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しったか偽善者さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 75
性別 男性
自己紹介 かなりゆっくりですが、気まぐれにぼちぼちレビューしていきます。文章がヘタクソで背伸びして書いてますが大目に見てください。ストレス発散のため感情の捌け口として、ささやかな自己満足でレビューしておりますが、結果的に皆様を楽しませ、映画鑑賞のお役に立てれば幸いです。安っぽい正義感をふりかざしたような偽善的自己陶酔レビューが多いです。
「すべての作品を尊敬する謙虚な姿勢を失うことなく」、楽しみながら、かなり感情的なレビューをしております。クソ映画の弾劾は覚悟と労力を要し、めんどくさいので、あまりする気がありません(すべきなんでしょうけど)。基本的にお薦め作品の賞賛です。

大島渚「悦楽」、オリヴェイラ「神曲」、若松孝二「処女ゲバゲバ」など自分が新規登録要望した作品をレビューしてません。申し訳ありません。内容あるレビューをしたいと思ってたら腰が引けて時間がたってしまいました。とりあえず形だけでもこれからレビューしていきます。

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21.  カイロの紫のバラ
本作は映画を観ている我々に向かって、映画を観るとはどういことかを描いてみせたメタ的な映画です。監督の他作品同様、表現者としての視点が垣間見え、(脚本家とドラマ)が(神と人生)に対比され、絶対的で冷酷な運命の受け入れというモチーフが出てきます。「現実は汚いのよ」(いいセリフだ・・・)と言うその世界が映画の中ということにハッとさせられます。理想と現実のギャップに対峙して完全な精神の自由性を求める態度から出るシニカルな笑い、これはいわゆるロマンティックアイロニーという奴でしょうか?。この映画は作品自体が一つのロマンティックアイロニーみたいなものです。映画で現実を突きつけることの間抜けさを自覚しながら、観客に現実を突きつけ、かつ観客に現実逃避させる。やっぱり巧い。巧いと唸らされつつも小賢しさが鼻につきそうな映画の作りです。しかし、この映画は技巧に走った冷たさが感じられません。それは作品人気にも表れています。本作は必死にあがき夢見る全ての人間への優しいなぐさめであり、励ましであると思います。現実逃避をしない人間はいません。理想・夢想・空想は、現実に立ち向かうために必要でしょう。リンドバーグのような英雄的人物は夢想の力をバックに現実を変えたのではないでしょうか?。現実に立ち向かうドラマ(人生)だけがドラマ(人生)ではありません。たしかに怠惰な現実逃避は自己破滅を招き、他人に迷惑をかけることがあるでしょう。しかし、空想癖により失業した主人公セシリアは愚かであっても、カワイイ愛すべき人間です。現実見ろと親切心で忠告するのならともかく、夢見る者を心ない目で他人が嘲笑することこそ愚かじゃないでしょうか?。P.S.本作は「映画好きなら誰でも」みたいな周りがつけたキャッチフレーズみたいなものが胡散臭いながらも独特の魅力を醸し出しています。映画の魅力にはそういうのも含めていいんじゃないでしょうか?。たしかに映画への愛に溢れた映画であるのは間違いないと思います。
[地上波(字幕)] 8点(2008-06-01 00:03:59)(良:1票)
22.  ボビー・フィッシャーを探して
将棋の羽生さん(この人はチェスも日本トップレベルと言っていい腕前らしい。)が入管法違反の疑いで日本で拘束されたボビー・フィッシャーさん(たしか今では無事アイスランド国籍を取得したと思いますが・・・違ってたら誰か指摘してください。すいません。)を救おうと小泉にあてた嘆願メール、「フィッシャーさんはチェス界のモーツァルトのような存在で、残した棋譜は100年後も色あせることなく存在する。可能ならば日本国籍を差し上げてチェスに打ち込める環境を提供することができないでしょうか?」・・・ということらしいです(以前ネットで見かけてコピーしていた文章を引用。新聞記事か何か。)。いくら才能があってもプロで通用するには人生を賭けたようなトレーニング(それも質の高い)に費やす時間や労力の膨大な絶対量が必要とされ、逆にいくらトレーニングしても才能がなければ通用しないのに自分の才能の限界も判らないまま少年時代に飛び込んでいかないといけないシビアな世界を本作は描いています。考えてみると、どんな世界も同様なところがあり、この映画は人間社会の一面をピュアな形で浮き彫りにしているのではないでしょうか?。芽が出ず無名のまま年を取ってチェス道場のようなところで世間から取り残されたようにチェスを指す人たちが登場しますが、あの姿を見れば映画後半の「もっと肩の力を抜いて」みたいな人間性回復のメッセージはちょっと説得力に欠けるような気さえします。温かい映画というよりも、かなり厳しく切なく痛い映画だと思ってしまいます。主人公と父親の姿は「お受験」やスポーツの特訓をしている当事者にとっては他人事とは思えないのでは?・・・。私は将棋の魅力がほんのちょっとは判るような気がする(気がするだけ)のですが、この映画はチェスの棋譜が判らなくてもチェスの魅力が判るような(気がする)雰囲気を映像上に醸し出しているようで好印象です。そうした魅力を多少なりとも表現しないとなぜあんなに人がチェスに没頭するのかが伝わらないですからね。本作は映像が全体的になんだか朝の陽光に包まれたように(照明あてすぎ?)明るくキレイで爽やかでいい感じです。
[DVD(字幕)] 8点(2006-07-10 22:56:39)(良:1票)
23.  嫌われ松子の一生
監督が中谷美紀を下手クソと罵倒してたそうですが、この監督そんなに偉かったの?と思ったのは私だけでしょうか?。「下妻物語」で少し売れたけど、世間的には彼女の方が知名度あるだろうし、CM作ってるようなギョーカイ人が自分はゲージツもできますと映画作ってるようでヤな感じです。しかし・・・これは面白いです。不覚にもここ最近では一番涙出ました。私はある程度以上涙こぼれたら、人を泣かせることだけでも凄いと思うので基本的に低い評価しません。こんなもんで泣くのかと軽蔑されても全然かまいません。たしかに一瞬のインパクトが全てのCMの連続のようだし、語り手の重複やストーリーの不満など違和感を感じることも多かったですけど、思いっきり自分の土俵で相撲をノビノビと取っているようで好印象です。ミュージカルシーンはミュージッククリップみたいでケバケバしく稚拙で悪趣味かもしれないけど、それが魅力的じゃないですか。「ムーラン・ルージュ」的悪趣味さですね。とくに刑務所でのシーンが昂揚感あって好きです。丁寧な作りこみと観客に刺激を与えることに対する熱意をこそ評価すべきと思います。おそらく本作はオヅやミゾグチやヤマナカやナルセなどといった偉大な先人の映画の延長線上にはないかもしれません。いや、映画じゃないって言う人も多いんでしょう。でも、私にとっちゃそんなのどうでもいいことです(そんなこと言えるほど「映画」とは?なんて判っちゃいないので)。最後に内容について少し。人殺してる主人公を簡単には肯定できませんが、結果的に彼女の存在により救われた人(龍やめぐみ)がいるわけで、それを外から眺めて知ってる観客の我々から見れば彼女の人生に価値がないなんて全然思えないし、波乱万丈の人生を過ごせたことだけでも十分彼女は幸せじゃないでしょうか?。若くして職を失ったとか、人殺して刑務所に入ったとかで「人生終わった」と言いますが、実際は本人全然そんなこと考えちゃいません。勝ち組や負け組みなどという言葉が流行る現在において彼女の強さは羨ましいです。私は松子の一生が嫌いどころか愛おしいです。キャプラの某作品より本作の方が素晴らしき哉人生って私は思えますね。褒めすぎかな?。
[映画館(字幕)] 9点(2006-07-10 22:51:08)(良:2票)
24.  砂と霧の家
911以後やたらアメリカの病理を描く映画が多いです。本作もその範疇に入るでしょう。自分がちょっと前に映画館で観たヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」、ワインの世界をを描いた「モンドヴィーノ」なんかでもそうです。なにも「華氏911」とかいうあからさまなのじゃなくてもそんなのが多いです。創作をする人々は時代の空気を表現したいものだそうです。それは単に英雄気取りでアメリカを悪者にしているわけでもないし、サヨってわけでもないでしょう。アメリカ人監督なら相当な危機感をもって自己反省しているのだし、他国の監督ならアメリカに将来の自国の姿を見ているのです。そりゃ自己満足はあるでしょうけどね。私のレビューよりはないでしょうが・・・。国家のあり方や時代の空気なんて我々個人に関係ねえよ、いや、あんまり関係あって欲しくねえ・・・と思っている私ですが、そういうものが実際に個人をどうしようもなく不幸に陥れることもあるし、人々の精神に影響を与えているのは間違いないでしょう。こういう政治的な観方は本来嫌いなんですけど、近年の一連の同じ系譜の映画の連続がそんな観方を強要しているかのようですし、そういう観方をすれば本作も結構すんなり納得いくところが多いです。ヘタレ警察官はあまりに見事なアメリカぶり?でちょっとやりすぎかもしれませんが・・・。でも、本作はそういうことがメインの作品では全然ないと思いますけどね。人それぞれの不幸の度合いは比較不能で、誰が特に悪いわけでもなかったり、みんなが悪かったりで解決不能な問題が世の中にはあります。比較不能な価値の対立があります。本作はそんな表現し難い泥沼の世界のあり様を傍から見ればどうでもいい醜い小さな争いに凝縮し、悲劇的に美しく描いています。私ごときには言葉で本作の感動をうまく表現できないのが残念です。自分の文章力と脳ミソではこの作品の不思議な感動と憂鬱を表現できないのです。そこで上っ面をなぞったレビューもありかな・・・とアメリカ嫌い的な文章になっちゃいました。ごめんなさい。こういう観るからに出来の良さげなのは好きです。映像についてはカメラワークとか知りませんけどキレイでしょ?。玄人受けしそうで高尚だからって私は嫌うことはありません。鼻についてもそれはそれで讃えてやればいいじゃないですか。監督の次作期待してます。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-17 23:20:04)(良:1票)
25.  ミリオンダラー・ベイビー 《ネタバレ》 
パンフの監督インタビュー「この映画には明らかに感情に訴える部分がある。(中略)できれば観客にはその感動に巻き込まれて欲しい。それが全てだと思う。」。好感のもてる明快な信念というか・・。実際暗い暗いこの映画もドラマとして面白いし「感動」しますよね(人それぞれでしょうけど)。ハリウッド的映画作りからはみ出した深みがあるにしろ、観客の「感情に訴え」、観客を「感動」させるという目的達成に向かって研ぎ澄まされた映画とでもいいましょうか。でも、不満があります。ヒラリー・スワンク頑張ってるにしても、あれはどう見てもリアルなプロの試合じゃないですよね。素人の私の目にも明らか。せめて素人の目は誤魔化してもらいたい。本作は他のボクシング映画の何倍もそういうリアルさが求められると思うんです。大目に見てあげるなんて観方しなきゃいけないレベルは克服してほしいです。あえて偽善的な批判をすれば、ラストの尊厳死という問題に関連するような状況(一応文句言われないような言葉使っときます)は深刻すぎてあのボクシングシーンの演出とギャップがあると思います。スポ根成功ものと言える前半の展開はとても面白いですが、毎試合数秒でKOしたり、ひどすぎる反則があったりします。リアルに描かれたあり得ない出来事と、リアルじゃないからあり得ないのは違います。前半だけ観るなら突っ込むのは野暮ですが、そういうあり得ないプレイや反則もラストに直結してるわけですから見過ごせるものじゃない。ボクシングというものが彼女の尊厳に関わってるんですから。明暗の対比とはいえいかがなもんでしょう?。あれじゃ彼女かわいそうです。納得いかなくて余計な不満で腹立ちます。以上の不満はともかく、私は残酷かつ美しい「ラブストーリー」に監督の思惑どおり感動したし、尊厳を守って必死に生きる人々の姿が眩しくて涙出ました。
[映画館(字幕)] 7点(2005-12-01 01:27:40)
26.  山椒大夫
すでに技術に詳しい方々が映像の美しさ、構図の見事さにつきたくさん言及されてますが、私にはそういことができる能力がないので、自分なりに技術以外のことでこの映画を賞賛したいと思います。私は本作は冷静に観れません。メチャメチャ青臭いヒューマニズムに感動して泣きます。慈悲の心による自己犠牲を説き、人は平等で「幸せに分け隔てはない」という「父の教え」は普通なら口にするのも恥ずかしいようなクサい言葉ですが、でも、本作を観た後にこの教えをバカにするのは難しいと思いますよ。本作を観ると、日本の歴史は人権無視の世界で展開してきたんだよな・・・(まあ当然ですが)というラディカルな考えが湧いてきて、なんか能天気な時代劇全てに欺瞞を感じさえもします。たしかに現代の人権思想をあの時代に引き移しているような違和感は多少あります(見かけは御仏の教えからくる慈悲の心がヒューマニズムの根拠ですが)。でも、それでいいじゃありませんか。人権の親玉みたいな顔してるアメリカの映画でもこんなのなかなかないですよ。キャプラ映画の演説なんかより全然心を打つ迫力がありますもん。【りく&あん】さんがおっしゃるとおり↓わかりやすさ、面白さも負けてない、いや勝ってるし。それでいてこんな美しい映像の格調高い映画は奴らには作れんですよ。本作は外国(の評論家の間)で評価が高いのか外国人の評論家が褒めてる文章を何度も目にしたのですが(アメリカでは一般には全然知られてないらしいけど、日本でもそうか・・・)西洋人からすれば自分らの土俵で負けてる気がするんじゃないですか?。ヌーベルバーグは溝口監督の映像美や技術に驚いたのかどうか知りませんが、この映画が外国の人々を引きつけるとしたらその理由は何よりも強烈に各人のヒューマニズムを刺激し、普遍的に人の心を打つからでしょう。
[ビデオ(字幕)] 10点(2005-10-30 22:48:46)
27.  スーパーサイズ・ミー
本作は肥満をマックのせいだとする原告が訴えた裁判をきっかけとし、マック食品の危険性を確かめてみたいという動機(まあ、なんだか軽いノリですが・・・)により作ったと冒頭にあります。でも、あらためて言うことではないかもしれませんが、監督の試みは「実験」とか「証明」というものとは程遠いものでしょう。他の食品でも偏って食べ続ければ同様に健康を害する可能性はあること、サンプルが監督一人で少しの対照もなく監督個人特有の体質や生活状況による結果の可能性があること・・・などすぐ思いつくような疑問点があり、私は無知だし理系人間ではありませんが、簡単な理屈からして監督の試みが厳密さを欠くのは明らかだと思います。あの苦行は監督のウケ狙いのパフォーマンスであると言えなくもありません。しかし、だからといって私はこの映画がつまらないとは思いません。本作には現代の食料事情全般(アメリカ特有のものではないのは自明でしょう。)や、企業論理が食事や教育現場までを覆い尽くしているかのような状況などを疑問に思う監督の価値判断がまず先にあります。基本的に同じような価値判断を持ち(なんとなくですが)、権力に抗うことに自己陶酔するような体質の私は、彼の根拠の弱い告発や無駄な徒労的努力を応援するような気持ちでついつい観てしまいます。私みたいな観客を喜ばすエンターテインメントとしては少なくとも十分よく出来た作品でしょう。他人から見れば痛いでしょうけどけどこういうの好きなんですよね・・・。「敵を利する」映画なんでしょうけどね。ただ、やっぱりムーアの後では作品の姿勢や大枠のところでオリジナリティがあまり感じられないし、監督自らの人体実験や汚いゲロにインパクトをたいして感じなかったのでちょっと点を引きます。ムーアのパロディをやってるんでしょうけど根本的に同類に見える気がします。自分の恋人を美化して出演させてるのがちょっと痛いけど微笑ましいですね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-08-20 00:51:19)(良:1票)
28.  オペレッタ狸御殿
昔、日本には「狸御殿映画」というジャンルがあったそうで(私はもちろん観たことないですが)、この映画はそうした映画に対するオマージュとして作られてるようです。しかし、さすが監督の頭の中のイメージに世界がねじ伏せられてしまう鈴木清順作品です。この監督が映像に紡ぎ出すイメージがつまらないわけなく、独特の面白い映像を見る事ができます。ただ、タイトルにオペレッタを冠しミュージカル映画であるからには音楽やダンスによる快感や満足を私は求めてしまうもので、これは所詮好みの問題でしかありませんが、私は魅力を感じたミュージカルシーンが少なくてちょっと物足りませんでした。ミュージカル映画というジャンルに押し込めておけるような映画ではないとは思いますが・・・。主役二人のデュエットは素朴かつキレイなメロディーで結構良いと思ったんですが・・・歌がもっと巧かったら(魅力的だったら)なぁ・・・と思います。由紀さおりのラップ?なんてショボすぎるのが度を越してます(洒落で意図的だとしても・・・)。昔から薬師丸ひろ子の澄んだカワイイ声は好きなんで歌が聴けて結構嬉しかったですが、彼女が歌った曲があんまり良いとは思えなかったのが残念です。センスのない私ごときが世界の清順監督に文句つけるのも恐れ多いのですが、万人受けする傑作ナンバーを連発していたら私は大傑作として10点つけたでしょう。ともかく今の日本でオリジナルのミュージカル映画(しかも魅力的な映像の)を作ってくれたことには感謝したいです。本作は現実逃避させてくれる見事な「愛すべきナンセンス」ではありますね。しかし、さすがにチャン・ツィイーのカラダの動きのキレは他と一味違いますね。結構ダンス期待してたのでもっと彼女の動きを生かしたシーンが見たかったな・・・。
[映画館(字幕)] 7点(2005-06-11 21:44:59)
29.  ワン・フロム・ザ・ハート
ダメ男の身勝手な妄想みたいな甘ったれたこの映画を見て堕落こそすれ人間性の向上は望めないでしょう。展開的に唐突で不自然なところもあったりするんですが、あんまり突っ込み入れてもしょうがないと思える都合のよいメロドラマみたいな話です。好き嫌い別れると思いますが、わたしゃ雰囲気からしてお気に入りの作品です。この映画がコケたのが納得いかないくらいです。こんなのダサいという映画通の方がたくさんいらっしゃるのでしょうけど、映画的高揚感とでもいうようなものが湧き上がってくるシーンがたくさんあると思うんですよ。ナタキンの綱渡りの場面とか路上での群集のダンスシーンとか・・・。歌わないミュージカルって感じですかね。私は映画には現実逃避を求める性分なのでこういうの好きです。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-05-22 22:15:39)
30.  父、帰る
いや、ほんとこれいいんじゃないでしょうか・・・。父をソ連に見たてる政治的解釈やキリストに見たてる宗教的解釈をしたり、「イワン」=イワン・カラマーゾフと論じたり、水のイメージなどからタルコフスキーの影響を論じたり・・と、学者や評論家や映画通はすでに様々な視点からこの映画を語り尽くしていることでしょう。本作はそういうことが可能な豊かな表現の作品である反面、少々「あざとい」とか否定的な意味で「高尚」だとか正直私は思います。それはそれで魅力であると知ったかで勘違い野郎の私なんかは感じるのですが・・。しかし、本作はそうした隠喩にまみれた高尚な作品であっても、ストーリーは意外とシンプル(寓話化された単純さ)で結構強烈に心を揺り動かされます。シニカルでぺダンチックな評論家的視点などやっぱりどうでもいいと思える非常に真摯な作品です。自己満足かもしれませんが鑑賞後の余韻がたまりませんでした。どういう余韻かはうまく説明できないのですがボ~ッとなってしまいました(どういう余韻が残るか?というのが私の映画評価で大きな比重を占める基準です)。静かでゆったりしていますが決して退屈ではありません。ハリウッドのけたたましさに慣れきっていてもそれほど不満を感じないでしょう。あえて謎だらけのまま放り出すやり方が成功しているかどうかというのがやはり大問題だと思いますが私個人はこの映画に関してはあれで良いと思います。ソ連やキリストや父親などというのは得体が知れない謎だらけの存在だというのを表現しているのではないでしょうか?。すっきりしないのがこの作品の魅力的な味だと思います。映画館で観てからかなり時間経っちゃったけど、気まぐれに今になって思い出しながらレビューしました。でも、あのなんともいえない薄暗い美しくわびしい映像は大きなスクリーンで観て良かったなぁ・・と自己満足してます。
9点(2005-03-12 22:22:04)(良:3票)
31.  誰も知らない(2004)
実在の事件の「真実」が我々にとって意味するものとはなんでしょうか?。裁判の判決理由の事実認定さえも一義的には「真実」を明らかにしません。また、事件に利害関係のない私など大多数の人間は恣意的に、いいかげんに、無責任に事件を解釈評価します。つまり、乱暴を承知で言えば、こういう新聞に載った事件なんてのは「真実」など人の数だけあり、なおかつ所詮他人事なのです。誰もがあの兄弟たちのアパートの他の住人と同じです。この映画のヒューマニズムも傍観者は加害者というような説教的な意味では所詮無責任だと思うのです。極端な例えですが、我々があの子供たちを見る目とアフリカの餓死する子供たちを見る目はどう違うのでしょう?。本作には当事者を傷つけるという問題もあります。人物を美化したこの映画でさえも実在の当事者に対する私刑のような面を持つことは否定できないでしょう。罪を犯せば法や社会の公正なルールに則って罰せられるべきなのは当然ですが、あの母親も我々他人の無責任な正義感や義憤によって被害を受ける理由はないでしょう。この映画だって無責任な傍観者なのです。しかし、にもかかわらずこの映画のヒューマニズムにはワイドショー的義憤とは全く違う特別な何か、心に訴えかけるものを感じます。私は映画に引き込まれ、痛みを感じ、感動する他ありませんでした。本作は事件の裏に優しく居心地の良い美しい世界を見出しました。限りなく無条件に互いが信頼し愛し合う共同体はまるで一個の人格のように外部がズカズカ入り込むことで傷つき、外部を自ら拒絶します。あまりに危うく脆く痛々しいユートピア。見たことのない美しく同時に醜い不自然に閉塞した世界。無慈悲な仕打ちによって突き落とされたひどい生活の中にしかこんな世界は現れないという皮肉な逆説でしょうか?。事件について私はほとんど知りませんし、私のこの文章も無知のまま匿名で書く全く無責任なものです。私は他人事として、映画として、あの不思議な世界に感動するのみです。
9点(2004-12-15 00:02:40)(良:3票)
32.  ゆきゆきて、神軍
最近のドキュメンタリーブームとやらに便乗して本作品をレビュー。私は本作を学生時代に、奥崎のことを書いた小中陽太郎(今風にいえばサヨですかね、この人)のルポを読んで知りました。映画を観たときは、凄えなぁ・・と驚きました。最近、「華氏911」を好きだ、と恥ずかしい自己満足レビューをしましたが、私がムーアを嫌いじゃないのは彼が著書でこの映画を観るべきドキュメンタリー作品として挙げていることも理由の一つです。この映画も熱いといえば熱い。かたくなに証言拒否していた人も、奥崎から病身に対するひどい暴力を受け、ついには口を開きます(結局多くは語らない)。迫力あるやり取りがナマで現実にカメラの前で繰り広げられます。よくできた話に奥崎が誘導しているかのようです。彼の資質にも助けられて、この映画は取材力というか事実に迫ろうとする熱いパワーが凄い。それでいて本作には、所詮真実藪の中ということを常に忘れさせないぶっちゃけた落ち着きというか冷静さが感じられるのです。人にはそれぞれ言い分があり、みんな自分が可愛くてしょうがないということが痛いほど判ります。オンリーワン(?)の傑作ドキュメンタリーだと思います。奥崎みたいな人間はとても肯定できません。犯罪者であり、傲慢で独善的で弱く醜く卑怯です(極限状況からの奇跡的生還者である奥崎を私なんぞがどうこう言う資格はないんですが・・犯罪は良くない。)。彼の行動は、いや、この映画自体、これってはたして意味あんのかな?とも思えてきます。でも、私は別に暴力ふるったり、犯罪を行ってたりはしませんが、自分にも彼と似たりよったりのところ多いな・・と感じられて痛いです。本作は立派な反戦映画でもあります。
9点(2004-10-28 00:49:06)
33.  ドッグヴィル 《ネタバレ》 
この映画の鑑賞は人間や世界の「観察」といった趣があります。そう考えると箱庭的なけったいなセットも違和感ありません。壁がないのは、これはまともな家など必要ない動物実験(人間=犬)みたいなもの、ということでしょうか?。エゴや打算や悪意や偽善にまみれた人間の生々しい姿が現実よりも浮き彫りにされるのが「観察」できます。小説のネタのために人間観察の「実例」として主人公の女性を扱うあのヘタレ男は監督自身の戯画化ではないでしょうか?。監督はたしかに悪趣味で女優イジメのサディストかもしれませんが、私はこの人メチャクチャ真摯という印象が強いですね。写実的で外見リアルなくせに世界が狭い映画が多い中、なんと豊かな象徴的フィクション表現、なんという世界の広がりでしょう。観察」の結果の解釈は観察者によって大きく異なるでしょう。ラストの言葉のように、「ここには答えはない」のです。まあ、以上のようなことは後から考えたことで、とにかく映画が感覚的に面白かったんです。好みなんです。動くカメラの画面酔いも、暗く鬱陶しい展開を見る苦痛も、高尚ぶったセリフや雰囲気も、私(ナルシー)にとっては全てが快感です。エグい。痛い。ど~せわかったつもりの自己陶酔でしょうけど。ラストの「傲慢」な復讐に溜飲が下がるように持っていくやり方はやはり悪趣味とは思いますが、悪魔的快感に凄げぇ・・と震えました。アメリカという国や死刑制度抜きには語れない映画(意図的なのかやっぱり「ダンサー・イン・ザ・ダーク」との共通点多いなぁ・・。)かもしれませんが、あまり語る能力がないので無理するのはやめときます。
[映画館(字幕)] 9点(2004-09-10 23:30:45)
34.  華氏911
このえげつない映画がプロパガンダなのも、独善的なのも、露骨な個人攻撃なのも、一目瞭然だ。しかし、それがいったい何だというのだろう?。ドキュメンタリー映画だからといって冷静に多角的に物事の深層部分を抉り出さないと価値が低いと決めつける必要はないと思う。無批判にメッセージを受容するメディア・リテラシー無縁の観客(それは私かもしれないけど・・)が出るにしてもそれは監督の罪じゃない。これは金払って好きで観に行く商業映画であり強制的洗脳じゃないんだから。たしかに本作の思い込み激しい憎しみにも似た怒りの発露は胡散臭く危うい。ブッシュ個人に対する徹底的非難は品性下劣にも見える。その怒りのエネルギーの出所は愛国心だ。アメリカを正義の国にしたいという願望と、そのために自分が何かしなければという使命感が作品に満ちている。愛国心(悪党の最後の逃げ場所)という奴は、特にアメリカ人のは厄介だ。しかし、結局私にとって重要なのは、私が(実際世界中のたくさんの人も)映画を観る前から、戦争は悪い、イラク戦争は間違ってる、ブッシュ嫌い、と単純に思っているということだ。こういうプロパガンダなら私はOKだ。ブッシュ万歳映画だったら私は細かいことまで持ち出してクソみたいにけなすだろう。それだけのことだ。監督はとにかく真剣だ。溢れる熱意が伝わってくる。その表面的でない熱意こそ、この映画のパワーであり、魅力だ。底が浅いくせにメタな視点からモノを見たがる知ったかの私だが、胸が熱くなった。愛国者法の人権抑圧はいつか他人事ではなくなる気がするが、そうなったときムーアのような熱い人間を公平でないなどと非難するのが賢明か想像してほしい。バランスに欠ける監督かもしれないが、彼は壊れたバランスを過激に取り戻しているのだ。華氏911が涼しいくらいの高温で本(自由な言論)どころか国土や生命が簡単に焼き払われる現実はSFを超えている。私が感動したのは権力にたてつくことに陶酔する無意味な偽善の自己満足かもしれないし、本作は深部から眼をそらさせ「敵を利する」映画かもしれない。でも、私はこの映画は好きだ。
9点(2004-09-10 22:51:54)(良:1票)
35.  叫びとささやき
以前テレビで楳図かずおの部屋が紹介されてましたがどこもかしこも真っ赤でした。あんな部屋にいたら少しは精神的に影響があるかと思います(楳図作品から想像するに・・)。私は本作を観てる間、妙に不安で落ち着きませんでしたが、赤い部屋の影響かも?と思ってしまいました。本作は何事も起こりそうにないほど静かなのに、何が起こってもおかしくないと感じられる恐怖に近い緊張感が画面から伝わってきます。ベルイマンを観た後ではそこらへんの監督に対してセンスがあるなどと褒めるのは恥ずかしくなります。宗教や人生の意味などに関する思想については、私には語る能力がありませんので、以下、自分に引きつけた私的な感想を述べたいと思います。私は特に登場人物の徹底的な孤独に心揺さぶられました。妹に触れられることすら拒否するコミュニケーション不全のくせに人格同一化のような親密な愛を求め、偽善を徹底的に憎む長女。偽善を肯定し、愛に対する諦念が心にひそむ三女。凄まじいくらいの孤独を目にして心が痛いです。監督は愛や人間同士のつながりを徹底的に疑いながら、それでも必死に(次女が姉妹にすがりつくように)奇跡のようなものを追求しているかのようです。人間は普段こんな突き詰めたところで生きちゃいないでしょう。正常な人間は描かれてないのかもしれません。でも私は、私自身が人間失格なのかもしれないけど、この映画に真実を突きつけられてるような気がするのです。
10点(2004-08-03 22:38:38)(良:1票)
36.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
志村喬が三船の手がかりを掴むきっかけとなった父親の葬式での写真のとてもつもなくわかり易い顔。あれはギャグなんでしょうか?・・。/本作はとにかく悪への憤りがすごく伝わってきます。監督は公務員に恨みでもあるのか「生きる」でもしつこくなされる小役人根性批判も気合入ってます。まさに「これでいいのかー!」です。検察や警察はほとんど絶対善みたいですが、こんな映画があって、何十年も経って、もう実際何人あんなふうに自殺(他殺?)してるかわからないくらいなのに何も変わってない(何も!。そうでしょ?。ニュースになってる事件を見ても。)ので捜査機関すら疑いたくなるのですが・・警察の方すいません。どうか悪い奴を眠らせないようがんばってください。恥ずかしげもなく正義ヅラした自己陶酔レビューしてますが、私はこういった超単純な正義感好きです。主人公のように自ら悪となって身を捨てる覚悟の復讐じゃないと人間悪には立ち向かわないかもしれませんが、せめて自分の身を犠牲にしてまで悪をかばう人に翻意を促すのが監督の意図ではないでしょうか?。最近のいろんな汚職や企業事件なんかは内部告発から明るみに出るのがほとんどだそうで、他人事じゃない人結構いるんじゃないですか?。自分がやってることはおかしい、ウチの組織はおかしいって思ってる人。疑問をもつ方が青い未熟者なんでしょうか?。この映画をもっとたくさんの人が観れば世の中変えるパワーがあるかも?っていうのは夢想でしょうか?。そんなふうに思えば、救いがない後味悪い内容でも夢があります。
9点(2004-07-21 22:04:54)(良:1票)
37.  サテリコン
冒頭の舞台劇っぽい超説明的独白が普通の映画でないことを宣言してます。普通のドラマではありません。退廃の末は男色に行き着くみたいな描き方は、キリスト以前のローマが舞台ながらキリスト教倫理が意識にあり、つまり、あからさまに現代社会の風刺です。本作はもともと風刺画家だったフェリーニによる大掛かりで物凄い風刺画と言えるでしょう。同じ現代社会風刺でも「甘い生活」では少女の微笑によって汚れなき彼岸のものが表現されてましたが、この作品はそういうものがちょっと見当たりません。主人公はとにかく生き残ろうとする。社会は退廃的なんだけど、もはや癒しを求めて「空しい」なんて言ってちゃ生存すらできない怖いものだということなのでしょうか?。本作は風刺であると同時に徹底的にビジュアルを楽しむためにあるような作品でもあります。これは退廃、欲望、快楽、エロ、グロ、の視覚化、映像化です。もともとそういうのを喜ぶ趣味はないですが、この映画を観てる間はドーパミンとか脳内に分泌されてるような気がしました。グロいのもああなると美術です。芸術です。気持ち悪さが何かの作用により不思議と美しいといった感じ。良いシーンは挙げればキリがないけど、例えば天を掴もうとするように差し出された手のショットなんかカッコイイ。私は創作に縁ないですが、クリエイターの方々には相当刺激のある作品ではないか?と想像します。
9点(2004-07-03 23:00:32)
38.  スミス都へ行く 《ネタバレ》 
芸術作品は大抵正義の欺瞞を暴き、善悪を相対化し、倫理の底を掘り下げていきます。だが、そんなのだけじゃない。あえて正気で善悪の姿をはっきり提示するものもあります。映画で言うならキャプラ作品やチャップリンの幾つかの作品なんかそうでしょう。私はこちらの方が大変だと思います。自分があえて相対化のまな板の上に乗るんですから、説得力はもちろん勇気が必要です(凡人の説得力だと目もあてられない駄作となるでしょう)。この作品のはっきりした善悪の描き方の潔さ、その説得力には拍手したいと思います。文句なしに引き込まれてしまう面白さは相当なものだと個人的に思うのですが・・人それぞれでしょうけど。良心の呵責にさいなまれて耐えきれなかった敵役先輩議員のラストの決断は現実ではあり得ないですよね。主人公がどんなに感動的な努力を払おうともあれがなければ敗北なわけで、これはやっぱりがんばれば報われる、人間の良心や理想を信頼しよう、という甘っちょろい話だとは思います。私自信甘っちょろいし、偽善者なのでこういうのには弱いんです。スミス君の議会での行為は牛歩戦術的な、制度の間隙を突いたものだと思いますが、あれが肯定できるかどうかは難しい問題だと思います。ただ一点文句なしに許せないのは、全体の雰囲気からすれば突っ込んでもしょうがないかもれませんが、スミス君が中傷記事書いた記者連中を殴ってまわる行為です。言語道断でしょう。あれだけで議員失格です。現実でもクビでしょう。他人の名誉を不当に侵害する表現行為が許されないのは当然ですが、彼は公人の議員だし、記事の内容も子供の悪口っぽいし、自力救済の暴力行為で報復するのを放置したら表現の自由なんて無意味になります。アメリカはそういうのには敏感だと思うんだけど・・。監督の悪いアメリカ的正義感や独善性が透けて見えるような気が・・。マイナス10点してやりたいくらいですが、映画がとても面白いので1点しか引きません。あ~、また正義ヅラした目もあてらられない偽善的コメント書いちゃった。
9点(2004-04-13 22:02:34)
39.  サクリファイス
私のタルコフスキー初体験はこの彼の最後の作品でして、その後「ノスタルジア」を鑑賞し、遡るように観ていきました。当時、これまでなんでこの監督の作品を観なかったんだと悔やんだものです。マニアの方はこの作品に10点つけるのはわかってねえな、とか思うでしょうし、嫌いな人は高尚ぶりやがってと思うのでしょうが、初体験の衝撃が忘れられないんですよ。すげぇ、こういうの観たかったよぉ~って感じ。「自分にはわかる」みたいな身の程知らずな自惚れた自己満足に浸っているのかもしれません(すべての芸術への感動にはこの自己満足が大なり小なりつきまとうと思いますけどね。)。しかし、そんな簡単に私ごときに理解できるわけありません。すごく感じるのはこの作品は(他のもそうだけど)監督のかな~り個人的な体験や思いと切り離せないということです。一個人にはおこがましい世界救済の誇大妄想なんてガキの頃はよく頭に浮かぶと思うんですが(そんなことないですか?)、この話はガキの頃見た夢の話みたいな個人的妄想に近いのでは?と思います。でも、私なんかも冷戦末期の少年時代にはよく頭に浮かんだ核戦争勃発という妄想は、冷戦を生々しく切実に生きてきた監督からすれば実体験に近いのかもしれません。差し迫った自らの死を見つめているかのようですし、鬼気迫るものが感じられます。語ると陳腐になるし、私みたいなバカはもうあまり語る言葉を持ちません。この映画の鑑賞は嬉しい未知の体験でした。よく眠くなるって言われるけど、そうかなぁ?。「理解するのではなく感じる」というのは思考停止の欺瞞だと思ってんですが、タルコフスキー映画はそういう鑑賞態度でつい観てしまいます(自分にはなかなかわかんないから。悪あがきはしますが。)。圧倒的な詩的映像美は私が語ると嘘っぽいし、私が語るまでもないですが、好き嫌いが分かれるようなレベルを超えちゃってる(分かれるでしょうけど)と思いますよ。ほんとに。
10点(2004-03-07 21:14:17)
40.  素晴らしき放浪者
「黄金の馬車」や「ゲームの規則」などのように、うわぁ、おもしれ~と拍手してしまうような作品ではないと思います(そりゃ人それぞれでしょうが)。正直ドラマの盛り上がりには欠けると思うし、感動的な話でもないですし・・。喜劇ですが娯楽性がこの作品の真髄だとは思いません。私個人は笑えません(ど~せ笑いのセンスがないですよ。)。笑うどころか不快でした。既成の常識的価値観を揺るがす型破りに自由な人間の生き様を見せつけられるんですが、浮浪者を羨ましいとは思いませんから(強がりかも・・)、家の中を散らかすブーデュの振る舞いにコノヤロ~とひたすら腹が立ちました。自由すぎます。本屋の親父もブルジョワとはいえ、書生の名を「青春」と呼んで本をプレゼントしたり、不倫してたり、望遠鏡から一目でブーデュの「素晴らしさ」を見抜いたりと、なかなか洒落たおっさんなのですが、ブーデュとはサリエリとモーツァルトの違いがあります。この不快さは現実のしがらみにがんじがらめになってる私のルサンチマンから来るのでしょう。ブーデュみたいな奴実際にはなかなかお目にかかれないでしょう。存在しないかもしれない。でも、とても生々しく心を揺さぶられました。リアルです。本作は楽しむ作品というよりも心に突き刺さる芸術作品と呼ぶにふさわしい映画だと思います。河のシーンは言うに及ばず、さりげなくも艶やかな映像は素人目にも芸術的です。それにしてもラスト。それまで不快ですらあったのに結局幸福感を味わえました。自由人への憧れを描いても、現実の小市民が愚かとは言ってません。
10点(2004-03-03 22:24:27)(良:1票)
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