1.詩の映像化をしてしまったパラジャーノフの『ざくろの色』に刺激を受けて作ったという本作は、絵画の映像化に挑む映像作家の試行錯誤が描かれる。レンブラントに代表される芸術絵画を俳優を使って再現してゆくが、劇中監督はそこに当てられる光に納得がいかない。これ以上ないというほどの美しい光にもかかわらず。実際のところ、極めて美しい。絵画の中に存在する光、つまりは現実には存在しない光を求め、プロデューサーの要求する「物語」を描こうとしない劇中監督はゴダールでありパラジャーノフである。この作品あたりからソニマージュ(音・音楽によって映像を際立たせる試みと理解してよいのだろうか)が取り入れられたと思うのだが、次作『カルメンという名の女』ほどのインパクトはないものの、非常に印象に残る「音」の使われ方がされている。批評家から始まり、さまざまな作品の引用をし「色」を印象的に使った初期監督時代から今回のソニマージュといい、ゴダールほど映画を探究している人は他にいない。