1.紹介文中の「タンゴ教室での出会いで」から鑑賞した本作。best of Al Pacino の情熱的なものではなかったものの、ジャン=クロードとフランソワーズが一言も口に出さなかった思いが語られているタンゴシーンは沁み入りました。ラストで彼が彼女の背中に添える一杯一杯に開かれた右手に私の胸も一杯に。同年代の自分には憧れるお伽噺のロマンスでした。一方、絵空事でなかったのは彼の父親で、十数年前の自分と息子が思い返され、現在は口に出せる優しい言葉を何故あの時かけてあげられなかったのか、後悔で胸が抉られます。言わなくても解ってくれる、のではなく、言わなければならなかったのです。
起伏に欠けた物語でありながら一瞬も目が離せなかった逸品。