6.実は“殺人マシーン”だった主人公が、憎き悪党と真向かい、直接的に、淡々と、「宣戦布告」する。
それを演じるデンゼル・ワシントンの“目”がヤバい。“ヤバい”とはいかにもチープな表現だが、本当にヤバいのだから仕方がない。
正義の鉄槌を振るうことを心に決めた主人公のその“目”は、完全に異常者のそれであり、主演俳優のその表情を観ることこそが、この映画を観る価値だと断じてしまっても過言ではない。
何かしらの過去を背負いつつ、平穏に暮らす主人公が、突如として復讐鬼と化すというこの手のジャンルムービーは昨今目立つように思う。
いわゆるビジランテ(=自警団)ものが流行らざるを得ないのは、真っ当な正義が存在しないこの社会の病理性の表れだろうか。
誰も守ってくれない。誰も裁いてくれない。誰も怒ってくれない。
ならば自ら鉄槌を振るうほかないではないか。
という悲鳴がそこかしこから聞こえてくるようだ。
と、まあ、そんな悲観的な考察は抜きにして、流行りのジャンルムービーの中でもこの映画のクオリティーの高さは確かなものだと思う。
やはり魅力的なのは、デンゼル・ワシントン演じる主人公のキャラクター性だろう。
日々眠れぬ夜を近所のダイナーで過ごす主人公、観客としては当然ながら彼の正体がいかなるものかということを大体知っているわけだが、それでも物静かなこの男が、文字通りの殺人マシーンへと変貌する様は娯楽性に溢れている。
それは、この映画のストーリー自体がこの先どう転じていくのかという娯楽性とも合致し、楽しい。
過去に捨て去ったはずの血塗られた仕事を再開することで、自分の生きる価値を改めて見出し、みるみる活き活きとしていく主人公の様は、実は笑えない。
ただ、そういう役を演じるデンゼル・ワシントンはいつも大体「最高」である。