1.遅く起きた日曜日。午後から映画を観に行こうと思いたち、地元の映画館の上映スケジュールを確かめた。
「脳内ニューヨーク」というタイトルが目に入る。情報が無く、「誰の映画だ?」と確認すると、なんとチャーリー・カウフマンの初監督作品!とのこと。これは見逃すわけにはいかないと思い、映画館に出掛けた。
全世界の映画界を代表する“奇才”脚本家の初監督作品。得られる感想は二つのうちのどれかだということは、端から予想できた。
即ち、“最高傑作”か“意味不明”か。
得られたのは、紙一重で“意味不明”だった。
ただ、その結果に不満足かというと決してそうではない。
これまで「マルコビッチの穴」、「アダプテーション」、「エターナルサンシャイン」とただでさえ得体の知らない独自世界を、“他人”である映画監督の手によって具現化させてきたことを、今回は自らの手でそのまま具現化するわけで、その世界を100%理解しようとする方が、むしろ有り得ないと思う。
この映画世界は、まさにチャーリー・カウフマンという奇才作家の頭の中をそのままの映像化だ。
その世界観は、時にえげつなく、醜い。
ただそれは同時に、一人の人間の本質的な姿だとも思う。
心の目を背けたくなるような描写も多々あるが、そのくせ不思議な心地良さも感じていることに気付く。
「映画」としての完成度という意味では、決して高いとは言えず、好きな映画だとも言い難い。ただしこの奇才の創造性は、やはりただごとではない。