2.新鋭グサヴィエ・ドラン。ゴダールの再来を思わせるような色使いや独白、一面の壁、ランプシェード、ジャンプカット。ゴダールにかなりの影響を受けているのは間違いないが、PVのように音楽とぶっ飛んだ映像になることもあり、かなりのオリジナリティを持っている。ぐらぐら動くカメラが続いた後にピタッとしたフィックスのカメラで完璧な構図のショットを見せたりもする。きちんとしたショットが撮れることが前提なのだ。ゴダールだけではなく、小津を思わせる無人の部屋のショットや「マグノリア」を思わせる美しいシーンなど、映画史をふまえているところに映画愛を感じる。ジェンダーに関わる主題だが、男女云々を超えて、ロランスという人物そのものだというのがLaurence Anywaysの意味なのだろう。カナダのケベックということで英語とフランス語の混じりあった(タイトルもそう)会話が心地よい。基本的にはメロドラマなのだが、この撮り方はとんでもないセンスである。今では珍しいスタンダードサイズも、極めて映画的な人物のバストショットを効果的に見せている。傑作。