21. フライトプラン
断片的でミステリアスな雰囲気がある冒頭が良いです。しかもこれが後々の不確かさへと繋がっているから効果的です。飛行機に搭乗すればくもり窓にハートマークを書き、ヒッチコックの「バルカン超特急」をしてみせ何気なく概要をほのめかし、さらにはそれを単なるマネゴトではなくメロドラマティックに消化する上手さもあります。ただ、観客に不満を覚えさせるのはご都合主義的展開の不自然さにあるのでしょう。映画ですから当然ご都合主義はありですし、母の強さを強調する誇張表現は良いのですが、観ている最中からドンドンドンドン気になってしまうというレベルになれば素直さを失ってしまいがちになります(一気につきぬけてしまう緊張感の持続がないわけではないのですが)。 [映画館(字幕)] 7点(2006-02-07 15:53:11) |
22. PLANET OF THE APES/猿の惑星
《ネタバレ》 リメイクというのは良いところはそのままに、悪いところは改善できるので、基本的にはオリジナルより出来が良くなると思います。しかしオリジナルが名作であると、そのイメージを壊してしまうという事の方が遥かに大きく、評価を落とす事になってしまいます。さて「猿の惑星」は言わずと知れた名作です。しかも〝自由の女神〟の衝撃のオチがあってこその作品です。オチのある名作をリメイクする事が決まった時点で、バートン監督の敗北(世間が言う意味での)は決まったも同然だったと思います。ですからどうせなら、もっと〝バートンらしさ〟を出して欲しかったですね。 でも単品として考えればけっこう楽しめましたよ。特に猿側が興味深い。ヘレナ・ボナム=カーター演じるアリはなかなか魅力的でしたし。さすがに恋愛感情までは無理ですけど。それにティム・ロス演じるセード将軍は強烈でした。彼は人間の恐ろしさを誰よりも知り尽くし、絶対服従させようとする恐るべきモンスターです。セードに征服されてしまったラストも頷けますね。 [DVD(字幕)] 6点(2006-01-17 15:03:44) |
23. ブロンクス/破滅の銃声
《ネタバレ》 マニーが銃で撃たれてしまう最後は別として、起伏の無いストーリーですね。いつ本題に入るのかなと思っていたら、それが本題だったという感じがします。でもそれがミソなのかもしれません。というのも始めのうちはマニーの方が多くの問題を抱えていると感じました。しかし徐々にドラック中毒のダニーの方が問題があると分ってきます。そして最後にマニーがドラック中毒者に撃たれてしまうシーンで完全にダニー側、つまりドラック中毒側の方がいかれている事が判明します。その最後のシーンと起伏の無いストーリーのコントラストがドラックの怖さを伝えているのです。しかしそれ以上の何かは感じませんでしたね。でも↓の【tetsu78】さんのレビューを拝見して、なるほどそういう見方もできるなと改めて思いました。それからティム・ロス、もともと彼の出演作という事で鑑賞したのですが、作品の内容は別として、彼の特性が生かされた役でしたね。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-12-29 14:26:13) |
24. フェイク
《ネタバレ》 レフティはうだつの上がらないマフィアの世界で家族を想いながら、ドニーは囮捜査官として正義を貫こうと、異なる世界で互いに必死に生きている。だがレフティもドニーもマフィアと警察、それぞれの歯車にしか過ぎず何も出来ませんでした。二人は強い絆で結ばれていたのに…。そこが悲し過ぎる哀愁漂う作品です。本作には極限状態にあるからこそ考えさせられる人間の性、友情、家族、仕事、社会と人間の表裏、そして〝信頼〟が描かれています。ですがやはり一番の見所はアル・パチーノとジョニー・デップの名演です。二人にはこういう悲しい役が良く似合います。特にパチーノ!ラストの家をあとにするシーンは圧巻の一言に尽きます。最期の時までドニーを信じきった、やる事なす事すべてがダメな情けないレフティが最高にかっこいいです。割りと地味な作品ですが隠れた傑作だと思います。 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-06 11:58:39)(良:2票) |
25. フル・モンティ
《ネタバレ》 意外と言っては失礼ですが傑作だと思います。コメディをしっかりかましながら、労働者階級の苦境や男女の立場逆転等の現代社会風刺に加え、普遍的な家族愛までも巧みに描いています。悲哀に満ちた登場人物達も魅力的です。ロバート・カーライルほど情けない人物を魅力的に演じられる俳優はいないと思います。さらに、一度限りのストリップは大成功で幕を閉じますが、おそらくその1ヶ月後には冒頭のダメな状態に戻っているんじゃないかと想像できるところも良いです。 そして本作が好きな一番の理由は全天候型だからです。つまり楽しい時は笑わせてくれるし、落ち込んだ時は彼らと一緒に落ち込めてちょっぴり元気になれる。好きな映画でも「今はちょと重いな」と思ったり、「そんな能天気なの観る気分じゃない」ということがあります。しかしこの作品はいつだって観てみたいのです。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-11-02 23:21:22) |