3.主演の奥村氏が、病床の97歳の先輩を訪れるシーンが最も印象に残った。
「私の力不足です、申し訳ありません」と謝罪し、植物人間に近い状態の先輩は、何度となく奇跡のように反応をみせる。
国に捨てられた悔しさはどれほど凄まじいものなのかを垣間見た気がした。
高齢になった今でも、その悔しさを少しでも晴らす為に、老体にムチ打って行動に出る。
そのエネルギーはまさに負のエネルギーとも言えるもので、戦争というものが残した傷跡の深さを痛いほどに体感できた。
侵略され惨殺された中国人はもちろん被害者だが、こうした傷跡が老年になってもいっこうに癒えない元日本兵も、紛れもない戦争被害者であるのだ。
戦争はあらゆる方面で人々に深い傷跡を残した。
どんな世の中になろうとも、戦争だけは起こしてはならない。
平和ボケした現代において、その平和の有り難味を感じることのできる貴重なドキュメンタリーである。
こんな作品を観てしまうと、不景気だのなんだのと、自分の身を憂うことが恥ずかしく思えてくる。
そして、日頃のストレスなんて、ほんの些細なことだと思えてくるのだ。