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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1601.  限りなき舗道
原作が通俗小説ってこともあるんだろうけど、ここに展開する「地道」観ってずいぶん堅苦しい。いいとこに嫁いだって女優になったって、地道な暮らしはできると思うんだけど、弟の面倒見ながらカフェで働かないと「地道」とは言えないらしいの(なんか寅さんの説教みたい)。傾向映画の影響かね。映画会社に入ることがやくざな生き方だ、と映画で言っているこの屈折。一番嬉しかったのは銀座の町並みだな。オバアサンが立ってるカットが良かった。スポークンタイトルのバックにも夜景が使われたりする。嫁いだ家での視線の交錯はかなりドラマチック、あおって天井を映したりもする。自動車事故で話が展開するとこ・男が二人とも実にだらしないとこが成瀬らしいとは言えるが(そもそもこの時代、交通事故という都合のいい手段が小説家たちによって発見されつつあったというだけのことか? かつての「肺病」のように)、あんまり気合いの感じられない作品。それもそうで、どの監督も引き受けないのでたらい回しされてきた企画だったそう。でやんなって、これを最後に松竹からPCLに移る。そういう意味では成瀬にとって記念すべき作品ではある。
[映画館(邦画)] 6点(2010-10-15 09:54:55)
1602.  劔岳 点の記 《ネタバレ》 
昔は山岳映画というジャンルがあった。つまり秘境は秘境というだけで映写する価値があった。今ではテレビでほとんどの秘境が開拓されてしまっており、どうかなあと思っていたが、でもけっこう見せるのだ。切り立った峰を人々が歩いていく臨場感なぞ、ゾクゾクッとくる。現場での実写にこだわった愚直さを(ちょっと押しつけがましく感じるところもあるが)、メデてやろうという気になった。そういうふうに、おもに記録映像として鑑賞していたようなのだが、ただ一ヶ所、間違いなく映画を意識させられたところがある。ノブの役どころは、軽はずみをして危険を導くといういかにも物語を単純にならしてしまうものなのだが、実際に彼が岩肌を這い登って行くところには記録映像としての息遣いが感じられる。その彼が斜めに滑り落ちる。さすがにここはリアリズムにこだわれず、現実の転落とは違う何やら「優雅」な滑空を見せてくれるのだ。ああ映画だ、と瞬間思った。たとえばミュージカルで主人公が踊り出すタイミングにも似た、リアリズムからそれ以上のものに跳躍するときめきが、ここで一瞬感じられた。音楽はヴィヴァルディ、バッハ、アルビノーニなどバロック名曲集。登頂の時は『バリー・リンドン』のテーマ(ヘンデルだったっけ)が高鳴る。
[DVD(邦画)] 6点(2010-10-14 09:56:29)
1603.  レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う
仏頂面のおかしさは、今回はマネージャーの人間臭い顔との対比になる。でももともとロックの人たちって、ああいう仏頂面しているわけで、なんらかに対する防御って気もする。世間への構え・おびえといったものでもあるか。そもそもカウリスマキ的存在なのだ。そういう視点に最初からロックの連中へのパロディ意識がある。わざわざ太平洋を中心にした日本人にはなじみの地図を背景にして、アメリカとヨーロッパの遠さを見せていた。「自由」のかけらをみやげに「東」へ帰還するというのが骨組み。モーゼの書と共産党宣言のはざまでもある。ヨーロッパはやはり寒々としているが、家族がいるのだ。カットの終わり、なんらかの演技が終わったあとの空漠感が味わい。
[映画館(字幕)] 6点(2010-10-13 09:53:17)
1604.  名もなく貧しく美しく 《ネタバレ》 
聾唖者の日常生活における困難がていねいに描かれる。健常者と見た目では違わないことが、かえって生活を難しくしている場面もある。駅員に呼び止められるとこ、聞こえない振りしていると思われてしまうつらさ。あるいは子どもの泣き声が聞こえないつらさ。随所に生活の落とし穴が待ち受けている。そして子どもを持つことそのものの心配。社会に対する不安だけでなく、内側からも不安が湧いてくるわけだ。しかし満員電車の他人たちの中で、隣り合った車両からプライベートな会話を交わせるというシーンでは、聾唖者ならではのわずかな利点が貴重なものとして光っている。けっこうホロッとしたのは、多々良純の場。息子の賃上げ要求を一度は追い返し、いかにも多々良純的な態度を見せながら、それもそうだと後でやってくる。「庶民のせちがらさ」と、ときにはそれを越える筋の通った「庶民の条理」を見せて嬉しいシーン。オリンピックへ向けて破壊が進んでいた「戦後東京」の風景が、かろうじて記録された。最初に撮影玉井正夫・美術中古智と見てしまったせいか、成瀬チックな味わいがその風景の中に匂い立つ。ただラストの展開はどうだろう。聾唖者にとっては、視力が弱まるだけでいかに危険な社会になっているかということを言いたいんだろうが、「なにもそこまで」とゲンナリする気持ちのほうが強い。視力の弱まりは医者の言葉で知らされただけで、描写としてハッキリとは提示されてなく、だからいかにもドラマチックにするためだけの展開、って感じになってしまっていて、あれではせっかく訪ねてきた加山雄三の立場もなかろうというものだ。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2010-10-12 09:57:55)(良:1票)
1605.  スネーク・アイズ(1993)
ほとんどが人物のシーンで押していく。数カット夜の街があったぐらいか。顔の力。アップの迫力。イタリア系ということでどこか神を引きずっている。ジェームズ・ルッソもマドンナも悪くない。ハーヴェイ・カイテルはクサいんだけど、監督というものをそうやって茶化してる感じもあって、微妙なところ。現実と映画とが交錯していくってのにあまり新鮮味が感じられず、というか現実のほうの監督夫婦の話がつまんない。テレビのCMスターと悪態をついて演技のテンションを高めていくとこ、あるいは何度も撮り直すシーンあたりが、まあ面白い。映画人てのは、映画よりも映画の現場のほうが好きなんじゃないか。こういう映画撮影ものの作品で製作中の映画って、いつもとても面白くなさそう。面白かったら、そっちを映画化してるわけだけど。
[映画館(字幕)] 6点(2010-10-08 10:20:37)
1606.  ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ 《ネタバレ》 
男たちはみな自信喪失、活気がない。女は働いて金を得る喜びを知ってしまい、元気。その沈む男と浮く女の対比。椿屋に堤君が訪れたシーン、見合いしてきて松たか子への未練がつのり、料理屋にまで来てしまうってのも情けないが、メンメンと語りかけようとするといちいち客の呼び出しが邪魔に入る。しかし松さんのほうはもう社会で働く喜びでいっぱい。しょんぼり・いらいらする大のオトナの堤君、シャッキリせんかいと言いたくなる。またその状況を背中で聞いている妻夫木君のうじうじぶり。戦後の男女の対比を一筆で描いていて面白かった。男は女を大事に扱うってことでメンツ・誇りを感じていたのだが、それは女にとってはさほど嬉しいことではなかったってこと。夫がしくじった心中の薬をもてあそんではみたものの捨て去り、ヒロインはパンパンの口紅を塗っても生きようとする。戦後を描くと今まではだいたい闇市の沸騰する喧騒のエネルギーがベースになったものだが、これでは脱力している男に沿ったような静けさがベース。描かれた男女の対比はさして目新しくはなかったものの、それがこの静けさの中で展開し、浮き上がる女によりスポットが当たるようにしてあるのが新鮮だった。
[DVD(邦画)] 6点(2010-10-05 09:50:11)(良:2票)
1607.  人間の約束
しばしば画面は廊下や道路が奥へ延びているのだが、俯瞰の閉じた印象が枠を作っているので、広がる感じはない。深まる感じ。円錐状の穴ぼこみたいな世界。それと青や緑系の鉱物質の光に水のイメージが漂い、全編が沼の中の出来事のよう。ヤマ場は嫁が婆さんを風呂に置き去りにしちゃうあたりか。ふっと日常から跳んでしまう感じにリアリティがあった。罪という次元と違うところでカチッとスイッチが切り替わっちゃう感じ、これが怖い。ただボケ老人が、憐れなだけの存在になってるのが引っかかった。ちょうどこれ羽田澄子の傑作『痴呆性老人の世界』を観て、いわゆる「ボケ老人」の内面の豊かさに驚かされた後での鑑賞だったので、その豊かさが切り捨てられていることに不満を持った。介護する側から見れば、こうならざるを得ないのかも知れないが。それと三国連太郎は、ちょっと風格がありすぎるんじゃないか。あと、子どもたちの扱いが雑なこと。
[映画館(邦画)] 6点(2010-10-04 09:59:13)
1608.  バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト
アタマで家庭人(父)としての主人公を見せてから、自分の世界に引き入れていく。捜査の最中に真剣に話し込む野球賭博の場なんかリアリティ。そういうドキュメント的な面白さでいくのかと思っていると、後半で突然遠藤周作的なテーマに転調する。そこのつながりに滑らかさが感じられないのは、監督がその落差をこそ見せたかったのか、それとも宗教と無縁のこちらのせいなのか。それほどイタリア系にとってはカトリックってのが根深いものではあるのだろう。次第に賭博にはまっていく経過はよく分かる。次は勝つ、という気分。テレビつけるとスリーランホームラン打ったところで、ヨシッ、と思って見続けると、それは11-0が11-3になったところだった、なんての。別に賭けてなくても、そういうときの気分って分かるな。無免許運転娘の場もねっとりしてて リアル。刑事のやくざな日常のリアリティに対してカトリック信仰の葛藤のリアリティがもひとつ迫ってこないのは、ほんと、演出のせいか宗教鈍感症のこちらのせいか、あるいはやくざ刑事に似合い過ぎてるハーヴェイ・カイテルのせいか、分からない。
[映画館(字幕)] 6点(2010-09-27 09:55:42)
1609.  カティンの森 《ネタバレ》 
ワイダの映画は「長いものに巻かれるな」という強い意志に満ちている。本作では、おもに政治から一歩引いたところに立てる女性に、その意志は託された。夫をナチスに・息子をソビエトに奪われるような、両側からの暴力にさらされてきたポーランドのうめきが聞こえる。しかし長いものに巻かれて生きる生き方を選んだものを見下してはいない。それを選んだことの苦悩も、やはりポーランドの苦悩として、自死する兵によって同等に描かれる。偽証して生き残った彼と、手帳に記録を残しなすすべもなくカティンの森に消えていった男と、その悲劇を比べてはいない。ただ「記録」することによってやがて歴史が裁くだろう、という願いのようなものの分だけ、後者が重い。絶望はたしかに限りなく絶望的なのだが、それを踏まえた上で「やがて誰かが手帳を必ず開くだろう歴史」に対する希望がワイダの映画にはある。ソビエト影響下のポーランドで作られた彼の映画は、この手帳・もしくは手帳の存在を指さすものだった。本作にもワルシャワ蜂起の生き残りという娘が出てきて『地下水道』を思い返させたし(彼女は地下へ消えていく)、『灰とダイヤモンド』のマチェクになっていったかも知れない青年も登場する。私たちがワイダの映画で会ってきた人たちが、破壊され得ない墓碑銘として本作には埋め込まれている。
[DVD(字幕)] 6点(2010-09-25 10:14:54)(良:3票)
1610.  ロング・ウォーク・ホーム
アメリカ映画では、いつも正義と勇気がワンセットになっている。正義を行なう勇気を賞揚する。正義の教育的発展とでも言いましょうか。頭だけの正義派だったシシー・スペイセクが、ナマの現実の中で地に足をつけるまで。「たとえ子どもの教師や隣人が黒人になっても大丈夫ですか」とウーピーが彼女に問う。公園で追い出されたウーピーについて、スペイセクは「何も彼女の子どもを連れてったわけじゃないのに」と言っていたのだった。こういう描きかた、うまいね。さて、正直に告白すると、迫害する側の集団を見てると、変にワクワクしてきてしまったんだ。彼らの意見にまったく同意しないにもかかわらず、会場のシーンなんか、シンボルの旗が垂れてて皆が高揚してて、なんか『意志の勝利』を観たときのワクワク感と似たものが生まれてくる。人間の集団ってものの基本がきっとここにあるんだろう。攻撃すべき他者がはっきりとあって、皆の気分が一つになっていると、その集団の意見とは関係なく魅力的に感じられ興奮できてしまうんだな。本当に恐ろしいことだが、それを体験できたことが私にとってのこの映画の価値。
[映画館(字幕)] 6点(2010-09-23 10:51:12)
1611.  キカ
この監督、暖色系の気味悪さを発見したのが手柄だろう。赤や黄色、なかんずくオレンジ色。自然色じゃない人工色の世界。どこかオトギの国の不気味さに通じていく(メイキャップという仕事も人工の世界の仕事)。当然ストーリーは室内劇とならざるを得ない。主人公は気のいい女、最悪ニュースのレポーター・アンドレアの対極、ドラマの展開しやすさからいけば主役脇役が逆になるところだが、これがどこかオトギの国に通じていくキカが軸になる。オトギの国の犯罪。どこか話が閉じていて、テレビというものの閉じ具合と関係づけているのだろう。他人の不幸。暗い人間は死に、見捨てられ、キカはヒマワリを背景に旅立っていく。映画とは、現実に対するオトギの国と割り切っているのだろうか。常連ロッシ・デ・パルマのことを、ピカソの絵から抜け出てきたような、と言うのはうまい。
[映画館(字幕)] 6点(2010-09-20 09:48:00)
1612.  水で書かれた物語
世の中に奇妙な組み合わせは多々あるが、吉田喜重と石坂洋次郎ってのはかなりのものだ。たってこの原作読んだわけじゃなく、「青い山脈」とか「石中先生行状記」とかで作られた印象で言ってるんだけど、陰気と明朗、水と油。どんな監督が撮っても明朗な石坂調になるのに、この監督はならなかった。もしかして原作そのものがこう非石坂調の特殊なものなのかも知れないが、それにしてもイメージとあまりにも違いすぎる。あるいは40年代と60年代の違いか。弱いものの意地と反逆、いうとこに焦点を当てて、自分の世界に完全にしている。その世界はあんまり好きじゃないけど、この監督の作家魂は立派です。光と陰のコントラスト、俯瞰で人を押しつぶすような構図、日傘への偏愛。シャッターが降りてくる、ってのも好きみたい。ただ2時間観てるとキザに見えちゃう気がしないでもない。夢のシーンなんかよかった。看護婦たちが舞うように動くスローモーション。
[映画館(邦画)] 6点(2010-09-19 10:02:56)
1613.  沈まぬ太陽 《ネタバレ》 
ずいぶん久しぶりに邦画で労働組合を目にした。かつての社会派映画では、よく赤旗がひるがえっていたものだ。もっともこれでは第一組合と第二組合の話になっていって、分解に至る。ほぼ半世紀前の映画、勅使河原宏の『おとし穴』(脚本安部公房)も、炭鉱の第一第二組合の抗争がテーマだった。けっこうもっと中心に持ってこられるモチーフだが、でも現在は「派遣労働者」という使い捨てできる魔法のカードを企業は手にし、もう組合を気にせずに運営できて、そもそも組合の組織率も下がっているのだろう。そのせいかここで回顧的に描かれる労働運動も、どこか「作られた切迫」に見え、たとえば現在の「派遣」の苛酷な状況につながっていくものは感じ取れなかった。それと相変わらずのアフリカの描かれ方、まず日本から見た「僻地」として登場し、最後は「癒し」の大自然となる。最初に飛ばされたのはパキスタンで、これまた往年の邦画『乱れ雲』で飛ばされた地が、まだ「僻地」として登場する。過去を舞台にした作品だから仕方ないのかも知れないが、現在作られた映画なのだから、そこに潜む地域感覚への批評的な態度がちょっと欲しい。つまり、「過去」という題材に閉じ籠もりすぎているのではないか。善と悪がきれいに分かれた世界・人物造形の単純さ、は山崎小説のポイントで、その単純な人たちによって複雑な社会の動きをはっきりさせているところに面白さがあり、一概に否定すべきものではない。ただやはり同時代性を感じさせる視点が欲しい。これだと同時代性は「今もあるあの会社はひどいな」という感想レベルにとどまってしまう。山崎豊子は大企業や政権党をしばしば槍玉に挙げるが、彼女が好んで描くのはそういう閉じた人間関係の世界の時代を越えたグロテスクさなのであって、「仮装集団」という長編では共産党を斬っている。左翼右翼で割り切れる作家ではない。山崎長編の楽しみの一つは後半の粘り気で、この映画でも遺族会の名簿を入手しようと画策するあたりから、ちょっとそれらしくなった。ただあまり粘り切らない。それと忘れたころに登場人物が再登場するとこ。香川照之がよかった。やたら過剰に気合いの入った人たちの中で、そのウツロさが光る。
[DVD(邦画)] 6点(2010-09-16 09:58:21)
1614.  人生に乾杯! 《ネタバレ》 
無人の銀行に押し入るあたりのユーモアは楽しいし、説明的な部分を省略したテンポも快感。老人版『ボニーとクライド』として楽しい映画だとは思うが、こうやって彼らを笑いながら見てていいのかな、という疑問も付きまとう。「しょせん年寄り」と弱者として見てるから、そこに笑いが生まれるのであって、彼らとしては本気でビビッてほしかろう、とも思う。一応年金の額という政治レベルの動機は用意されているが、それ以上に年寄りの疎外感みたいなものが根にあるのではないか。ドライブスルーのシステムなど、年寄りを戸惑わせる社会そのものに対する反乱を見たほうが話が広がる。勝手に疎外し勝手に英雄視していく世間への不満の爆発。それと、旧体制下で当局の側にいた主人公はホサれた人生を送ってきた、という履歴があるのだろうか。ここらへんハンガリー現代史を知らないので曖昧だが、壁を築いているキューバ(かつての友好国)人との場など、そういった苦みのようなものが感じられた。ハンガリー動乱時に生まれたカップルと、同僚がスキャンダルを仕掛けてくるようなノンキな時代のカップルとの対比といった理屈はあろうが、若い警察カップルはあんまりいらなかったと思う。『バニシング・ポイント』もちょっと思い出させ、この監督、アメリカン・ニューシネマに思い入れありと見た。
[DVD(字幕)] 6点(2010-09-13 09:57:56)
1615.  カールじいさんの空飛ぶ家 《ネタバレ》 
前半のトーンと、チャールズ・マンツが出てきてからのトーンとの落差に、どうもつまづく。前半は、絵本の「ちいさいおうち」というか『赤い風船』というか、しみじみ。夫婦の履歴をセリフなしでサラッと描くところなど映画の教科書で、そのトーンの延長としてのファンタジーにちゃんとなっている。ところが後半はガラッとトーンを変え『ラピュタ』系冒険ファンタジーで、せっかく老人を主人公にするという試みなのに、似合わぬアクションをさせている。そこだけ取り上げれば良くできているし、老体にもかかわらず愛するもののために戦う、ってところに意味を感じなくもないが、どうもトーンとしてのつながりが悪い(これ観たすぐ後にハンガリー映画でじいさんが銀行強盗やるのを観たんだけど、こちらはその唐突さが流れの中でちゃんと味わいになっていて納得いった)。もしや最初2Dで製作準備していたところ、どこかから「きょうび3Dでなきゃ客は来んわ、前後に動きのある派手なアクションシーン、後半だけでもええけん入れてんか」という圧力がピクサーに掛かったのでは、などと妄想してしまった。マンツも、けっこう屈折したキャラクターに設定してあるのに、単純な悪役扱いでかわいそう。犬・少年・鳥という三人の従者が犬・猿・キジの桃太郎を連想させた。『オズの魔法使』もそうだったけど、なぜか従者は三人だと安定する。
[DVD(吹替)] 6点(2010-09-10 10:22:11)
1616.  ギルダ 《ネタバレ》 
リタ・ヘイワース。どこか退屈したような投げやりなような美女。妖婦。ただ、動いているのを見ると、意外と線が細い印象。話は後半グズグズになっていくんだけど、ナチに関係した人物ってのは、背筋がピンと伸びてるんだ。「大火事も大地震もみんなメイムのせい」とかいう歌がいい、有名なのかな。ラストのハッピーエンドは、たとえば、ジョニーを不幸にした女に災いあれ、という伏線を無視したもので、これがハリウッドなんでしょうなあ。「ジョニーって名前、覚えづらくて」なんてのもあった。いいねえ、ハードボイルドタッチ・ハリウッド映画のセリフは。
[映画館(字幕)] 6点(2010-09-09 10:05:27)
1617.  クヒオ大佐 《ネタバレ》 
政治的なアメリカコンプレックス風刺の大枠を設定したため、観てるほうが方向づけされてしまって、せっかく俳優たちは好演しているのに膨らんでくれない。堺雅人のキャラクターを生かし、前半はひたすらうさんくさく、後半はそれに卑小さも交えて、クヒオを見てるぶんには楽しい映画。とりわけ見抜かれているにも関わらずたどたどしい喋りを崩さない後半のおかしさ。キョトンとした目がいい。あるいは見抜かれて自分の過去を話し出しても、また嘘が入り込んでくる映像と言葉との乖離のスリル(ここでレストランでの暴発の理由がわかる仕掛け)、と部分的にはより膨らんで受け取れる部分もあるのに、逮捕時の幻想で内野聖陽が出てきて、また政治レベルに縮小されてしまう。もちろん、大きなアメリカコンプレックスの一部分として政治を描いているのだろうけど(強請られてわざわざドルで払う)、最初と最後の両端にブックエンドのように重々しく政治を立てられると、それを越えづらくなってしまうのだ。それにしても、たどたどしい日本語って、なんであんなにうさんくさく聞こえるのだろう。これを詰めるほうが面白いテーマじゃないか。
[DVD(邦画)] 6点(2010-09-04 09:49:41)
1618.  ウルフ 《ネタバレ》 
スクリーンに登場する怪人たちの中で、ドラキュラ・フランケンシュタインの怪物、の大物ぶりに比べ、狼男はやや弱い。アピールポイントが「満月になると顔に毛が生えます、遠吠えもします」と内向きである。「おまえはけっきょく何をやりたいんだ」と詰め寄りたくなる(日本の昔話で、桃太郎・一寸法師に比べ影の薄い金太郎と同位置にあるようだ。桃太郎らは業績がはっきりしているが、金太郎は子どものときに熊と相撲をとったこと以外はボンヤリしていて、どこか狼男と似ている)。で、この映画。そのぼんやりものの狼男に一本背骨を入れた。狼男とは「中年が若返る」なのだ。疲れが消え、気分爽快、生き生きとなるのである。人間関係の中で疲弊していた中年に、野生の血が紛れ込むのである。匂いに敏感になり、遠くの会話が聞こえるようになる、とリフレッシュとしての狼男化が面白い。あちらキリスト教圏の話は、つまるところ悪玉と善玉の展開になっちゃうところが物足りないけど、何か新しい視点・解釈を導入しようとする姿勢は偉いと思う。主役の二人は『バットマン』シリーズ1作目と2作目の仇役、ジョーカーとキャットウーマンで好演したもの同士、ラストは美女と野獣でもある。J・ニコルソンってこういう役になると本当に楽しそうにやってる。
[映画館(字幕)] 6点(2010-08-22 09:53:21)
1619.  エース・ベンチュラ 《ネタバレ》 
なんと言うか、三流に徹している潔さみたいなもの、感じますなあ。それを過大評価するつもりはないけど、でもこういうの観ると、映画が誕生した初めの時代、ほとんど1世紀前の、舞台芸人の芸を実写していたころの記憶に脈々とつながっているような気がして、ウーンとうなったりしちゃう。ステージ芸人の芸って知ってるわけじゃないけど、倍速逆回しのところなんかそんな気がした。芸人の芸の記録から始まって、やがて映画の芸が誕生していく、その現場に、なぜか1世紀後れて立ち会っているような感動が、なくもない。オシリがしゃべるの、とか。一番笑ったのは、もと選手たちの指輪を調べていくあたりか。無茶な運転して相手に指を突き立てさせるとか、殴らせて跡を見るとか、一緒に走っているだけではダメで、とうとう麻酔をかがせるとか。郵便ポストの中ってのもあった。ここたへんになると、舞台芸から映画の芸へ若干進化しかけている。
[映画館(字幕)] 6点(2010-08-21 09:55:10)
1620.  野ゆき山ゆき海べゆき
スカッとはいかないのである。お昌ちゃん奪い返しても、最終的には勝てっこない。白塗りの異形の子どもたちが大人どもをコロがしても、最終的には勝てっこない。そこでスカッとはできない。そこのところをこそ訴えたかったのかも知れないけど、どうもやっぱり空しさのほうが先に立ってしまって。悲恋物語の額縁が作品を窮屈にしてしまった、というか、伸びたかも知れないものを断ち切ってしまった、いう感じがした。一つ一つのエピソードが発展しきらないうちにしぼんでしまうことと関係があるのかも。戯画化された人々の動き、おもしろい面が出ているところもあれば(たとえばロクボクの前での歌舞伎ふう立ち回り)、失敗しているところもあり(先生)、実験をしたという評価どまり。いかにも良識人風の三浦友和の父が、コンコンと日本の「進出」を説明するところは、時代の雰囲気が出ていて良かった。文部省唱歌ミュージカル的試みは、かつて『二十四の瞳』もあるが、まだ可能性がありそう。白黒版。
[映画館(邦画)] 6点(2010-08-17 09:53:27)
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