3.ケネス・ブラナーが『エージェント・ライアン』に乗り換えたことを受け、監督はアラン・テイラーに変更。この人はTV界のベテランであり、現在、私がどハマリしているドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』では重要回を担当している人物だけに、その演出は実に安定しています。登場人物たちの愛憎関係を簡潔に提示したり、程よい笑いをとったりと、軽いフットワークでドラマパートをまとめる一方で、アクションパートでは重厚なスペクタクルをものにしており、初の大作ながら素晴らしい手腕を披露しています。2015年公開のリブート版『ターミネーター』の演出も務めるようですが、この監督ならば期待できるのではないでしょうか。。。
しかし、この監督の手腕をもってしても、映画全体を救うことはできなかったようです。アイアンマンとキャプテン・アメリカが続編の舞台を小さく設定し直し、パワーのインフレが起こることを回避したのとは対照的に、ソーは舞台を大きくしすぎて取り留めのないことになっています。わかるのは、正義の味方・ソーが悪い奴らと戦っているということだけで、悪人たちの目的は何で、彼らが勝つとどんな悪いことが起こるのかがピンときません。どうやら宇宙が滅びるらしいのですが、そんなことをして悪人たちに何の得があるのかが分からず、このお話にはポカンとさせられるのみでした。さらには、エーテルだのダークエルフだの、マーベル作品が出る度に追加される固有名詞を覚えることにもそろそろ嫌気が差してきており、肝心のお話自体に興味が持てませんでした。。。
キャストはとても豪華。一連のマーブル作品の中でも、もっとも多くの演技派俳優を揃えているシリーズだけに、演技の質は非常に高いです。ただし、前述の通りバカバカしい固有名詞が入り乱れる内容なので、オスカー俳優達との食い合せはよくないですが。アンソニー・ホプキンスやナタリー・ポートマンが真剣な顔をしてマンガチックなセリフを言う度に、何とも言えない居心地の悪さを感じました。