5.無様な男と、無様な女、そのありのままの「無様さ」を“綺麗ごと”なんて完全無視して描きつけた“ヘン”な青春映画だった。
主人公は玩具メーカーのうだつが上がらない29歳の営業マン。援交相手の醜女に逆切れされ、憧れの同僚とはいい感じになりつつも、肝心なところで大失態を繰り返し、挙げ句ライバル営業マンに寝取られる始末……。
最初から最後まで汚れまくりで、良いことなんてほとんどない。
実は、自分自身29歳の営業マン。仕事の合間にネクタイを締めたままこの映画を観ていた。
“イタイ”主人公の姿に笑いつつ、キワドいリアリティが突き刺さってきた。
自分がものに出来なかった女の仇を討つため、軟弱な主人公は“ブチ切れ”、鍛え上げ、「タクシードライバー」のトラヴィスと化す。
普通の青春映画であれば、主人公の「達成」をもって爽快感を導き出すのだろうけれど、普通の青春映画ではない今作は、それすらも許さない。
主人公が終始「無様」なまま、この映画は終焉する。
映画を観終わり、再び仕事に戻るため、土砂降りの中を営業車で走った。
けれど、僕の心は何故か晴れ晴れとしていた。
それは、この映画が無様で阿呆でしょうもないけれど、確かな「勇気」に溢れているからだと思う。
主人公は何も達成しない。ただただ己の小さな自分の人生を走る。その様は決して格好良くないし、転びまくる。でもその目を背けたくなる程に痛々しい等身大の姿は、問答無用に胸に迫る。