2.「勝負は勝たなければ意味が無い」
「勝負は勝つことだけがすべてではない」
本当はどちらが正しいのか、僕には分からない。
でも、この映画と、「ばんえい競馬」は、その両方を物語る。
人生の中で挫折し、傷ついた心を、凍てつく北の大地と「ばんえい競馬」という厳しい世界で生きる人のあたたかさが包み込む。
「勝負」に敗れれば、人は立ち止まるしかない。でも、再び歩き出すことは出来る。
そういうことを、主人公は、重いそりを引き一歩一歩を踏みしめながら「勝利」を目指す輓馬(ばんば)の馬に対して感じ入ったのだと思う。
現実問題としては、赤字負債によりその存続が限りなく危ぶまれている「ばんえい競馬」。
なんとか北海道の文化遺産として存続させてほしいものである。
これまで知りもしなかったくせに、にわかじこみの情報のみでこういうことを言うのはあまり好きではないが、凍てつく空気の中、蒸気のような鼻息を大地に吹きつけながら馬場をいく巨大な馬の姿は、他にない高揚感と感動に溢れている。
スピードだけが重視されがちな現代社会において、この競馬の持つ付加価値というものは、尚更に大きくなっていくように思う。
主演の伊勢谷友介という俳優は、最初に出演映画を見た時(確か「ワンダフルライフ」)は、「なんだこの舌足らずなモデル上がりは」という印象だったが、今やすっかり日本の映画界に欠かせない俳優になったと思う。
舌足らずなのは変わらないが、それすらも彼の俳優としての味になってきた。