18.この映画は言うなれば、“パンダカンフー”版「スター・ウォーズ」である。
ストーリー、キャラクター性、あらゆる面でかのスペースオペラの世界観が色濃く反映されている。
スター・ウォーズファンのカンフー映画ファンならば、文句なしに楽しめる映画だろう。
何の取り柄もないカンフーマニアのデブパンダが、運命だか偶然だかで“伝説の戦士”に選ばれ、強敵を倒す。という、ありふれたプロットに想像通りにストレートなお話が展開される。
実際、ストーリーに“ひねり”など必要としない映画であることは間違いなく、アニメーション表現ならではの面白さとキャラクターの魅力だけで、「完成」している映画だと思う。
とは言うものの、いくつかの難点はあった。
一つは、主人公の成長の仕方が唐突過ぎるように思えたこと。
何も取り柄もないと思われていた主人公の唯一見出された資質が“食い意地”で、それを最大限に生かして潜在能力を引き出すという修行方法は、この映画世界に相応しいユニークさだと思った。けれど、そもそもその潜在能力が備わっている理由が明確にならないので、やはりあまりに都合良く思えた。
そしてその主人公が、圧倒的に凶暴に描かれる強敵に打ち勝つという様にも説得力が足りなかった。
何故デブでのろまなパンダが戦士に選ばれ、何故強敵を倒すことが出来るのか。そういう基本的な部分の理由付けが曖昧すぎたように思う。
生い立ちも含めた描かれなかった主人公のキャラクター設定は、続編への布石のつもりなのかもしれないけれど、この作品を単体で観た限りでは“軽薄”という印象を拭えない。
ただ、この映画は垣間見えるいくつかの粗を追求するべきものではなく、ユニークなキャラクターたちの愉快で痛快な言動そのものに面白味を見出すべき作品だろう。
そういう意味では、アニメ映画としても、カンフー映画としても、楽しみがいのある優れた娯楽映画であることは間違いない。