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101.  キューポラのある街 《ネタバレ》 
眉目秀麗で成績優秀のジュンだが、貧しくて高校に行けないという不条理な現実が重くのしかかる。楽して高校に行ける人には負けたくないという負けん気でバイトをしながら受験勉強に励んでいたが、父が仕事を再び辞め、母が酒場で男に抱かれながら働いている姿を見て気持ちが折れてしまう。修学旅行を取りやめ、悪友とバーで踊り、酒を飲んで寝込んでしまう。不良達に乱暴されそうな所を辛うじて逃げ出せたのは幸いだった。登校拒否を続けていたが担任の説得により復学し、卒業後は就職して夜学に通う道を選ぶ。自分で選んだ道だから安易に変えたくないという彼女の気持ちは健気だ。 弟タカユキは幼いので貧困はまだ切実ではなく、笑い飛ばしている。それが一服の清涼剤となって作品に彩りを添えている。 ジュンと同様に不幸な境遇にいる朝鮮人の友人が北朝鮮に帰郷するとき、もっと話をしたかったと言い交すのは泣かせる。 牛乳配達の少年が牛乳を盗んだ子供らに対して、お前らのせいで病気の母の薬代が消えると泣きながら石を投げるも忘れがたい。 結局のところ真の貧困や悲惨さは描かれておらず、父親が都合よく職場に復帰できるなど予定調和で終っている。それでいいのだろう。少女が逆境にめげず、明日を信じて自分の進む道を探しだす姿を描くのが眼目だ。苦境から抜け出そうと懸命に頑張る姿を見ると応援したくなるものだ。頑張る人が成功すると爽快になる。スポーツを見ているようなものだ。それがこの作品の成功の要因といえるだろう。 それにしても主演女優の美少女ぶりには目を見張るものがある。まさに掃き溜めに鶴だ。体を張った演技も好感が持てる。例えばジュンの友達役の誰かが主役を演じていたとしたら、この作品はさほど注目を集めなかっただろう。また子供達に自然な演技をさせた監督の力量も賞賛に値するものだ。脚本に無駄がなく、工場や学芸会の場面など一つ一つ、丁寧に手堅く描かれている。窓を開けると夕陽に染まる街並みが見えるなど印象深い場面がいくつかあった。これが初監督作品で、脚本も自分で書いている。才能のある人だ。 
[DVD(邦画)] 9点(2014-06-24 01:58:31)
102.  北京原人 Who are you? 《ネタバレ》 
去りゆく北京原人とマンモスに向かって「走れ、もっと走れ。自由になれ」と佐倉が叫んで終ることから推考すれば、脚本の意図は、北京原人を野生に戻すことが良心に叶った行為であると結論づけ、生命を弄ぶ行き過ぎた科学に警鐘を鳴らすものだろう。 だがその意図は脚本の致命的な過誤により破綻しているので全く伝わらない。 原人は化石DNAより復活されたものである。それも動物の子宮や人工子宮も使わず、時間と粒子を操って短期間にカプセルの中で成育させたものだ。なので彼等は生まれたてで、当然過去の記憶はないし、野生については現代人以上に何も知らない。脚本家は原人をタイムマシンで連れて来た場合と混同しているようだ。そんな原人とマンモスを野生に放つのは愚挙以外何物でもない。 ところで原人などよりずっと重要なものがある。それはDNAから原人を短時間で成人にまで復元できる科学技術だ。これを使えば、人間や動物のクローンがいくらでもできる。世紀の大発明である。蒸気機関車が発明されて産業革命が起きたのと同様のパラダイムシフトが起こるだろう。なのにそのことについての言及が一切無い。この技術を用いる試験に何故北京原人のDNAを選んだのか疑問だ。脳内を映像化する発明も凄いものだ。 陸上競技での活躍、原人と車の追跡劇、マジックショーでの消失、復活マンモスの暴走など、随所に楽しませる事項を盛り込んでいるのは評価できる。しかし、いろんな場面で周到さが足りない。例えばセスナで北京に行く場面でも、免許、航続距離、パスポート、中国の研究所と連絡する周波数をどう知るかなど、何の説明もない。他にも、原人にシャトルのハッチは開けられないだろうとか、北京原人の骨から生まれたから中国人と主張するとか、原人を隔離しないで観光させるとか、原人を復活させてから発表をどうするか考えるとか、疑問の嵐だ。それに現代人と北京原人との恋愛はありえないだろう。まあ、そんなことは忘れてもいいが、気になることがただ一つある。原人が出した百m8秒9の驚異的世界新記録は正式に認定されるのだろうか?原人は人間かどうかの問題を含んでいて深い。と、余計なことを考えされられる迷惑な映画だ。制作費20億円かけて配給収入4.5億円と大コケ。Uu-pa! 原作者、Who are you?
[インターネット(字幕)] 3点(2014-06-10 00:57:07)
103.  日蓮と蒙古大襲来 《ネタバレ》 
おそらく日本映画初の"スペクタクル巨編"で、以後の「釈迦」「日本誕生」等の先駆をなす。その歴史的意義は大きい。名優勢揃い、特撮、群集場面等、随所に映画の醍醐味がちりばめられていて観ていて小気味よい。特に滝の口の法難と蒙古襲来場面の特撮は美的感覚にすぐれ、何度も観たいと思わせるものがある。とはいえ内容は個性の強い日蓮の生涯を描いたもので、誰でも楽しめる"名作”とはなっていない。 修行の末、悟りを得た日蓮は「我、今日より日本の柱とならん!日本の眼目とならん」と叫ぶ。そして貧乏人や病人の世話をしたり、辻説法を行うなどの布教活動を行っていく。そこまではよいが、その思想や実現方法が過激だ。先ず現在行われている仏法はすべて邪法で、法華経以外に真の平和は得られないと強弁し、一切の念仏寺と禅寺の排除を主張する。幕府に対しても政綱の反省を促し、北条一門の同士討ちと他国の侵略を予言し、やがて日本国は亡びると威迫する。ついでに自らの法難も予見してみせる。その主義主張の正当性は、ただ経典に書いてあるの一点に尽きる。どうして彼が法華経こそが釈尊の正統な教えと信じるようになったのかが描かれていないので、法華経に疎い人には戯言にしか聞こえないだろう。このような過激な教えを唱え、強引に布教するならば、狂僧といわれ、通常なら殺されていただろう。しかし奇跡的に生きのび、ある程度彼の予言通りに時代が推移するのだから歴史は面白い。日本の歴史を見渡しても彼のような人物はそうはいない。それが彼の魅力となっている。力強いものに民衆は惹かれるのだ。 本作での日蓮の奇跡は次の三つ。竜の口の処刑時の雷。日蓮に帰依する者の病は快癒し、敵対する者は死ぬ。日蓮は戦場で調伏祈祷をして大暴風雨を起こし、海上の蒙古軍を滅ぼした。事実としては、蒙古襲来時日蓮は身延山にいて調伏祈祷はしていない。 脚本に強引なところはなく、よく練られている。日蓮を面罵し何度も殺そうとした人物が、最後は日蓮に帰依するなど人物を丁寧に描いているので好感がもてる。革命を志した奇跡の聖者か、悪運が強いだけの坊主か、観る人によって意見は分れるだろうが、この作品が映画の底力を魅せてくれることに変わりなないだろう。米国の「十戒」にひけはとらない。一度は観ておきたい作品だ。
[地上波(邦画)] 8点(2014-06-07 01:24:02)
104.  コルドロン 《ネタバレ》 
大昔、冷酷で邪悪な王が捕まり、生きたまま溶けた鉄の中に投げ込まれると、王の悪霊は固まってブラック・コンドロン(黒い大釜)となった。邪悪な人間が大釜を所有すれば不死身の軍隊を自分のものとし世界の支配者になれる。ホーンドキングは長年それを探し求めていた。キングの野望を防ぐには大釜を破壊しなけれならない。 少年ターランの飼っている子豚には予知能力があった。それを知ったキングは子豚をさらう。ターランは城に乗り込み、何とか子豚を逃がすが、自分は捕まってしまう。ターランは偶然勇士の剣を得て、知り合いになった森の住人ガーギ、エロウィー姫、老楽士、妖精らの仲間と力を合せて脱走に成功する。大釜は三人の魔女が持っていた。ターロンは勇士の剣と交換する。 しかし大釜を破壊するのは不可能で、邪悪な力を封印するには命あるものが自らの意志で大釜の中に飛び込まなければならず、飛び込んだ者は二度と外に出ることはできないことを知る。誰も飛び込む勇気のないまま、彼等はキングに捕まってしまう。 キングは大釜から死者の軍隊を呼び出した。それを見たターランは大釜に飛び込もうとするが、友達を殺させないと、ガーギが飛び込む。すると軍隊は倒れ、キングは大釜に飲み込まれた。老楽士は巧みに三人の魔女と交渉して大釜からガーギを戻させた。 各人の個性と物語とが上手くかみあっていない。臆病で友達のいなかったガーギが、友達を得、友達の代わりに犠牲となって大釜に飛び込むのは秀逸で、唯一感動できる場面だ。 騎士に憧れるターロンは勇士の剣を得るが、大した活躍もせず、剣も失ってしまう。光を操る姫はターロンとの恋愛がある程度で影が薄い。老楽士は最後の魔女との交渉のときに力を発揮するだけ。子豚は途中でいなくなる。妖精はいないのに等しい。キングはあっけなく敗北する。 設定は遼遠で、登場人物も豊か、いくらでも面白くなりそうなのに凡庸な出来栄えでおわっている。主人公の冒険も成長もほとんどなく、脇役にも魅力がない。光の玉やハープ等の品目を活かしていない。最大の問題は、死んだ者を生き返らせるということを安直に行っていること。これは禁じ手だろう。子供向けだからいいだろうという安易な考えは改めた方がよい。本当に面白いものは、大人が観ても面白いものだ。
[地上波(吹替)] 5点(2014-06-05 20:47:15)
105.  1000年女王 《ネタバレ》 
千年周期で太陽系を巡る遊星ラーメタル星と地球が異常接近し、地球が壊滅するという危機を描く。舞台は関東地方限定で、国連、政府、軍隊は一切登場しない。ラ人は人類より高度な文明を持ち、何万年も前から地球に千年女王を送りこんで支配してきた。 現女王は雨森始の学校の教師と天文台の秘書を兼務、一般人として暮らしているが、密かに人類救済の箱舟を準備してきた。 ラ星の指導者ラーレラは地球移住計画を密計していた。ラ星は暗黒太陽に落ち込む宿命だからだ。 最接近したときに地球に橋を架け、地球人がラ星に避難した隙に移住する計画だ。 良心に則ってそれを阻むのが女王の妹で千年盗賊のセレン。セレンは移住計画を女王に洩らし、ラ星に反旗を翻す。人類はセレン等の戦いをみて、自ら武器を取る。旧式戦闘機、戦車、投石器、弩砲等だがなぜか有効だ。女王は純粋な心を持つ始に共鳴し、何とか人類を救おうとする。女王は関東平野を刳り貫いた巨大な箱舟を浮上させるが、攻撃を受ける。そこでかつて地球愛に目覚め、ラ星に帰還しなかった千年女王の骸に祈りを捧げると、数体が復活し、ラ星に戦いを挑む。ラーレラは超能力で女王を倒すが、女王の婚約者で戦闘司令官のファラに殺される。 人類の救済と愛を描いた壮大なSFだが、感動は薄い。女王が人類をどう支配してきたのか、接近まで半年もあるのに隕石群が襲来したりする等不明な点もあった。浅慮な設定には目をつぶるとしても、人物の動きや表情がぎこちなく、感情が伝わらない。見せ場であるはずの戦闘場面も進度が悪く、美的感覚もなく、ただまだるこい。他に単調な音楽、主人公の醜男ぶりも感情移入をそぐ一因となっている。始と女王の関係が疑似母子なのが惜しい。恋愛関係であれば、もっと受け入れられただろう。それにしてもあの箱舟は巨大すぎで、元に戻す発想に苦笑した。実際問題、あれほどの高度な科学知識があれば、他の星をテラフォーミングできただろう。ラ星人の考えが間違っているとしても、同胞を皆殺しにするような展開は暗すぎるし、後味が悪い。指導者の殺害程度で納めた方が物語としての座りがよい。話を壮大にすれば感動するというものではない。設定が複雑すぎて、過不足なく描くには明らかに尺が足りない。女王やセレンの自己犠牲を描くのであれば、もっと内面に焦点を当てるべきだ。
[地上波(邦画)] 5点(2014-05-28 01:45:02)
106.  キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK- 《ネタバレ》 
鑑賞後、誰もが宇宙海賊ハーロック(H)に憧れ、アルカディア号に乗りたいと思わせるような内容であるべきだが、この作品には夢も感動もない。デザインや技術は優れているのに、矛盾点や疑問点が多く、作品に入り込めないのは残念である。人類は他の銀河に進出したが、異星文明との共存が果たせず、種として衰退したというが、実際は人口5000億と大繁栄を誇っている。他の星に人類は住んでいるし、生物も生息するので矛盾する。地球がダークマターで破壊された様子は多くの目撃者がおり、ホログラムで隠せるものではない。破壊された地球はテラフォーミングすればよい。 ヤマが無理な操作をして植物園を破壊するが、状況が説明不足。地球の花ならすぐに再現できるはず。誰かが種を持っている。 イソラは下半身不随になるが、再生医療は?ナミは植物状態なのにホログラムで会話ができる不思議さ。どうやって相手を見てるの?イソラは植物状態のナミとどうして結婚したの?イソラが激昂してナミの生命維持装置を抜いたが、すぐに戻せば死ななかった。アルカディア号が黒煙を吐くのは何故?アルカディア号かホログラムかは、レーダーがあれば見分けがつく。トカーガ星で救助船がナミを助けたが、一人しか救助できない不思議さ。また次元振動弾を設置するのに不安定な橋のような場所を選んだ理由。乗務員志願者が急崖を素手で登るが、飛行船等で移動すればいい。イソラが使っているような反重力乗り物もある。Hは孤高の存在で男の憧れ。乗務員志願者の三人を殺したり、宇宙をリセットしようとしたり、敵に拘束されて落ち込んだりしてはいけない。ましてや次元振動弾の起爆スイッチをヤマに渡して、「人類が過ちを犯しそうになったら躊躇わず押せ」とは言わない。あまりに傲慢すぎる。それに敵とはいえ殺し過ぎ。同じ人類ではないか。ダークマター機関の説明が欲しい。Hが不死身だったり、ダークマターを開放するとミーナが消滅することの関係は?死人が生き返り、ミーナが復活した場面は謎。Hがヤマに渡したものと関係がある?敵艦の集中砲火ビームがアルカディア号に当らない不思議さ。地球に植物が再生したのを誰も気づかなかった?ガイアサンクションの総監が簡単に地球を破壊する決定を下す矛盾。総監とHの対決を最終決戦として御膳立てすべきだった。ハーロック二人体制で続編?たぶん無い。
[DVD(邦画)] 6点(2014-05-22 07:31:29)
107.  天井桟敷の人々 《ネタバレ》 
悪党文筆家のラスネールは世間を憎み、自尊心だけで生きている。ガランスに恋しているが、それを認めたくない。役者のルメートルは言葉巧みに女性を操るドンファンで、ガランスと一夜を過ごすも戯れの恋に過ぎなかい。が、再会してガランスのバチストへの愛の告白を聞くと嫉妬してしまう。しかしその嫉妬を演技に生かして成功する。大富豪のモントレー伯は権力と富でガランスを愛人にできたが、嫉妬深く、ガランスの心に愛する人がいるのを許せない。無言劇役者のバチストはガランスに一目惚れするが、恋の未熟さゆえにガランスに失恋し、他の女と結婚するが、ガランスと再会して恋の炎を再燃させる。ガランスはあらゆる束縛を嫌い、全てから自由でいたい神秘の女。富、地位、名誉、恋から自由のつもりだったが、純真無垢なバチストを愛していることに別離してから気づく。隠し立てが嫌いで、自分の気持ちを誰彼となく伝えてしまう。女優のナタリーはバチスタを一途に愛していた。愛を勝ち取り、結婚して子供も出来たが、バチスタとガランスの逢引を目撃してしまう。ガランスは、囲い者に身を堕してもバチストを愛し続けたと告白する。「6年間どこにいても昼も夜も一緒にいた、愛し続けた」この言葉に真実味を感じるかで、この作品の評価が変わりそうだ。最後はバチストの妻のために身を引く、というより自由を選んだのかもしれない。ガランスにとって恋と自由は両立しない。傾城の美女を巡っての恋の鞘当と悲劇を描いた作品。一人は死に、一人は殺人者となり、一人の名優が失踪し、一つの家族が崩壊した。恋について、自由について、人生についていろいろと考えさせられる内容だ。何といっても脚本が素晴らしい。終始諧謔と機智に富んだ会話で酔わせ、劇中劇で楽しませ、不測の展開で驚かしてくれる。人生は演劇だ。天井桟敷の人々は貧しけれども夢がある。それと同様、さあ皆さん、一度しかない人生を、恋を存分に楽しみなさいという伝言が込められている。登場人物はみな観劇者の投影だ。脇役の古道具屋、偽盲人、三人の脚本家が良い味を出していた。狂言回しの古着屋はバチストにとって忠告・諫言の象徴。だから彼を嫌い、劇中劇で殺す。それでも運命からは逃れられない。ガランスと叫ぶ彼の声は群集の雑踏にかき消される。嘆かわしいのは、恋の神秘が主題なのに、ヒロインが気品に欠ける年増女優であること。最大の謎だ。 
[DVD(字幕)] 7点(2014-05-20 14:56:13)
108.  大いなる幻影(1937) 《ネタバレ》 
戦争によって分断される人間を様々な側面から描いた人間劇。異色なのは滅びゆく貴族同士の絆と悲哀を描いている点。独軍のラウフェンシュタイン大尉と仏軍のボアルデュー大尉の交情は我々の予想を超える。飛行機で撃墜した敵将を食事に招き、捕虜収容所ではお茶に招いたりと厚遇する。最後は脱走しようとする敵将の腹を撃ち抜く。脚を狙うつもりだったと謝罪すると、いいんだよと友人に声をかけるように許して死んでゆく。ボアルデュー大尉は自らを犠牲にして二人の将校の脱走を助けた。「戦争が終われば自分も滅ぶ運命だ」独軍将校は愛育していたゼラニウムを剪って供華とする。最も美しい場面だ。 マレシャルと敵国の未亡人との恋が後半の核となる。女は夫と兄弟三人を戦争で亡くしている。喪中に敵国の逃亡兵を愛せるものか甚だ疑問だが、「家の中で男の人の靴音を聞く幸せがどんなものかわかる?」と訴えられれば納得するしかない。 「国境は人間が引いたもので自然は同じ」「国に帰ってもまた軍人で同じことの繰り返しだ」「戦争なんてこれで終りにしたい」「幻影だ」含蓄のある会話で映画が締めくくられる。国境を憎みながら、国境に救われるところは風刺が利いている。 他に、少年兵を見た老婆が「あんな子供まで」と嘆く場面や、独軍の気のいい監視兵や、脱走した二人が喧嘩別れしてから和睦する場面など印象深い場面がいくつかある。 内容は素晴らしいが、見せ方は未熟だ。冒頭マルシャルの連呼するジョセフィーヌ、偵察機の撃墜場面、三人の捕虜の脱走未遂場面、これらを省略しているので繋がりが悪い。最も盛り上がるべき城塞からの脱走場面でもサスペンスに欠ける。笛を用いての脱走だが、笛はボアルデューが自国から取り寄せたものだ。捕虜なのに自国から荷物が届き、ドイツ軍より良い食事をしているなど理解に苦しむが、それはさておき、笛を取り寄せるなど甘い設定だ。知恵を絞って、そこにあるもので何とか間に合わせてこそ、感情移入できるというもの。祖国からの新聞によりドゥーモン城塞奪回を独軍より早く知るなども有得ないし、テニスラケットを持って捕虜収容所に向かう米兵などの描写も不必要だろう。やはり戦争映画は厳しさがないと締まらない。煙草吸って、酒飲んで、女装して踊って歌ってというのではしっくりこない。戦争や捕虜に対する考え方が日本と違うのを痛感させられた。
[DVD(字幕)] 7点(2014-05-19 15:03:58)
109.  河(1951) 《ネタバレ》 
河は悠久を流れる時間の象徴であり、人々が交差する人生の象徴だ。インドのベンガルを舞台に恋を夢みる三人の少女と、青年との出会いと別れの物語。ハリエットは詩人と作家を夢見ている。隣家の親戚で米国から来たジョンにのぼせあがってしまう。自分を印象づけようとあれこれ策を講じるが袖にされる。大人びたバレリーはジョンに魅かれつつも「片脚」などと残酷なことも言う。ジョンから冷酷なことを言われるが最後は和解する。メラニーはインド人とイギリス人の混血で、西洋学校を卒業して家に戻ると服や生活をインド式に改めた。ジョンに魅力を感じるが、西洋人を理解できず、彼女に思いを寄せるインド青年とも距離を置く。そんな自分が嫌いだ。ジョンは傷痍軍人。戦争中は「英雄」だが、戦後はよそ者扱いされ、傷心のうちにインドに流れてきた。義足の醜態をバレリーに見られ、つい怒鳴ってしまう。自棄になりインドを去ることを決めるが、メラニーからあるがままの自分を受け入れるように忠告される。そんな時ハリエットの弟が蛇に咬まれて死んだ。隣家の主は「大人は子供を学校に押し込めくだらん戒律を教える。抵抗の余地もなく戦争に駆り立て無邪気な彼らを殺戮する。真実の世界は子供たちのもの。木を登り草を転げまわる。子供達は蟻、自由に飛ぶ鳥、動物は恥じたりしない。重要なのはネズミの誕生や木の葉が池に落ちること」と金言を漏らす。弟の死に責任を感じたハリエットは家を飛び出し、舟で川を下るが、漁師に助けられてあっけなく家出は終る。迎えに来たジョンに「人の心は生死を繰り返す」と諭され、「君の詩は西暦4000年でも残っているかも」と誉められると嬉しくなり愛を告白し、おでこに接吻をもらう。ジョンは「手を貸せよ。片脚だぞ」と義足の負い目を払拭する。春の祭の時、ハリエットの家に新生児が誕生した。感動する三人。原作が素晴らしさを生かしきっている。優美なインドの風景と文化が堪能できる。特にディワリ祭とホーリー祭は必見だ。少女の初恋・成長物語だけではなく、文明とは何かを問いかける深い内容になっている。自然や神に対する畏敬の念を失わずに、伝統に則って生きるインド人の素朴な生きざまには共鳴を受ける。インドに行きたくなった。「10分前は赤ちゃんはいなかった」と感動する感性は見習いたいもの。演技力のなさで青年の苦悩は伝わらなかったのは残念。秀作です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-05-18 22:24:39)
110.  パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 《ネタバレ》 
物事を深く考えず、常に飄々と出たとこ勝負のジャック・スパロウの珍妙奇抜な行動が見ものだ。クスクス笑いの連続で、物語の本筋よりも枝葉末節の方が断然面白い。椅子に縛られたまま卓上のシュークリームを取りに行ったり、馬車に飛び込んで口でイヤリングを盗んだり、縛られたまま椰子の幹を登って脱出したり、泉への入口で聖杯をぶつけて鳴らしてみたりと、つい笑ってしまう。海賊の冒険物語というより、意表を突き、人を食った演出を楽しむコメディ映画だ。 登場人物を多彩にして飽きさせない工夫をしている。ジャックの旧知の友ギブス、超能力を操る黒ひげ、黒ひげの娘でジャックの元恋人の女海賊アンジェリカ、黒ひげを仇と狙うバルボッサ、船に乗った人間を襲う人魚、人魚と恋に落ちる宣教師、生命の泉を破壊しようとするスペイン軍、まぬけ面のジョージ一世、ポンセ・デ・レオン。意図はわかるが詰め込み過ぎで説明不足は否めない。 冒頭、魚網で引き上げられる男の正体。ポンセ・デ・レオンとは何者か?恋人同士だったアンジェリカとジャックの詳しい経緯。黒ひげはあれだけの超能力を持っているのにどうして予言を恐れるのか?ボンバッサと黒ひげの因縁。人魚と宣教師の結末。ギブスはどうやって船の小瓶を盗んだ?スペインが生命の泉を破壊する理由などなど。脚本に工夫の余地がありそうだ。特に黒ひげについては腑に落ちない点が多い。彼の能力はすば抜けている。命令のままに動くゾンビ水夫を造り出す、綱を意志あるように動かして人を捕える、船を小瓶の中に保管する、呪いの人形で人間を苦しめる、船の火炎放射器。彼の能力は発揮されずにあっけなくバルボッサに倒されてしまう。あたら惜しいではないか。それと宣教師を登場させる理由が判らない。船乗りでよいではないか。 次の事実を知っていれば理解が深まる。ポンセ・デ・レオンは16世紀のスペインの探検家で、若返りの泉を探している途中でフロリダを発見したという伝説の持ち主。黒ひげは18世紀の海賊、船は「アン女王の復讐号」でアン女王への共感が命名由来。聖杯はキリスト教の聖遺物のひとつで、最後の晩餐に使われたとされる杯。人魚の名シレーナは、ギリシア神話の海の怪物セイレーンに由来。米国人にとっては常識なので説明がないのだろう。ところでアンジェリカだが、ジャック人形を使ってどうやって孤島から脱出するのか?次回が楽しみである。
[DVD(字幕)] 7点(2014-05-14 05:26:06)
111.  ペコロスの母に会いに行く 《ネタバレ》 
「認知症と介護」という重い主題を努めて明るく、諧謔的に表現した人間喜劇である。 前半はハゲを中心としたネタで笑いを誘い、後半は母みつえの若かりし頃の辛苦に満ちた人生に焦点を当て、感動へと導く。 軽過ぎず、重すぎず、喜劇と悲劇の要点を押えての匙かげんが絶妙で、均斉の取れた手堅い脚本だ。 「ペコロス」とは小玉葱のことで、ツルツル頭の陰語、原作者の自らつけた愛称だ。だからハゲネタも嫌味にならない。それどころか、息子をつなぐ重要な品目となっている。 みつえの人生に暗い影を落とすのが夫と幼馴染みのちえ子だ。夫は根は優しいが、神経症の持ち主であり、酒乱で暴力も振るう。給料を一日で浪費してしまうこともあるのだから、妻の苦労は並大抵ではなかったろう。息子雄一は、そんな父のことが大好きだったという。人情の機微が垣間見れて興味深い。みつえが認知症の兆候を見せ始めたのが夫を亡くしてからというのも有り得べきことである。 みつえは十人兄弟の長子なので、少女時代を通じて弟妹達の面倒を見なければならず、畑仕事も手伝わなければならず、学校にもろくに行けなかった。そんな彼女の心の支えが友達のちえ子だった。だが、ちえ子は口減らしの為、奉公に出ることになり、別れが訪れる。お互いに手紙を書こうねと約束するが、みつえが何度書いても返事は来なかった。 雄一には母と一緒に暗い海をずっと眺めていた記憶がある。どうやら母は入水自殺を考えていたようだ。だが不思議なことに、そこへ手紙が届いた。ちえ子からの始めての手紙で、「生きねば」と認められていた。みつえは感涙し、自殺を留まる。後日ちえ子の元を訪ねたみつえは、ちえ子が苦界に身を沈め他界したことを知る。ちえ子を救った手紙は、皮肉なことにちえ子の死後に出されたものだった。感情が堰を切ったように落涙するみつえ。二人の思い出の曲、早春譜の旋律が流れ、いやが上にも感動が高める。複数の悲劇を一つの手紙に集約する技法は脚本家の取り柄だ。 幻の死人と嬉しそうに会話するようになった母を見て、認知症も悪い事ばかりではないと思い直す雄一。 苛酷な現実に押しつぶされるのではなく、時にはそれを笑い飛ばす事が出来るのが強い人間だ。老監督による人間賛歌として受けとった。
[映画館(邦画)] 8点(2014-04-26 00:47:25)(良:1票)
112.  シャッター アイランド 《ネタバレ》 
精神疾患を扱った映画なので、精神状態をいかに映像で表現するかが肝要となる。 懊悩する心の内面、消えぬ幻影、拭えぬ悔恨、くり返される悪夢などを彩度を高めたゴジック調の重厚な映像やCG効果で表現しており見応えがあった。灰色の海、激しい雷雨、打ち重なる死体に舞う雪、舞い散る黒い灰と部屋を舐める炎、砂の様に崩れ散る妻の体、撒き散らかした書類、死ねないナチスの将校、切り立つ断崖、海上に浮かぶ灯台、どれも異様な雰囲気を醸し出すことに成功している。オチが分ってみると、精神病患者の妄想にしてはあまりにも複雑すぎるのが気になる。「4の法則と67番目は誰?」のメモを床のタイルの下に隠し、仮名は実在人物のアナグラムを使い、“本物の”レイチェルは専門知識に富んでいると、度が過ぎる。整理する。アンドリューは軍人としてダッハウ強制収容所解放に参加するが、独兵を銃殺した、いわゆる「ダッハウの虐殺」には参加していない。戦後、連邦保安官となり、結婚して子供三人をもうけるが、仕事に忙殺され、家族と過ごす時間がとれなかった。妻のドロレスは精神を病み、アパートに放火する。一家は湖畔の家に引っ越したが、アンドリューはやはり多忙で、酒に溺れる。妻の精神は破綻し、遂に我が子三人を殺害する。帰宅してそれを知った夫は妻を憐れみ射殺する。 アンドリューは精神病院に入院するが、あまりに悲惨な記憶のため脳の防御機能が働き、記憶のすり替えが起る。自分を保安官テディと思い込み、妻殺しの記憶はダッハウの虐殺に、妻の死因は他人の放火のせいに、娘を助けられなかった後悔は収容所で見た少女にすり替わる。医師らによる大掛かりなロールプレイ療法の結果、彼は正常な記憶を取り戻すが、「モンスターとして生きるか、善人として死ぬか」を自問し、善人としての死、すなわちロボトミー手術を受けることを選ぶ。その決断は、彼が人間性を取り戻した証しであり感動的だが、感動は薄い。何故なら子殺しという凄惨な事件に至るまでの彼と妻との状況が少ししか描かれてないからだ。妻がどうして精神崩壊にまで追い詰められたのかを解明しないかぎり、事件を真に理解したことにならない。さもなければ単なる猟奇事件となり、共感できず、共感なければ感動もないからだ。オチや謎解きでは感動は生まない。子供の死体を何度も見せられるのには辟易した。
[DVD(字幕)] 7点(2014-04-22 21:53:39)(良:1票)
113.  SUPER8/スーパーエイト(2011) 《ネタバレ》 
映画作成に熱中する子供達が経験したひと夏の冒険と初恋物語、そしてエイリアンとの遭遇、そして家族との和解。いろんな要素が混合され主題が曖昧になっている。監督の意図としては、全ての要素を繋ぎ合わせるのが8㎜フィルムということ。映画作りで仲間が集まり、偶然謎の生命体を撮影して軍の謀略に巻き込まれ、少年の母親の映像で少年と少女が心を通わせ、軍の極秘フィルムでエイリアンの秘密を知り、最後は映画を完成させる。だが、求心力が足りず、各要素の繋がりが弱い。 演出は巧いと思う。工場の無事故掲示板を取り外すことで事故を示唆。少年の父が同僚と会話する姿が影絵になる。円盤の門出の祝福として給水塔の大噴射。才能を感じる。 エイリアンには破壊者と友人と両方の面がある。暴力行為を最小限に留め、少年達との友情を前面に押し出せば、ラストの感動が深まっただろう。現状ではエイリアンが少年のペンダントを欲した理由がわかりにくい。友情を交す相手としてエイリアンは巨大すぎるし、エイリアンが人間を食べる設定は論外だ。それに、ただエイリアンに触れただけで感情が通じるのであれば、科学者達もコミュニケーションがとれたのではないか?ちなみに逆さ吊りにされた人間は脳圧が上昇し、数時間で意識を失い、やがて死ぬ。少女が「エイリアンに助けてもらった」と話すが説得力が無い。 理科教師の行動が不可解だ。エイリアンを助けるためとはいえ、トラックで貨車と正面衝突するのは常軌を逸している。生徒らを逃がす為とはいえ、銃を向けるのはいただけない。尊敬される先生像でないと後に続かない。 少年と父、少女の父の和解が描かれる。少女の父の過失で少年の母が事故死したという設定は両者の関係に緊張感を生み、いい効果を与えている。しかし具体的な事故の説明は無く、不満が残る。不仲だった二人の父同士が和解して、共に我が子の救出に向い、探し出して和解する。感動の場面だが、父達と少年少女達の行動が別々ということに問題がある。再会したとき、お互いの行動を全く知らないのだから、深く共感しあえる理由もなく、和解も表層的なものだろう。ここはやはり、両者が情報を共有し、共に行動して目的を果たすということにしないと感動には結びつかない。両者が軍隊の裏をかいて、エイリアンの帰還を助けるような設定にすれば、一本筋が通る。脚本を少し変えれば名作になった。惜しい作品である。
[DVD(字幕)] 7点(2014-04-22 11:36:17)(良:1票)
114.  EVA エヴァ(2011) 《ネタバレ》 
ロボット科学者のアレックスは十年ぶりに故郷に戻り、自律型子供アンドロイドの情動反応プログラムを研究する。モデルとなる子供を探していたら、エヴァという少女に出会った。愛らしく活発で、大人に臆せず、ずけずけと物を言う、個性豊かな少女だ。アレックスが兄の家を訪ねるとエヴァがいた。偶然にも兄の娘だったのだ。アレックスはエヴァをモデルに研究を進める。かつてアレックスと兄と兄の妻ラナの三人は大学で一緒に研究をしていたが、アレックスが大学を飛び出し、外国に行ってしまったという経緯があった。理由はラナを巡っての三角関係だったようだ。時代は未来で、家事を何でもこなす召使型アンドロイドは開発されているが、その割に住居や車、その他の道具類は旧態依然としている。低予算映画だからだ。最大のサプライズは、エヴァがアンドロイドだったこと。アレックスが投げ出した研究をナラが引き継いで完成させた。そしてエヴァは自分がアンドロイドであることを知らない。そんな馬鹿なと思う。食事したり、逆立ちしたり、風呂入って髪の毛洗ったり、スケートしたり、何もかも出来すぎではないか。ロボット工学のアレックスが人間と見紛うような完璧なアンドロイドなど造れるわけがない。そもそもその原型を造ったのはアレックスだ。そのアレックスが造った唯一の自律型ロボットの猫と比較してもテクノロジーが飛躍しすぎていて、整合性が取れていない。以後見る気が急激に失せた。映画の教訓としては、自律型アンドロイドは時として人間に危害を加える危険があるということと、過去の三角関係の清算は難しいということで、共に興味は引かれない。教訓の代償としてラナは転落死し、エヴァは初期化された。何もかもが虚しい。物語は淡々と進み、抑揚がなく、演出面に問題がある。冒頭でラナの転落場面を持ってきたところが唯一の取り柄だ。眼についたところといえば、プロセッサー作成のCGの美しさくらい。エヴァがアレックスとラナを結びつけようとしたのは、ラナの感情が埋め込まれていたからだろうか?ところで記憶を初期化する「眼を閉じたら何が見える」の暗号は、日常でも使う言葉なので避けた方がよいだろう。それに初期化されたとしてもそれがロボットの死ではない。記憶はどこかに保存されている筈だ。記憶があるからこそ、正常に対人関係が営まれるのだ。文系の人が脚本を書いたのだろうか?隔靴掻痒の感が残る。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-20 13:07:33)
115.  スター・トレック/イントゥ・ダークネス 《ネタバレ》 
旧作は内容が哲学的で退屈するところがあった。新シリーズはアクションと男の友情に重点を置き、息をつかせぬ展開で、清新躍如たるものがある。CG特撮が精彩を放ち、エンタープライズ号が海底から飛び出す場面や雲海から浮上する場面など壮麗で観ていて飽きない。手抜きの無い未来都市の様子、未来テクノロジーの描写など、それだけでも見る価値がある。見所たっぷり。とりわけ、前半が極上だ。いきなり未開惑星で、未開人に追いかけられるカークらと火山爆発という二つの危機が提示される導入部分。未開人から逃れられたと思ったら、スポックが火口に取り残されるという新たな危機。間一髪のところでスポックは救出され、火山活動は新テクノロジーで抑止される。場面転じて、地球。難病の娘を抱えた父親に見知らぬ男Aが声を掛け、娘を救えるという。父親はAの血を娘に輸血すると、所属の軍事基地に入り、躊躇せず爆弾を起爆させる。その対策ため緊急召集のかかった連合本部がヘリに乗ったAに急襲され、カークの上司パイクが死ぬ。Aは地球連合と敵対するクリンゴン帝国の惑星に逃げ込む。カークは提督から新兵器光子魚雷を撃ちこんでAを抹殺せよとの命令を受け、惑星に乗り込む。運悪くクリンゴン人に包囲され、交戦状態になるが、Aが現れ、瞬く間にクリンゴン人をなぎ倒す。そしてカークに魚雷の数を訊ね、72と聞くと、即時に降伏する。謎が謎を呼ぶ展開で、画面に釘付けだ。後半は更にアクション色が強くなり、山場に継ぐ山場で退屈はしないが、ちりばめられた謎は万人が納得できるように回収できていない。Aはカーンという名の、遺伝子操作によって造られた優等人間で、事情により300年間冷凍睡眠していたが、マーカス提督によって目覚めさせられ、残りのクルーを人質に、光子魚雷の開発に従事させられていたが、魚雷に仲間を隠し、一人逃げ出した。マーカスの目的はクリンゴンとの戦争だという。このあたりの事情がすっきりしない。カーンとマーカスの動機が読めないのだ。カーンは仲間のためには涙を流すが、他人には残虐だ。スポックは論理と規則を重んじ沈着冷静だが、感情が高ぶることがある。カークは友情を重んじる熱血漢だが、時折愚かな行動をし、艦長らしくない。人物の描き方に統一を持たせた方が良いのではないか。悪は悪らしく、知は知らしく、艦長は艦長らしく。ところで、カーンの命の血を人類の為に役立たせないの?
[DVD(字幕)] 8点(2014-04-19 22:14:52)
116.  4デイズ 《ネタバレ》 
テロリストが米国内に複数の核爆弾を設置し、大統領に対してイスラム国への政策を転換せよと脅迫する話。凝った脚本だ。テロリスト、ヤンガーはわざと捕まり、拷問尋問にかけられる。拷問するのは専門家のH、尋問は女性FBIのブロディ。三人が織りなす緊迫した心理描写が見どころだ。ヤンガーは狂言と思わせ、嘘の場所を教え、トラップでショッピングモールを爆破する。ここでヤングは初めて、大統領への要求を開陳し、動画撮影させる。爆破阻止という大義の為、犯人の妻子まで拷問しようとするHと、人道的見地からそれを許さないブロディの対立は深刻となる。刻限が迫るにつれて、衰弱していくH。きれいごとではすまされないことを認識して苦悶するブロディ。人命を救うためには拷問も許されるのか、を問いかける問題作。テロ題材の作品が多い中で新鮮な切り口だ。爆弾が実はもう1つあったというサプライズは秀逸。問題点もある。古典的な拷問を延々描くが、今は科学的にやる。自白剤を用いればよい。理性を麻痺させ、誘導自白させるのだ。犯人の行動には不自然なものがある。大統領を脅迫するのに犯行予告動画をマスコミに送ればよい。そしてショッピングモールを爆破させれば効果てきめんだ。自ら捕まったのでは成功の見込みはない。世論を味方につける必要がある。また妻子が外国移住後に犯行を始めるべきだ。単独で核兵器を作成するのも考えられない。ずば抜けた知能犯のはずなのに、動画も編集できていないという矛盾。冒頭の連続撮り直し、馬鹿丸出しだった。Hの妻の経歴が変わっている。ボスニア紛争で、近所の三人に家族を目の前で殺され、その後、復讐を果たした女、いわゆる喪服のテロリストだ。これが物語に絡むようで絡まない。Hの過去にこそ、そういう生臭い事件を盛り込むべきだった。それで彼の人間性の理解が進み、彼の行為もある程度納得できるだろう。通常の感覚からすれば、明らかに異常な彼の残虐行為にいかに感情移入できるかが、この映画の成否を分ける要諦となる。その工夫が足りない。Hの感情が爆発し、ヤングの妻を唐突に殺してしまう。そんなことをすればヤングの心を閉ざしてしまうのは自明。Hが勝手にヤングの拘束を解いて自由にしてやるのも不自然だ。Hが我が子を守るために拳銃自殺するのはよい演出と思う。犯人に残っていた人間性が垣間見れるからだ。一方で、彼が犯行に至る動機の解明は謎のままだ。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-18 16:09:12)
117.  アベンジャーズ(2012) 《ネタバレ》 
単純な“ヒーロー勢揃いのお祭り映画”と思って鑑賞したが、予想に反して不明な点が多く楽しめなかった。 『マイティ・ソー』という映画の世界観に準拠しているようで、その予備知識無しでは入り込めない。 テザラクト、またはキューブと呼ばれるものが重要品目で、無限のエネルギーを秘め、異次元宇宙との入口となれる。研究所のキューブが暴走する場面から映画は始まる。中からロキが登場し、キューブを奪い去る。その目的はキューブで異次元との巨大な入口を造り、仲間の宇宙人に地球を強襲させるというもの。ロキとソーは兄弟で半神らしい。人類がキューブを保有した経緯は不明だが、武器として研究されていた。よくわからないが研究所は崩壊する。 国際平和維持組織S.H.I.E.L.Dは対抗手段としてヒーロー達を集める。ところが、最初に召集されたのが女スパイ。戦闘能力不足で、他のヒーロー達と同列できるものではない。 この後も疑問が重なっていく。 ロキの槍は他人の心を支配する能力があるが、途中から効力がなくなった。また支配された人間は殴られただけで正常に戻る。 ロキはわざとS.H.I.E.L.Dに捕まるが、その理由が不明。ハルクを操るためのように思えたが、そうではなかった。 ハルクは爆発衝動で暴走してしまうが、後半は理性で自分を制御できるようになっている。その説明がない。 世界観が違い、個性の強いヒーローを一同に会させ、それぞれのファンを納得させ得る物語を造るのは大変だと思う。本作品はかろうじえ合格点だが、不満もある。当初仲間割れしがちだったヒーロー達が心を一にする契機はS.H.I.E.L.D職員の死だ。それはよい。だが、そこにはS.H.I.E.L.Dチーフのカードの作為があった。これは不要だ。次に、敵を撃退する最終兵器が核だったこと。何と安っぽい!キューブに対して貧弱すぎる。それに政府が都市に核攻撃をするのを阻止する話はもう見飽きた。もっと斬新なものにすべきだろう。最も残念だったのは、敵に魅力がないということ。ロキはハルクに軽くひねられ、宇宙人は核ミサイル一発で木端微塵。ヒーローを引き立たせるためには強い敵でなければならない。ある程度感情移入できる程度に敵側のドラマを描く必要ことが、ラストへの伏線となる。科学の進歩に格段の差があるのだから、核兵器などもろともしない強敵であってほしかった。危機の演出には不満が残る。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-11 21:04:48)
118.  星を追う子ども 《ネタバレ》 
一言で云えば、求心力のない作品だ。話の筋が一本通っていないのだ。少女アスナが不思議な少年シュンと出会って、アガルタという異界に旅して成長するという本来あるべき話が、途中で、亡き妻の生き返りを願うモリサキの冒険話に取って代わられてしまっている。アスナはモリサキのお供に成り下がる。そして異界の世界観が複雑で非常に分かりづらいのだ。かつてケツアルトルという神々が存在し、人間に知恵を授け、古代文明を発生させた。やがて人類が独自の進化を始めたことで、その役割を終え、地底世界アガルタに身を隠した。アガルタには願いの叶う石があり、生死の門があり、不老不死があり、神々の船がある。しかし今ではケルアルトルは異形の姿に変貌し、アガルタ人は地上の人間と接触を絶ち、滅びの時を迎えようとしている。このあたりの説明はうまくいえない。きちんと説明されていないからだ。 更に登場人物の行動に理解しがたいものがある。その最たるものはシュンだ。地上にあこがれ、命を縮めると知っていても地上に出て、アスナと出会って、助け、思いがかなったと自殺する。シュンの歌った最後の歌を聞いたのがアスナだったのだが、それがどんな意味があるのか。シュンはそれっきり登場しない。モリサキの行動で不可解なのは、学校の先生をしていることだろう。彼はアガルタを探査する組織に属しているのに。モリサキとアスナの接点を設けようとする無理やりな設定としか思えない。彼は亡き妻を生き返らせるという異常な宿願に憑りつかれているが、どうしてそこまで思い詰めるようになったか、観客が共感できるほど十分に描かれていない。モリサキが願ったからその願いを叶えようとする神の心理も計り知れない。 アスナの行動も共感しにくい。彼女が鉱石ラジオを作ったのは父親への追慕からだろう。石は父の形見である。ラジオで聞いた歌に惹かれたのも、あの世の父の声が心をよぎったからだ。彼女が日常で感じている寂しさは父の不在が大きい。彼女がアガルタでの探訪を望んだのは、父親探しの思いがあったはずだ。だが、父親は一切登場しない。では、シュンを探す旅なのか。それも違う。結局最後まで彼女が成長することはなく、彼女は終始受け身で、モリサキの妻の肉体のための憑代にされそうになるだけだ。彼女は父の不在の寂しさ、シュンの死をどう乗り越えたのだろうか?風景がきれいなのは美点だ。
[DVD(邦画)] 6点(2014-03-04 03:00:51)
119.  裸の島(1960) 《ネタバレ》 
飲み水も無い乾燥した島の斜面畑で、がむしゃらに土にしがみつくように生きている農民一家の姿を通じて、生きることの厳しさと尊さを伝え、更に人間とは何か、人は何のために生きるのかという人間の根源に迫る映画。そのため白黒映像で、会話は一切排除し、急斜面を桶で水を運び、乾いた土に水を注ぐ農夫婦の姿を執拗なまでに繰り返し追う。その単調さは、人間が生き抜くことの辛さ、切なさを表わすと同時に、生きることの崇高さをも表わしているように見える。物語としての映画ではなく、人間という“生き物”の本質に迫る象徴主義的映像詩となっている。 以上のような感想が持てればよかったのだが、残念ながらそうではなかった。感動には到らなかった。 とても土着の農民には見えない主演二人の“演技の”奮闘ぶりに苦笑するしかなかったのだ。いかにも都会育ちでございといわんばかりの華奢な体つきのへっぴり腰で、やっとこさ水桶を運ぶ姿には違和感を覚えた。あんな風では、三日も経てば足腰が立たなくなるだろう。それが感動できない理由である。 それでも光る演出が随所にあった。妻が水桶をこぼしたとき、夫が妻を殴ったこと。亡き子の葬式のとき、僧侶と生徒ら一行を迎える母親の服が一張羅の浴衣であったこと。子供を亡くした妻は平常心を装い埋葬まで済ませたが、あるとき感情を爆発させて、苦労して運んで来た水桶をひっくり返し、大地に身を投げて慟哭し、大切に育ててきた作物を乱暴にむしりとる。それを見つめる夫は無言。子供の為を思えばこそ、辛い生活にも耐えてきたのに、運命のなんと残酷なことか。だが、妻の“乱心”も束の間で、またすぐに、何事もなかったかのように元の作業に戻る。演出の冴えを見た。 他に不満点もある。それは島が乾燥した土地には見えないこと。それは草木の豊かさで明らかだ。飲み水や灌漑用水に天水を利用しないのもいただけない。また舟で水を運ぶのに一回で桶四つでは効率が悪い。八つ運べばよい。また、無い物ねだりだが、梅雨、冬の雪や霜柱、秋の台風など、一年を通じた丹念な島の生活の描写がほしかった。
[ビデオ(邦画)] 6点(2014-03-04 00:57:04)
120.  シュガー・ラッシュ 《ネタバレ》 
登場人物がゲーム・キャラクターと、完全に子供向けの設定で、期待はできないと思いつつ鑑賞した。が、予想に反して、後半から張られた伏線が次々と回収され、ぐんぐんと惹き込まれた。鑑賞後感も爽快で、秀作である。 悪役ラルフは物を破壊する役目に対する嫌悪感と、善役フェリックス達から仲間外れにされている疎外感にと悩み、自分を失う。そして心機一転、ヒーローのメダルの獲得を目指す。メダルは何とか獲得できたが、紛失してしまう。それを拾った少女ヴァネロペは、カーレースに出て優勝するという夢があり、メダルをコインの代替えにして出場権を得る。優勝すればメダルが貰えるので、二人は一致団結して優勝を勝ち取ろうとする。この二人の友情を描くのが物語の本流だ。これを阻む者としてキャンディ大王がいる。大王によればヴァネロペは欠陥品で、彼女がレースに出ればゲーム機が壊れていると見なされ、廃棄処分になってしまい、そうなればヴァネロペは生き残れない。だがそれは表向きの説明で、裏には驚異の姦計が隠されていた。本当の理由は、実は大王の正体はゲームを乗っ取ったよそ者で、全員の過去を変えていたのだ。ゲームの本来の主人公はヴァネロぺだった。ここから物語は俄然沸騰してくる。もう一つ物語の面白さに貢献しているのは、真の脅威、サイ・バグの存在だ。これが増殖すると本当にゲーム機が壊れてしまう。この設定によって真剣味が増し、感情移入する。。たかがゲームじゃないかと高を括っていられなくなるのだ。 フェリックス達もラルフが居なくなったことで、ゲームが成立しなくなり、ラルフの存在意義の大きさに始めて気づく。ラルフを探しに行ったフェリックスの活躍とラルフとの友情も見逃せない。その上、サイ・バグを生涯の仇として狙う、悲劇のカルホーン女軍曹を登場させ、観客を釘づけにする。加えてフェリックスとカルホーンの恋愛要素も加わるのだから鉄壁だ。全く無駄がない。主要人物四人が縦糸と横糸のように濃密に絡み合い、多彩な物語を紡ぎ出し、脇キャラも存在意義を失わない。アニメのお手本のような脚本で、感心しきりである。難を言えば、キャンディ大王に最後まで改悛の情が見られないこと。
[DVD(字幕)] 9点(2014-02-02 20:53:28)(良:1票)
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