1.『ラスト・オブ・モヒカン』のオーディオコメンタリーでマイケル・マン監督が
披露する時代考証の知識には圧倒される。
『コラテラル』のコメンタリーで雄弁に語るキャラクター設定の緻密さにもまた
感心させられる。
この作品についても、ハッキングに関する綿密で膨大なリサーチが為されたはずだろうし、
主役脇役問わず各人物の背景や生い立ちまで詳細に設定されていることだろう。
それらはこれ見よがしにひけらかされることなく、
各人なりの明確な原理と裏付け・信念が、即物的な行動のみの描写となって
画面に載せられていく。
いきなり幼少時代に遡って主役の人物背景を説明し始まった『アメリカン・スナイパー』とは
大きな違いだ。
クリス・ヘムズワースが、『ラッシュ』に続き、男の色気があっていい。
うなじや二の腕を映し出しながらタン・ウェイにいまいち官能性が薄いのが
マイケル・マンたる所以か。それとも機動性・高解像度と引換えに光量不足を露呈してしまう
デジタルカメラの弱みゆえか。
夜明けの航空機内、復讐に向かう二人は抱き合い、カメラと共に共振する。
ここからラストに至るまで、さらなる台詞の削ぎ落としは見事の一語。