1.これ原作も新藤さんが書いてて、岩波新書だったかな、豊かなエピソードが良かったんだけど、そのおいしいところをカットしてつまんない部分だけつなげたって感じ。収容所でみんなで滝を作り始めた話なんてすごくいいのに、映画では集団で抗議するシーン。残念だなあ。二世言葉をリアリズムで再現したのは立派かもしれないけど、ちゃんとした日本語喋ってるのをよく知ってる俳優さんが演じると、滑稽に見えちゃう(昔『アラスカ物語』ってので丹波哲郎がインディアンの大酋長やってたので笑ったのを思い出す)。一番ヘンなのは家族構成で、永島君と乙羽先生が夫婦で娘の秋吉が16歳、その妹の田中美佐子は、そのころ放送中だった「おしん」で乙羽先生と嫁姑のいびり合いをしてたもので、もうまともな家庭には見えなかった。永島君の顔がヘンなまっ茶色のメイクだったし(もしあちらの日焼けの見事なリアリズム描写だったらゴメン)。収容所から帰ってきたとき、親切だった隣人もいたんでしょ。そういうところで原作は厚みを感じられたのに、なんか移民の苦労話ということで愚痴ばかり集めてしまったんじゃないかなあ。日本の風土のなかだと「愚痴」が芸術に昇華される例もあるんだけど(成瀬とか)、あの乾いた国では、あくまで愚痴は愚痴。