13.新訳という事で期待半分であったこと、
キャスティングの変更があったことで不安があったこと、
この2点がこの映画の大きな話題ではあったのだが
中身をみて物凄くがっかりした。
総監督の富野が群像劇として描きたかったのは良く判るのだが、
その分、全体的な纏まりが見えてこない。
副題にある「恋人たち」というタイトルに裏付けるように様々な
人の出会いを見せるのだが、その関係が尺の問題もあるが物凄く
希薄に見えるのだ。TV版の重苦しいシナリオ展開を見て当時から
感心していた自分には、この希薄さが非常に辛かった。
また、かなり台詞が書き換えられているのだが、
これがもうひとつの希薄さを産んでしまった気がする。
映画の尺の関係があるのは確かなんだが、
今回のメインとなるゲストキャラであるはずのフォウに
TVとは全く違う言葉を言わせたが為に
結果としてフォウの存在自体が軽くなったと感じた。
多分、初めて「ガンダム」の映画を見る人にとっては判らないかもしれない。
しかし、これが新訳というのであれば、TV版からのファン、或いはDVD等でTV版を見た人にとっては新訳の持つ意味が非常に”つまらない”事になったと思う人がたくさんいるのではなかろうか。
キャストについては富野は若いキャラに若い声をと言っているが、
正直に言うと、若い声には程遠いという印象が拭えない。
富野は、かなりナチュラルに聞こえるから、ピンポイントとしては
まったく気付かないはずと言っているらしいが、それはどうも総監督の富野の思い込みでは無かろうかと思う。気付く気付かない以前に声の使い方、感情の持っていきかたがTV版のキャストとかなり違っている。それと悲しいかな、池脇千鶴の演技が非常に拙い。「猫の恩返し」の時の演技が結構好きだっただけに、感情の持っていきかた、表情の変化の付け方が出来てないのが物凄く稚拙に感じた。この辺はジブリの映画と普通のアニメの違いなのかもしれない。