81. 空気人形
《ネタバレ》 人は誰も心に空白を持っている。ペ・ドゥナ演じる空気人形はその象徴である。しかし、空気人形はまさに人間の心の空白を埋めるために作られた心なき代用品だという事実が、皮肉な逆説性を帯びてくる。 ■空気人形は心を持つべき存在ではなかった。心は美しさを感じられるが、同時にはるかに多くの辛さ、悲しさも感じさせてくる。彼女に対して人々が求めるものは結局「自らの空白を埋めるもの」であったのであり、心持つ彼女がそれに答えるのは苦痛でしかなかった。そして逆に心持つものを心を埋める代用品にしようと腹を切っても結局そのまま死んでしまうだけであった。彼女の最後の息は他の人の心の空白を埋めていった。最後まで彼女自身は「人の心の空白を埋めるもの」でしかいられなかった。 ■ペ・ドゥナの演技は本当に素晴らしかった。あの「空っぽの中にわずかに心が宿ったような眼」は素晴らしい。いやらしさ・エロさを出さない裸というのも演技力のなせる技なのだろうか。圧巻 [DVD(字幕)] 9点(2010-08-05 01:06:58)(良:2票) |
82. 告白(2010)
《ネタバレ》 久しぶりに2時間釘付けになった作品。ここで判断するのは早いが、おそらく今年の映画ベストではなかろうか。 ■本作は徹底して「人間の負の側面」を描き出す。それも、悔いや良心の呵責を感じながらでもなく、またクラスの生徒たちのようにエンターテイメントと変換してしまうわけでもなく、まさに「何事でもない」かのように悪がなされていく。これは、殺人を自己顕示のための道具として利用した少年Aにしても、少年Aに勝つために少女をプールに落とした少年Bにしても、そして報復する松たか子にしても。「善悪」という基準が解体された先には、「強弱」、要するに頭のよいもの、相手を出し抜いたものを肯定するしかなくなる。 ■もう一つ、本作は告白の真偽が最後まで伏せられる。最後に少年Aの告白(回想シーン)が偽であることが明かされたように、本作中の一人称の語りは確実なものとは言えない。例えばラスト、爆弾について「回線を切った」との松たか子の発言と、大学での爆発は矛盾している。ひょっとすると、本当に母親が海外旅行から帰ってきて、息子を覚えていたかどうかさえ真偽は不明である。 ■ここでカギになるのは、告白者とは別のナレーター、美月の存在である。告白シーンにときどき告白者と関係ない内容が滑り込んでいた(例えば少年Bの母親の告白部分で、学校の様子が映し出されていた)のは、ナレーターの視点が並行して含まれているからである。ここを軸にして話を再構成してみる必要もあるかも。 ■途中のナレーターの恋愛、そして死亡。殺されたのは、美月=ルナシー(追従者ではなく本人と解釈した方が恐らく興味深い)として、少年Aの栄光を奪った者への復讐なのか?ある意味で美月はAの母を補完する役割を果たしていたのだから、代替的な母殺しになるのだろうか? ■ちなみに、冒頭の「ミルクと血」というのは赤ん坊の時に母親から与えられる二つの重要なもの。そこに「毒」が入っていたというのは本作(母親の問題が少年の暴走の遠因である)という点をシンボライズしているのだろう。二人とも「母親殺し」をさせる点でこれも符合する。ただその場合、美月の死だけが浮いてしまう。 ■解釈をいろいろ書いたので最後に。メッセージ性というより「見て自分で考える映画」だと思う。ある意味でこの作品は、自分自身の心を映し出す鏡でもある。何を信じ、何を信じられないかという。 [映画館(字幕)] 9点(2010-07-29 00:51:30) |
83. 時をかける少女(2006)
《ネタバレ》 ■甘酸っぱくほんわりした良作。誰もが憧れるタイムリープを使える少女を軸にした青春ラブストーリーな感じ。純情そうでいて十代も相当屈折してるものだよ、告白を取り消すあたりとか。経験はないけどわかる気はした。 ■タイムトラベルものとしては「バタフライエフェクト」に近い感じ。決して単純にハッピーとはいかず、回避した分だけ誰かが被害に会うというあたりとか。あと、タイムリープするたびに少女が体を痛めつけるところも、タイムリープを安易なものにしていなくていい。 ■中盤がややだれ気味なのとあんまりうまくまとまっていないのとがあるのだが、「お前タイムリープしてるだろ」からラストへの展開はおおと思わされた。でもあの絵にそこまで価値あったのかなぁ。。。 ■ラストの「未来で待ってる」は、普通に「時間がたてば若いチアキと年を重ねたマコトとで出会える」という意味じゃないのかな。だから正確には待つのはマコトだけだけど、代わりにチアキは年を重ねたマコトでもなお好きだ、そういうことじゃないのかな。 [地上波(邦画)] 9点(2010-06-27 00:46:50)(笑:1票) |
84. 母なる証明
《ネタバレ》 ■冤罪はらしの骨格だけ追うと大したことはないように思うかもしれない。けど、細部までキチンと見てみるとこれは相当重い作品である。というより解釈が相当難しい作品である。以下思ったことを時系列的に ■とりあえず最後まで名前の出てこない「母」。彼女は「母」としてしか作品中で規定されていない。すなわち、自分個人としての価値が規定されず、ただ「トジュンの母」としてしか生きていないことが示されている。 ■母親とトジュンは近親相姦を思わせるような関係にある(夜の裸で寝るシーンなど)。警察でも「女と寝たことはあるか」「母親」と答える。トジュンの立ち小便を母親は必死に繕う。 ■衝撃の告白。トジュンは一度母親に殺されそうになっている。農薬を飲まされて無理心中させられそうになった。そのために今のような知能に障害を負っている。そしてそれを思い出した。母親は息子に忘れるための針を指そうとする。息子は「今度は母さんは針で殺そうとした」と叫ぶ。この辺は相当意味深。 ■携帯電話を見せられて、トジュンは目撃者のおじいさんをきちんと指摘する。なぜ???自分が犯人であることがわかってしまうかもしれないのに。もしかして、母親におじいさんを殺させようとたくらんだ???自分を殺そうとした母親に復讐? ■おじいさんの家。母が針を刺そうとする二度目。針は間違いなく何かを暗示してる。そしてその後実際にお爺さんは殺される。 ■トジュン釈放。しかし母は迎えにいかない。なぜか火事現場に立ち寄ろうと言い出すトジュン。深い意味はあるのか? ■家に帰るトジュン。母親に「なぜ死体を高く上げたんだろう」と聞く。自分が犯人なのに。そして恐らく自分が犯人だと母親が分かっているのを知ってるのに。この意味は?しかも「早く助けを呼ぶため」というえらく合理的な理由。 ■冤罪の息子を見に行って泣きだす母。ここにおいては、もはや「トジュンの母」ではなく一人の「普遍的な母」であるのではないか。 ■最後に針の箱を渡すトジュン。「忘れちゃだめじゃないか」というのはどこまで知ってのセリフなのか。 ■そして最後に針を刺して踊る母。針は忘れるためのもの。しかし彼女が忘れたのは、ただ息子が殺人したとかそういうのではなく、「自分が母であること」それ自体ではなかろうか。。。 [DVD(字幕)] 9点(2010-06-02 01:56:15)(良:2票) |
85. 私の中のあなた
《ネタバレ》 よく見かける難病ものだが、その中では群を抜いたストーリーで引きつけてくる。 難病の姉、ドナーとして作られた妹、姉を守るべく戦う母、冷静にしかし暖かく見守る父、それぞれの心の葛藤が上手く描かれている。 最初はドナーから逃れるための訴えのように見えながら・・・というのは、ぶっちゃけ姉の描写を見ている限り恐らくこういう展開では、と予想していたのに見事その通りだったのでそこまでの衝撃はなかったが、しかしなかなかいい展開だと思った。 [DVD(字幕)] 9点(2010-04-30 00:27:44) |
86. チェンジリング(2008)
《ネタバレ》 久しぶりにいい映画を見た。目を話す余裕のない2時間半、完全に吸い込まれた。母親には共感し、警察や精神病院の人にはものすごい理不尽さを感じさせられる。 ■さて、牧師とコリンズ夫人は実は結構見ている世界がずれているような気がした。夫人はただひたすら息子の帰りを信じ、警察にも「謝罪とかは何も要らない、ただ息子を返して」と訴える。他方、牧師は警察の腐敗を告発することが一番であり、きつく言えば夫人は警察被害者のワンケースにすぎない。それが象徴的に表れるのは病院釈放後、ウォルター死亡かのニュースで倒れた夫人が意識を戻した後、牧師に「今は君に注目が集まっている」と夫人に表に出ることを勧めるのに対し、夫人は家に帰ってしまうシーンだろう。 ■そう、夫人の行動を「愛」と書いている人が多いが、確かに愛と言えば愛なのだが、個人的には冒頭の息子とのやり取りで夫が逃げたことに触れて「責任」を持ちだしていたが、その「息子への責任=義務」こそがあるのではなかろうか。 ■なお、別人の息子について。あの「ハリウッドスターに会いたい」のくだりは本心じゃなくて警察に作らされた(言わされた)のだろう(もともとこの子は浮浪者に捨てられて保護されたことを思い出そう)。だからあんな鉄面皮にウォルターだと言い張り続けるのは、警察にそう言えと言われたのはそうだが、端的に「コリンズ夫人のところしか居場所がない」からではなかろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2009-12-30 00:42:31)(良:1票) |
87. カメレオンマン
《ネタバレ》 こんな映画があったのか、と思えるぐらいに映画の枠組みをぶち壊した映画。なんといっても「周囲の人と完全に同化してしまう男の”偽”ドキュメンタリー」ですから。 映像が差し込まれてヒトラーやチャップリンと共演してたり、明らかにおかしな内容をクソ真面目にドキュメントしてたりと、ここまではっちゃけてしまえばもうなんでもありの世界。 ところで、スーザン・ソンダクとかよく出てくれたなぁ。ああいう人が出てるとホントのドキュメントっぽい。黙って深夜にでも流したら絶対誰か騙されるだろう。文句なし [ビデオ(吹替)] 9点(2009-07-19 23:03:07) |
88. 記憶の扉
《ネタバレ》 ミステリー・サスペンス的な出だし、大雨の中死に物狂いで走り続ける男、なぜ?、と誰もが思わずにはいられない。そして警察署につれていかれる。不条理な取り調べと、なぜか思い出せない記憶。 最後の最後まで全体像が見えず、ラストで「あっ!」と言わされた。久しぶりにどんでん返しに見事にかかった。しかしただ返しだけでなく、きちんと中身のある内容になっているのもおみごと。 どんでん返しがなくても、あの雨といやな雰囲気、そして引っかかる音楽は相当にうまいと思う。地味だけど味のある作品。 [ビデオ(字幕)] 9点(2009-05-24 00:59:52) |
89. 容疑者Xの献身
《ネタバレ》 数学・物理好きで元山岳部なんだからこりゃ見るしかないでしょ、とドラマ未見・原作未読で鑑賞。 まあ多少変なシーン(おそらくドラマ由来)はあるが、総じて楽しめた。 もうちょっと「天才同士の対決」をフォーカスしてもよかった気がするが。 (あ、私は普通にネタとして楽しみましたが、あれを真に取られると困るので注記すると、数学者も物理学者もあんな風に「論理的でない」とか言いませんから。 物理の理論を見つけるのは普通に「直観」に依拠しますし、数学の解法もしかりです。むしろそういう学者は論理の適用範囲の限界を分かっているので) 山のシーンは無駄。むしろ心理的部分をもっと深めていい。 あと、「安易に人を殺すのに興ざめ」という否定的レビューが散見されたが、「殺した人間の咎」という側が今回のスポットだし、人を殺すことがそこまでよくないことである(殺される側がかわいそうである)からこそ、殺した側はますます重い十字架を背負うのであり、だから別に問題ないと思う。 [DVD(邦画)] 9点(2009-04-01 23:42:13)(良:1票) |
90. アフタースクール
《ネタバレ》 さすだ内田監督、今回もやってくれました! まさか最初のカットから騙されているとは・・・徹底的に練りこまれた脚本は、ミステリ界でも随一だと思います。 全体としてのまとめ上げ方は、個人的には皆さんの評価とは逆に『運命じゃない人』をしのぐとさえ思います。 前前作、前作が時間軸の前後という手段を取っているので、ある意味その方法を取ればある程度のものは出来てしまう(もちろんこの監督の作品はその程度では全くないが)。そしてこの方法のままだと2作が限界かと見ていたので、時間軸ではない普通の方法で来たのはうれしかった。 ただ、正攻法だと時間軸と違って、登場人物に最初から「だます意図」が存在してないとうまくいきにくいし、まさに観客のために騙すシーンが存在するという欠点がある。 次回作では、時間軸をそのままにして、かつ誰にも騙す意図はないのに(とコーエン兄弟になってしまうのかなぁ。あの形ではないほうがいいなぁ)というような奇跡のような作もこの監督になら期待していい気がする。 [DVD(邦画)] 9点(2008-12-31 22:31:17) |
91. パリ、テキサス
《ネタバレ》 何だかわからないけど、いい映画。 あのまったりした流れで2時間半飽きなかったから、なかなかのものでしょ。 うまく言い表せないけど、人生というものを感じさせられた。 あと、画がきれいでした。 [DVD(字幕)] 9点(2008-09-18 19:18:48) |
92. 眼には眼を
《ネタバレ》 決して明言はされていないが、しかし壮絶な復讐劇。 不条理な巻き込まれ方としては「オールド・ボーイ」を髣髴させられるし、やり口の悪質さ加減は「ファニーゲーム」級でさえある。 だが、そのリアルさはこれらの作品をはるかにしのいでいる。 医師自身にも手落ちがないとは言えない。 あの復讐はやりすぎとも見えるが、むしろあれが人間の本性かもしれない。 ラストの笑い声と俯瞰ショットはぞっとさせられる。 [ビデオ(字幕)] 9点(2008-08-02 20:49:25) |
93. ルパン三世 カリオストロの城
《ネタバレ》 なんというのか、こんな凡庸な筋書きなのに、見ていて飽きない、引き込まれる。 多分普通のルパンじゃないんだろうけど、普通のルパンを知らないので。 [地上波(邦画)] 9点(2008-05-06 17:32:01) |
94. サルバドル/遥かなる日々
《ネタバレ》 オリバー・ストーンなら、プラトーンよりも断然こちらの方を薦める。それほどの映画。 前半はすこし冗長だが、いきなりの死体の山には驚いた。 有無を言わさず殺していく軍隊。そしてそれを支援するアメリカ・・・ 仲間が次々死んでいき、最後に妻と引き離されてしまうのは、ハッピーエンドを予想させる展開を裏切っていてよかったと思う。 なんというのか、戦争の痛烈さを感じさせられる。 ただ、一歩冷静に考えると、少し一面的かな、と。 無論アメリカの政策は大問題なんだけど、じゃあ共産主義でいいのかと言うと、結局共産主義も似たような弾圧をやっているのだから、どっちもどっちとしか思えない。 エルサルバドルの場合、市民への宣伝は左翼・共産主義の側の方がうまく行ったようだから、左が市民を取り込み、「市民を弾圧する右翼/市民を守る左翼」のような構図が出来上がってしまうが、結局は右も左も市民を食い物にしているのが現実だろう。 そういう意味では、共産主義サイドが市民を食い物にしていく側面も映したほうが、よりよかったのではなかろうか。 そういえば最近チベットで中国による弾圧が行われている。 普段、「平和」や「人権」を訴える「良心的」なメディアや知識人が、チベットの問題ではだんまりを決め込んでいる。 中国によるメディア統制が行われているのは事実だが、それにしてもあまり報じられていない。 自民党も民主党も、チベット問題には触れたがっていない。 ところで、毎年莫大なODAを中国にあげているのは日本だということは自覚しておいた方がいいのではなかろうか。 そして、そのODAが一体何に使われているのかも。 さらにいえば、そうしたODAを強く主張していたのは、ほかでもな「平和」や「人権」が大事な「良心的」なメディアや知識人であったことも。 日本の「良心的」なメディアや知識人、政治家は、もはやチベットでの弾圧を、この映画のアメリカのように支援しているようなものだろう。 この映画のような果敢なジャーナリストはいなくなってしまったのだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2008-04-18 22:52:12) |
95. 悪魔のような女(1955)
《ネタバレ》 非常に秀逸なサスペンス。 モノクロのよさが存分に出ている。 前半、淡々と殺人計画が進んでいく。 殺人の決心がなかなかつかないクリスティーナに完全に感情移入させてしまい、筋が読めなくなっている。 箱の紐が切れるところとか、危ない、と心の中で叫んでしまった。 ここだけでも十分面白い。 そして後半、プールの水を抜いたところから一気に加速。 次々と不可解な事態が発生し、半ばパニック。ミステリアス度は急上昇。 ラストなんて、並みのホラー映画ではかなわない怖さ。 陰影や音の使い方がうまい。 最後の死体は予想はしていたが、やはり驚く。 しかし、探偵がけりをつけて一件落着のところで、生徒の最後の一言が謎を呼ぶ。 せっかく完成したジグソーパズルが崩れて、嫌な余韻を残してエンド。 最近のサスペンスなんかよりもずっと優秀。 個人的には「恐怖の報酬」よりも上かも。 [DVD(字幕)] 9点(2008-03-31 22:42:00) |
96. 告発
《ネタバレ》 最後、ヘンリーが自殺したのは、勝利出来たことと、逆に人生にはもう期待できなかったからではないだろうか。 ケビン・ベーコンはさすがの演技。 皆さんかいておられますが、なんでオスカーは無視したんだろうか。 各シーンはすばらしいけど、全体がシーンごとの細切れになっているようなのはマイナス。 あと、最初の方のぐるぐる回りながらカメラが映していくのは、見ていて気分が悪くなる(酔う)。 マイナス点はそこら辺かな [DVD(字幕)] 9点(2008-03-21 20:04:17) |
97. アヒルと鴨のコインロッカー
《ネタバレ》 とりあえず、絶対予備情報ゼロで見るべき映画。 見ていないのだったら、いますぐこのページを閉じるべき。 原作は未読だが、よくこれを映画化する気になったなぁ、というトリック。 メメントで騙されて、今回またはまってしまった。 河崎のあの微妙なカッコがなぁ。でも日本語うますぎだよ。 最初はコメディかと思ってたけど、すすむにつれて切なくなってくる。 最後はどうなったか描かず終わりだが、変に描くよりはいいと思う。 でも、駅での別れでは振り返ってもくれませんでしたね。 キサラギ、サマータイムマシーンブルース、運命じゃない人、といい邦画の流れはわかってきた気もする。 [DVD(邦画)] 9点(2008-03-19 14:10:07) |
98. キサラギ
《ネタバレ》 脚本が非常に巧妙に練られていて、細かい部分が伏線にとなっているのには唸らされる。(書くとネタバレになりそうだからやめておこう) 近年では希に見る傑作ではないだろうか。 邦画ならば、「運命じゃない人」「サマータイムマシーンブルース」あたりと比較したい感じの映画である。 ただ惜しむらくは、あそこまで引っ張っておきながら最後にキサラギミキの顔が出ていること。 私としては観客の想像に任せるべきだったと思う。 はっきり言って、時々出るキサラギミキの部屋やなんかさえいらないと思う。 もう一つ言うと、どうも役者の演技が下手。 明らかにオーバーだったり、臭かったりも。 また前半が変にコメディとサスペンス・ミステリが中途半端に混じっている感じだったので、あるところからは純粋にミステリ方向に絞ってほしかった。 批判めいたことが多く並んでしまったが、それらを補って余りある脚本力であるし、見るのは損ではないと思うことを慌てて付け加えておく。 [DVD(邦画)] 9点(2008-02-27 22:56:50) |
99. 新幹線大爆破
《ネタバレ》 当時の邦画の力を見せてくれるような作。 「スピード」の元ネタとされている映画だが、こちらの方が面白い。ご都合主義満載(警察はへぼいし、喫茶店の火事は笑うしかない。通りがかりの柔道部に頼むって何よ!)だが、不思議と最後まで緊迫感があってまったく飽きさせない。 犯人側の描写もしっかりしているのもいい点。 ミニチュアもよく出来ている。国鉄の協力がない中よくやったと思う。 ただ一つ、ピコピコいう感じの変な電子音の効果音はやめて欲しい。もう一つ、妊婦の扱いが中途半端。そこら辺も入れて1点減点して9点。 [DVD(邦画)] 9点(2007-10-03 23:20:32) |
100. 情婦
《ネタバレ》 名作と名高い作。今回やっと鑑賞。 うん、面白い。弁護士と看護婦とがかなりコメディタッチ名やり取りをしているので前半は笑ってしまったが、後半の法定劇はスリリング。 ラストの二段階のオチはさすがに読めなかった。1回目は「そうだろうな」で、某二重人格映画と似たように終わるのかな、と思っていたら、あらあら。「情婦」の邦題もやっと納得。これはわからない。もともとクリスティって「解けない推理小説」(オリエントとかアクロイドとか)が多いからまあいいでしょう。でも「結末は決して人に言わないでください」は大げさな気がする。 タイトルの「情婦」は、まあ間違っちゃいないけど、やはり見る人を減らしてしまっている気がする。素直に「検察側証人」でもいい気が。 [DVD(字幕)] 9点(2007-09-21 23:03:06) |