市民ケーン の よしのぶ さんのクチコミ・感想

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市民ケーン の よしのぶ さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 市民ケーン
製作国
上映時間119分
劇場公開日 1966-06-04
ジャンルドラマ,モノクロ映画,ミステリー
レビュー情報
《ネタバレ》 全編特撮映画と考えた方が良い。例えば後妻が去った後で大暴れするシーン。ローアングルで怪獣映画と見まがう迫力。大映しのガラス球を掴む腕。廊下越しのロングで心の空虚さを表現した後、虚ろに歩くケーン(K)。やがてその姿が鏡に多重に映り、複雑な彼の人生を縮図にして見せる。後になって分るが、それは彼が人生を悟った瞬間であった。感嘆しきりである。◆判りづらいのは、金持ちになった母親が銀行を後見人として息子を手放すところ。日本には無い習慣ですね。理由として父親の暴力が示唆され、愛を知らない子供が誕生。◆重みを加えているのは、Kの複雑で矛盾を抱えた性格。金持ちに満足せず、常に何かと闘う。新聞に興味を持つのは社会と闘えるから。唯一の友人とも闘う。若くエネルギッシュで理想と野心に燃えるが、自己矛盾に気づかない。彼が悪と叩く対象は、彼が最大の個人株主の会社。産業界からはコミュニストと呼ばれ、労働者からはファシストと呼ばれる。貧しい人たちの味方を標榜しても、労働者が団結すれば叩き、新聞を選挙に利用する。後妻の酷評を自ら書く。最初の結婚は政治的野心のため。闘争は彼の自己確認の方法で、常に忙しく、家族との対話も少ない。後妻に歌えと命令するは世論との闘い。少年期の愛情の飢えが生んだ歪んだ自己愛。◆ザナドウ城は自己防衛、現実逃避の象徴。政治的に挫折し、大恐慌で新聞経営にも行き詰る。残されたのは自分の殻に閉じこもる事。美術品を買いあさるのは心の隙を埋める行為。最後の心の砦であった後妻に去られたとき、Kは初めて自分の人生について反省する。自己愛と虚栄心でただやみくもに突っ走り、欲しいものを手に入れたいと闘ってきたが、欲しいものは愛であり、結局何一つ手に入らなかった。世界有数の富豪で買えるものなら何でも手に入るというのに。多くの人を幸せにできると自負していたのに、自分一人さえも幸せになれなかった。Kの目に留まったのは雪の見えるガラス球。雪は幸せな子供時代を想起させた。愛情に恵まれていた時代。遊んだ橇には「薔薇の蕾」の文字が。人生は薔薇色に輝いており、やがて花開く未来が約束されていた。薔薇の蕾は彼自身だ。いくらお金を積んでも人生をやり直すことはできない。焼かれる橇は葬式の象徴。◆息子の事故死の様子が描かれていない。彼を最も苦しめた事件なのに。記者の黒子演出に違和感。「ローズバド」と言ったとき看護婦いない。
よしのぶさん [DVD(字幕)] 9点(2011-01-19 04:09:59)(良:2票)
よしのぶ さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2015-02-198レビュー6.62点
2015-02-16死霊の盆踊り3レビュー0.76点
2015-02-11ゼロ・グラビティ9レビュー7.63点
2015-02-09パシフィック・リム10レビュー6.88点
2015-02-08エベレスト 若きクライマーの挑戦<TVM>5レビュー4.80点
2015-02-0717歳のカルテ7レビュー6.99点
2015-02-07噂の女7レビュー7.30点
2015-02-06華麗なる激情7レビュー6.00点
2015-02-06影の車6レビュー7.00点
2015-02-05第9地区8レビュー7.07点
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