の入ったエロ警官、警官をSEXに誘う中学生、交尾中の犬に拳銃をぶっ放す兄、孫の裸を盗み見る彫り師、ラリって車で事故死する男…。 どこかネジの外れた危なっかしい人間ばかり出てくるのは、奥田ワールドなのか。 孫娘の綺麗な肌に刺青を彫ろうと説得する爺さんの論理がぶっ飛んでいる。 陽子と母が同じ男を巡って醜く争うは、父が首を吊った煙突から兄が飛び降りるは、もうドロドロのメチャクチャ。 そんな崩壊した家庭の中で、陽子の男への思いは一途。 男と対になる半身の鳥の刺青を掘って、二人で羽ばたくことを夢見る。 背中一面に彫り物を施されるシーンは、なかなか印象的。 ただ、主人公の警官がどうしても好きになれないので、作品の評価もそのぶん下がってしまう。 [ビデオ(邦画)] 5点(2013-01-08 00:29:47) |
79. 少林サッカー
このハチャメチャさは、それが受け入れられるかどうかで、評価も分かれて当然か。 少林拳を広めるためにダンスに手を出し、お次はサッカーでドタバタ劇。 初見ではおバカすぎてついていけなかったが、見直してみるとこのギャグテイストはそれなりにおもしろい。 [ビデオ(吹替)] 5点(2012-12-16 23:57:07) |
80. シング・ストリート 未来へのうた
《ネタバレ》 学校でバンドを組んでの青春ラブストーリーだが、よくある類のストーリーで新鮮味がなかった。 ラストのボートでイギリスを目指す二人に、「小さな恋のメロディ」のトロッコを漕ぐ二人を思い出したが、「小さな恋のメロディ」はどこか懐かしい気持ちもかきたてられて共感もできた大好きな映画だけれど、本作はバンド活動に無縁だったこともあってかそういう思いになることもなく。 主人公が美形の少年なのでハートを捕まれる女性もいそうだけれど、このストーリーなら逆にイケてない少年が奮戦するほうがリアルな青春っぽくてまだ良かったような気がする。 [DVD(吹替)] 4点(2020-12-09 18:51:04) |