1.コメディ作家プレストン・スタージェスの才気爆発!劇中の映画監督サリヴァンに自らを投影させ、高らかに謳いあげるコメディ賛歌、見ているこちらも思わずコメディ万歳!と叫び、隣りに誰もいなくても肩を組んで体を揺すりたくなる、そんな作品です。さて、このサリヴァンさん、辛辣な社会派映画を撮りたいのですが、本人にその苦労がないとの上層部の指摘に一念発起、ハリウッドから脱出して苦労の旅に出るのであります。ジョン・スタージェスが「大脱走」ならこちらのスタージェスはサリヴァンの「小脱走」といったところでしょうか。そこで繰り広げられるドタバタ、ロマンス。女優の卵役のヴェロニカ・レイクが少年に変装し旅のお供に、その変わりようはとくとご覧ください。またこの女優が会いたいと何度も口にする「ルビッチ」という単語にも泣けてきます。途中約7分サイレントのシークエンスは、サイレント時代のコメディへのオマージュ、またまた泣けてきます。ドタバタや美女の入浴シーンを批判していたサリヴァンですが、映画ではそのシーンがお約束のように登場し、劇中のサリヴァンとスタージェス自身のベクトルの違いで笑わせます。そしてラスト、サリヴァンのベクトルが向きを変え、サリヴァンとスタージェスが重なる時、さらにさらに泣けてくるのです。これはコメディへの愛情あふれる、コメディの大傑作です。